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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第二章 愛しい君を溺愛させて!

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第13話 光栄です

第二章開幕です!

「やっと着いたわ。リスタット辺境伯領に」



 バリストン公爵家を約一ヶ月後。


 王都から近い宿場町で御者に置き去りにされてから、路銀を稼ぎながら乗合馬車を乗り継ぎ、いくつもの街を訪れた末、ようやく辺境伯領に辿り着く。



「初めてきたけど……強固で高い城壁で見ているだけで圧倒されるわね」



 乗合馬車の窓から見える、王都の城壁よりもさらに分厚く、何ものも通さない巨大な壁。


 そこに刻まれた無数の傷跡は、長い歴史の中で、数多の魔物や外敵の脅威からこの国を守ってきたことを静かに物語っていた。


 王都で『最強』と謳われている王国騎士団の次に強い騎士団を擁する名門、リスタット辺境伯家。


 ――私としては、リスタット辺境伯家の騎士団こそがこの国最強だと思っているけど。


 だって、王都を守る王国騎士団とは違い、辺境伯家の騎士たちは日夜あらゆる脅威と戦っているから。


 それにしても、この壁、初めて見たはずなのに、見たことがある気がするのよね。


 生まれてから一度も王都を出たことがないはずなのに。


 堅牢な城壁に不思議と既視感を覚えつつ、辺境伯領に入った私は、馬車を降りてすぐ、街の人に辺境伯家の屋敷の場所と今日泊まる宿を教えてもらい、その日は宿で一晩を過ごした。


 そして翌日。


 公爵家を出た時から着続けている時代遅れのドレスに身を包み、宿を出るとトランク一つ持ってリスタット辺境伯家の屋敷を訪れた。



「すみません」

「何でしょう?」

「こちらはリスタット辺境伯家のお屋敷でお間違いでしょうか?」

「そうですが……なにか、御用で?」

「実は私……」



 門番をしていた騎士に、いつの間にかトランクの中に入っていた、陛下の署名入りの婚約締結書を見せる。


 そこには、私が正式にリスタット辺境伯家の次期当主であることが書かれていた。


 あの短時間で用意したってことは……私の王太子妃としての未来が無いことは決まっていたのね。


 本当、私は何のために地獄の日々を過ごしたのかしら。


 人知れず胸を痛めた私の格好を見て、騎士は僅かに怪訝な顔をする。


 まぁ、そういう反応になるわよね。


 普通、嫁に来た令嬢は大型馬車を何台か引き連れてくるものだから。


 時代遅れの地味なドレスを着て、トランク一つで来るなんて到底思わないわよね。


 そんな私と書面を見比べた騎士は、私の話を信じてくれたのか、『それでは中へご案内します』と深々と頭を下げると、他の騎士を呼んで簡単な引継ぎを済ませ、私を門の中へと入らせた。



「ここが、リスタット辺境伯家の屋敷……」



 うちの屋敷より、一回りは大きいわ。


 初めて見る屋敷の大きさと、手入れが行き届いた庭園の美しい景観に思わず目を奪われる。


 すると、騎士の足が屋敷の前で止まる。



「申し訳ありませんが、こちらで少々お待ちください」

「でしたら、こちらを持って行ってください。本当に婚約者が来たことを証明出来ますから」

「かしこまりました。では、お預かりします」



 書面を受け取った騎士は、私を格好と持っていたトランクを見て、眉を顰めると頭を下げて屋敷の中へ入っていく。


 この屋敷の者に私が来たことを知らせるために。


 しばらくすると、目の前の重厚な扉がゆっくりと開き、案内してくれた騎士と共に燕尾服を着た白髪の紳士が出てきた。



「ようこそ、いらっしゃいまし――おや、お一人ですか? それに、お荷物もトランク一つだけとは……」



 あれっ? この方、どこかで見たことが……


 困ったように眉を寄せる紳士に既視感を覚えつつ、その場にトランクを置いた私は、厳しい王太子妃教育で叩き込まれた、美しいカーテシーをする。



「初めまして。バリストン公爵家が長女、カーラ・バリストンでございます。このような格好に加え、到着が大幅に遅れてしまい、大変申し訳ございま――」



 そう言って、顔を上げた瞬間。


 屋敷から大柄な人影が勢いよく飛び出し、時代遅れのドレスの私を抱き上げた。



「キャッ!」

「アハハッ! 本当に来てくれた! 本当に来てくれたぞ! ありがとう、愚かな公爵家! ありがとう、愚かな王家!」



 ど、どなた!?


 短く切り揃えられた黒髪。

 ルビーのように鮮やかな紅い瞳。

 凛々しく整った顔立ち。


 この方も、どこかで見覚えが……


 そんな私より遥かに高い身長と鍛え上げられた体躯の彼は、嬉しそうに私を抱きしめてクルクルと勢いよく回る。


 そんな異様としか思えない状況に流されていると、様子を見ていた紳士がわざとらしい咳払いをする。



「コホン。フォール坊ちゃま。初恋相手が婚約者として来られて嬉しいのは分かりますが、坊ちゃまに抱きつかれたカーラ様のお気持ちも考えてくださいませ」

「おっと、これは失礼。それと、『坊ちゃま』呼びはやめてくれ」



 紳士に窘められたその人は、少しだけ目が回った私をゆっくりと地上に下ろして逞しい腕の中から解放する。


 本当に、なんなのよ。


 少しだけ頭を振って視線を前に戻した時、私を抱きしめてクルクルと回っていた殿方は、心底嬉しそうな笑みを浮かべるとその場で片膝をつく。


 そして、壊れ物を扱うかのように、そっと私の手をとった。



「突然の無礼、大変失礼した。いかんせん、君が俺の婚約者として来るとは、今日まで信じられなかったから、こうして来てくれて本当に嬉しかったんだ」

「は、はぁ」



 その口ぶりだと、この人は私が婚約者であること喜んでいるように聞こえるような……



「改めて……カーラ・バリストン嬢。こうして会うのは久しぶりだな」

「えっ?」



 久しぶり? 初めましてじゃなくて?


 彼の言葉に少しだけ困惑する私に、笑みを深めた殿方は自己紹介をする。



「だが、改めて自己紹介を。俺が……いや、私が、リスタット辺境伯家が長男、フォール・リスタットです。今日、貴方を未来の妻として迎えられたことを、心から光栄に思います」



 そう言って、リスタット辺境伯子息様は、初対面の私にいきなり抱きついてきた人とは思えない、優雅な仕草で手の甲に優しく口づけを落とす。



「っ!」



 子息様に口付けされたところがとても熱い。


 そして、顔も何となく熱いわ。多分、熱じゃないわね。


 こんな――幼い頃に読んだ、物語の中のお姫様のように大切に扱われたこと、フィリップ様の婚約者だった頃には一度も受けたことがなかったから。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、カーラとフォールが遂に出会いました!


短編でも甘々でしたが、長編ではもっと甘々(当社比)にしました!


いや~、カーラと再会した直後のフォール、暴走していましたね(笑)


第二章はハッキリってこの二人の甘々イチャイチャの章です!


糖分過多になること間違いないし!(笑)


皆様、どうぞ存分にお楽しみください!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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