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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第二章 愛しい君を溺愛させて!

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第15話 徒歩で来た!?

※フォール視点です。

 俺の婚約者として、王都から遥々リスタット辺境伯家に来たカーラ。


 初恋の相手が俺のところにくる。


 それも、俺の未来の妻として。


 領地に戻ってから彼女が来るのを今か今と待っていた。


 そして、ついに彼女が来たと知らせを受け、俺は胸を躍らせながら執務室を出て、そのまま使用人たちが集まるエントランスホールへ向かった。


 開け放たれた扉の先には、待ちわびた天使がいて――嬉しさのあまり思わず彼女を抱きしめた。


 遂に叶った……いや、叶ってしまった。


 何度願い、何度諦めたことが思わぬ形で叶ってしまった。


 叶わないと思っていた願いが叶い、嬉しさを噛み締めているとセバスに窘められ、渋々彼女を解放した俺は、気を取り直して紳士らしく挨拶をする。


 男性に慣れていない彼女は、俺の紳士な挨拶に顔を真っ赤にしていた。


 あぁ、可愛すぎる。こんな可愛い女性を足蹴にしていたとは……フィリップのやつ、本当にバカだな。


 そんな彼女は、俺が『久しぶり』と言うと『えっ?』キョトンとした顔で首を傾げ、絶望のあまりその場で崩れ落ちそうになった。


 ……いや、覚悟はしていた。


 彼女は俺のことを覚えていないだろうと。


 でもまさか、本当覚えていないとは。


 とはいえ、辛うじてその場で崩れ落ちずに済んだのは、俺の男としてのプライドが許さなかったのと、時代遅れのドレスに身を包み、小さなトランクを抱え、疲れた様子の彼女を見て、『ひとまず、長旅で疲れている彼女を休ませなければ』と思ったから。


 そして、彼女を屋敷の中へとエスコートしようとした途端――その場で倒れてしまった。



「はぁぁぁぁ……いきなり倒れるから、一瞬、心臓が止まりかけたぞ」



 倒れた彼女を抱きとめた後、眠ってしまった彼女に心底安堵した俺は、彼女を屋敷の中へ運び、そのまま彼女のために用意した私室のベッドへ寝かせた。


 安心したように眠る寝顔はとても愛らしく――それでいて、どこか痛々しかった。


 メイドたちに彼女の世話を任せた後、執務室に戻った俺は深いため息をついて机に突っ伏した。



「慣れない長旅で、余程お疲れだったのでしょうね」

「……そうだな」



 セバスが入れた紅茶の匂いに誘われて、ゆっくりと顔を上げると頬杖をつく。


 王都から辺境伯領までは、馬車でも約二週間。


 王宮と屋敷を往復する程度だった彼女とって、今回の旅はあまりにも過酷な旅だったに違いない。



「こうなるくらいなら、最初から俺が迎えに行けば良かったな」

「坊ちゃま、そんなことをすれば……」

「分かっている」



 分かっているが……それでも、彼女のために特別に誂えた高級仕様のベッドで眠る姿を見て、『迎えに行けば良かった』と本気で後悔した。


 例え、見目麗しい男なら誰彼構わず媚びを売る尻軽の義母と、自分大好き過ぎて他人を『自分を引き立てる道具』としか思っていない義妹が擦り寄ってくるとしても。


 すると、何かを思い出したセバスが険しい顔をした。



「……フォール様、少しよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「カーラ様をお迎えした際のことなのですが……実は、馬車が無かったのです」

「は?」



 馬車が無かった、だと?


 頬杖を止めた俺は、セバスの言葉に眉を顰める。



「門番が追い返したというのは……いや、貴族としての常識やマナーを叩き込んでいる我が家の門番が、そのような失態をするとは思えんな」

「はい。現に、カーラ様を屋敷までお連れした門番が、陛下の署名入り婚約締結書を持って私のところに来た時、かなり戸惑った様子でした」

「そうか」



 建国時から国防を担っている我がリスタット辺境伯家は、国防と治安維持のため、他の貴族との交流を深め、情報交換を欠かさず行っている。


 そのため、何かと客人を招き入れる機会が多く、『家の顔』である門番への教育は徹底していた。


 となると、門番が馬車を追い返したのではなく――



「セバス。その門番から詳しい話は聞いたか?」

「はい。メイド長にフォール様とカーラ様を私室へご案内するよう指示した後、すぐに」

「さすがだな」



 一瞬笑みを浮かべた俺は、すぐに笑みを潜める。



「それで、なんと?」

「それが……カーラ様は徒歩で来られた、と」

「はぁ!?」



 徒歩だと!?


 驚きのあまり、頑丈に作られた座り心地の良い椅子を蹴飛ばして立ち上がる。


 当たり前だ。


 どこの世界に、嫁入り前の貴族令嬢を徒歩で婚約者の屋敷まで向かわせる貴族がいるというのだ!


 深いため息をついた俺は、蹴飛ばした椅子を元に戻すと座って頭を抱えた。


 貴族同士の婚姻。


 それつまり、家同士の契約。


 両家の未来を左右する、極めて重要なもの。


 それを軽んじる真似など、本来あってはならない。


 ……たとえ、貴族として欠点のある令嬢が嫁ぐことになったとしても、両家の関係にヒビが割れるようなことをしてはいけない。



「途中で馬車を降りた……は、さすがに考えにくいか。だが、本当に徒歩だったのか?」

「はい。門番の話では、本当に徒歩で来られたらしく、書面を見せられた時は、思わず目を疑ったそうです」

「それもそうだな」



 本来なら豪奢な馬車に乗ってくるはずの次期当主の婚約者が、まさか徒歩で現れるなど誰が予想できる。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、カーラが来て浮かれまくっているフォールをお届けしました!(笑)


いや~、めっちゃ浮かれていましたね(笑)


だからこそ、カーラが徒歩で来たことに心底驚いているのでしょうけど。

そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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