第36話 順風満帆♪
※アリシア視点です。
この国の王太子妃に選ばれて約1ヶ月が経った。
私は今、正しく薔薇色の美しく華やかな人生を謳歌していた。
王太子妃に選ばれたことで、両親とはさらに仲良くなり、使用人たちも以前にも増して私を慕うようになった。
特にお父様は『遂に、叶ったぞ!』と心底喜んでくれた。
フィリップ様とも、あの女が婚約者だった頃よりずっと親密になった。
人目を気にして彼の隣を歩かなくてもよくなったし、何も気にせずに好きなだけ彼の隣にいられるのだから!
あの女から奪った友人……もとい、取り巻き達も私のことをより一層、慕ってくれている。
王都にいる人たちも、貴族も平民も関係なく、み~んな、私のことを『女神』のように崇拝してくれている。
これも全て、周囲にいる人達を使って、お義姉さま……いや、あの女から『交換』という名で『未来の国母』という未来と婚約者ごと奪ったから。
はぁ、あの女から全てを奪った挙句、田舎貴族に押し付けて正解だったわ~!
だって、み~んな、こんなにも幸せなのだから!!
私が言ったこと、間違いじゃなかったわね♪
「アリシア様、今日のお召し物、とっても素敵ですわ~!」
「さすが、聖女にして、未来の国母ですわね!」
「ウフフフッ、皆さま、ありがとうございます」
今日は、王太子妃になって初めてのバリストン公爵家主催のお茶会。
フィリップ様から贈られた流行りのドレスを身に纏った私は、取り巻きとなった令嬢達から羨望の眼差しと称賛を受けて、聖女として謙遜な笑みを浮かべながらも、内心は満更でもない気持ちになっていた。
平民だったら、この人達から褒められることももてはやされることもない。
でも、今の私は公爵令嬢であり、この国唯一の聖女であり、未来の国母。
褒めてもてはやされて当然!
……でも、最近、つまらないと思うようになったのよね。
もしかして、あの女がいなくなったから?
『魔力ゼロの役立たずの地味女』と蔑まれつつも、お父様やフィリップ様から都合の良い道具として働かされていたあの女がいなくなったから?
確かに、私にとってあの女は、都合の良い玩具だったわ。
あの女から『交換』と言って奪う時、この上なく優越感が満たされたから。
まぁ、それは別の方法で満たせばいいだけの、は・な・し♪
――丁度、あそこに私の玩具になってくれそうな相手がいるもの。
「ねぇ、あれが例の……」
「そうよ、婚約者を『交換』したって令嬢でしょ?」
「噂では『双方の合意』って言っていたけど……どう見ても、殿下があの女に絆されたからでしょう?」
「本当、王家と公爵家と辺境伯家は一体何を考えているのかしら」
「いや、この場合、王家と公爵家だけでしょ。辺境伯家は完全に巻き込まれた側だと思うわ」
「それもそうよね」
さて、私のストレス発散に付き合ってもらうわよ。
心の中でほくそ笑んだ私は、取り巻き達から少し離れると、私たちの婚約に好き勝手言ってくれている二人の令嬢の前に立つ。
そして、体を斜めに向け、少しだけ目を伏せると、皆に聞こえるように二人を告発する。
「酷い! 私はただ、フィリップ様からの愛を受け取り、その愛に応えただけなのに!」
ウフフッ、我ながら無茶苦茶なことを言っているわ。
でも、皆から『天使』と褒められる容姿で、お母様直伝の庇護欲をそそる傷ついた演技をすれば、それを見た人たちが勝手に私に同情して私の言うことを簡単に信じてくれる。
そしたら、私が何もしなくても勝手に同情した誰かが、私の代わりに怒ってくれる。
「お前達、聖女様を傷つけるなんて卑怯だぞ!」
「え、私たちはただ……」
「そうよ、未来の国母であらせられるアリシア様に向かって謝りなさいよ!」
「え、だって悪いのは明らかに……」
「君たち、今すぐ茶会から出て行きなさい!」
「「えっ?」」
ほら、少し顔を俯かせて肩を震わせるだけで、勝手に手を下してくれる。
まぁ、あの二人の令嬢は学園時代の同級生だったけど、元々、気に食わなかったのよね。
元平民である私に対し、事あるごとに影口を言っていたから。
――田舎貴族のくせに、聖女である私を貶めるなんて、本当、命知らずよね。
『聖女』をもてはやしているこの王都で。
「アリシア様、大丈夫ですか?」
「えぇ、皆さま。ありがとうござい……ヒッ!」
「どうされました?」
「あのお二人に、睨みつけられて、怖くて……」
護衛騎士に連れられ、会場を後にする令嬢に睨みつけられ、少しだけ肩を震わせ顔を隠す。
すると、その場にいた貴族たちが彼女たちに罵詈雑言を浴びせ、先程まで好き勝手言ってくれた二人の令嬢が揃って顔面蒼白になる。
アハハハッ! 最高! 聖女であり未来の国母を貶めるからこうなるのよ!
ざまぁみやがれっていうの!
あなた達を呼んだお父様に後でお礼を言わないとね!
「アリシア様、もう大丈夫ですよ」
「はい。ありがとうございます、皆さま」
そう言って、儚げに笑えば、みんなが安堵する。
フッ、本当に単純ね。
「良かったです。聖女様は、この国を魔物から追い払ってくださっているのですから」
「いえ、聖女として当然の務めですから」
本当は、王都にだけ強力な結界を張って、それ以外は結界が張れる魔道具に魔力を込めて配っているんだけど。
だって、魔物って醜いし怖いし汚いから見たくもない。
とはいえ、ここ最近、聖女の力もなんだか、前に比べて自由自在に使えなくなった気がするのよね。
大神官様も『ここ最近、僅かだが魔道具の効力が落ちている』っておっしゃっていたし。
昨日も、すぐに終わる魔道具への付与も、いつもより少し時間がかかったし。
なぜかしら?
まぁ、使えるなら別に良いんだけど。
「それに、アリシア様は、王太子妃としての王妃教育を受けられているのですよね?」
「えぇ、フィリップ様を支えるためにも、未来の国母として頑張っていますわ」
「凄いですわ、あの悪女と違って、『才女』と呼ばれているアリシア様なら立派な王妃様になりますわ」
「ウフフッ、皆様の期待に応えられるよう頑張りますわ」
本当は、あの女よりも早く王太子妃教育を終えたんだけどね。
そう言えば、そろそろ王太子妃として公務が始まるのよね。
魔力ゼロで私より劣っているあの女にも出来たのだもの。
あの女より優秀な私なら、王妃教育を受けながら公務だってこなせるに決まっているわ。
私と同じ優秀なフィリップ様も一緒なのだから。
「アリシア!」
「フィリップ様! お待ちしておりましたわ!」
公務から抜け出し、駆けつけてくれたフィリップ様に私は甘えるように抱きつく。
すると、周囲から感嘆の声が聞こえてきた。
ウフフッ、彼の婚約者になってから、フィリップ様とお会いできる機会が減ってしまったけど……こうしてお会いできて嬉しいわ。
――久しぶりに婚約者様に会えて、これ以上なく満たされていた私は、予想していなかった。
まさか、フィリップ様と会う機会が減った原因が、彼があの女に押し付けていた仕事が戻ってきたからであることを。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、盛大なフラグ回でした(笑)
本人は順風満帆って思っていますが、果たしてどうなるのか!?
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(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




