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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第四章 幸せになりましょう!

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第105話 総力戦の行方

 王国騎士たちが一斉に剣を振り上げる。


 同時に、王宮魔法師たちが構えた杖の先へ、眩い魔力の光が集まっていく。


 数だけを見れば、圧倒的に王族側が有利。


 こちらは各地へ戦力を分散させている上、王城へ突入したのは選び抜かれた者たちだけ。


 普通なら――数の差に押し潰されてもおかしくない。


 けれど。



「カーラ、頼んだ!」

「はい!」



 フォール様の合図を受け、私はすぐさま後方へ下がる。


 そして、その場で両手を胸の前に組み、目を閉じた。


 願うのは、一つだけ。


 フォール様をはじめ、この作戦に参加してくださった皆様が、無事に帰ってこられること。


 ここで戦っている方々も。


 辺境伯領や各貴族領を守っている方々も。


 公爵領を包囲している方々も。


 どうか――誰一人として命を落とすことなく、この戦いを終えることができますように。



「お父様! 見てください! お義姉さまが、また私の力を勝手に使っています!」

「分かっている!」



 甲高い声を上げるアリシアをよそに、私は聖女の力を込めて祈りを捧げる。


 すると、周囲の人たちへ祝福が広がっていくのを感じた。



「おおっ! 力が漲ってくるぞ!」

「身体が軽い!」

「これなら、この人数でも十分に戦える!」

「皆の者! これこそ本物の聖女様の祝福じゃ! カーラさんを何としてでも守り抜け!」

「「「「うおおおお――――!!!!」」」」



 祈りを終えて目を開けると同時に、お義祖父さまの咆哮に応えるように、王城制圧部隊の騎士たちが一斉に動き出した。


 魔法師たちの放つ魔法をかいくぐり、襲い掛かってくる王国騎士たちを瞬く間に無力化していく。


 その勢いは、先ほどまでとは比べものにならない。



「はあっ!」

「おりゃあっ!」

「〈ファイヤーボール〉!」

「〈ウインドカッター〉!」



 炎と風が交錯し、鋼と鋼がぶつかり合う。


 荘厳な謁見の間に、激しい剣戟の音と爆発音が鳴り響いた。


 けれど、不思議と恐怖はなかった。


 ――感じる。


 私の力が――私を信じてくれる皆様の背中を押していることを。


 かつては、『魔力ゼロ』の私には、何の力もないと思っていた。


 けれど――今は違う。


 今の私には、大切な人たちを守る力がある。


 自分の意思で、守りたいものが守れる。




「うがっ!」

「あがっ!」

「た、隊長! 魔法を使える騎士たちの妨害に遭い、詠唱が上手く……がはっ!」



 私の祝福を受けた王城制圧部隊の騎士たちは、王国騎士の剣を受け流して反撃する。


 その中で魔法を扱える騎士たちは、飛来する魔法を相殺しながら、王宮魔法師たちの詠唱を次々と妨害していく。



「た、隊長! このままでは我々が――うわっ!」

「魔法師部隊、一度下がって態勢を立て直せ! 急げ――ぐあっ!」

「うおっ!」

「がっ!」



 王族側の前線がみるみるうちに崩れ、謁見の間から逃げようとする者まで現れた。


 だが……



「いいか! この場にいる者は絶対に逃がさず、一人残らず無力化しろ! ここで反撃の機会を与えてはいけない!」

「「「「「はっ!!!!!」」」」」



 ここに来るまでは、王城制圧部隊の騎士たちは武器を捨てた者や逃げる者を追わず、襲いかかってくる王国騎士だけを無力化していた。


 けれど、ここにいる王国騎士や王宮魔法師たちは、王国側に残された精鋭だ。


 一度逃がして態勢を立て直されれば、戦いが長引く。


 だからこそ――ここだけは、一人たりとも逃がすわけにはいかない。



「フォール――! 貴様ぁぁぁ!!」



 その時、謁見の間に怒号が響いた。


 声のした方へ視線を向けると、いつの間にか剣を手にした元婚約者がフォール様の前に立ちはだかっていた。



「フォール! 貴様が……貴様が大人しく処刑されていれば、僕は未来の国王としてアリシアと共に幸せな人生が送れたんだ!!」



 血走った目でフォール様に向かって勢い任せに斬りかかる。



「フッ、最後まで他人のせいか、フィリップ!」



 振り下ろされた剣を、フォール様が真正面から受け止める。


 甲高い金属音が謁見の間に響いた。


 その時、嫌な気配を感じ、慌てて元婚約者の後方を見やる。


 すると、王太子殿下の影に隠れて、顔中に脂汗を浮かべながら魔法陣を展開する兄の姿が見えた。


 ――マズイ、このままでは!



「フォール様! 殿下の後ろに兄が――!」

「あぁ、父さん!」

「分かっている!」



 フォール様と視線を合わせた刹那、私の護衛をしてくださっていたお義父さまが、迷うことなく兄に向かって片手を突き出す。



「〈アイスブラスト〉!」

「なっ――ぐあっ!」



 兄の魔法陣が完成するより早く、氷の魔法がその身体を直撃し、兄が床へ転がった。


 ……速い。


 兄より後に魔法を放つ構えに入ったはずなのに、発動したのはお義父さまの方が先だった。


 さすが、フォール様のお父上。


 それにしても……。



「お兄様って、こんなにも弱かったのね」



 屋敷では『俺はフィリップ殿下の次に強い』と、家族や使用人たちに自慢していたから、もっと強いのかと思っていたけれど……こればかりは、実戦経験が大きく影響したわね。


 ――大方、殿下がフォール様を引きつけている隙に、横から攻撃するつもりだったのでしょうけど……残念ながら、リスタット辺境伯家の皆様には通用しなかったようね。


 呆気なく倒れた兄に呆れかえっていると、継母とアリシアが慌てて兄へ駆け寄り、その身体を抱えるようにして後方へ下がっていった。


 ……あの様子だと、二人とも、戦うつもりはまったくなさそうね。



「フォール! バリストンのバカ息子は無力化したぞ!」

「ありがとう、父さん!」



 お義父さまの声に応えたフォール様が、私の元婚約者へ視線を戻す。



「チッ! よそ見をするんじゃない! フォール――!!」



 奇声に近い雄叫びを上げながら、力任せに剣を振るう元婚約者。


 けれど、彼の剣は全て、フォール様に受け流されていく。


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 剣がぶつかるたびに、元婚約者の動きが大きく崩れていく。


 対して、フォール様の息はまったく乱れていない。


 同じ王族の血を引く二人。


 けれど、実戦経験の差があまりにも大きかった。



「くそっ! どうしてだ! 僕は王太子だぞ! 未来の国王だぞ! この国で一番強く、最も尊ばれる存在だぞ! その僕がなぜ貴様などに歯が立たない!!」



 ――そう言えば、二人きりのお茶会の時にも、よく同じようなことを自慢していたわね。


 ……本当に、昔から何も変わっていないのね。


 悔し気に顔を歪める元婚約者を、心底呆れながら見ていると、フォール様がフッと笑みを浮かべる。



「そんなの、積み重ねてきたものが違うからに決まっているだろうが!」

「うがっ!」



 フォール様に押し返され、元婚約者の身体がよろめいた瞬間、フォール様が一気に距離を詰める。



「これで終わりだ!」



 元婚約者が剣を構え直す前に、フォール様がその剣を下から強烈に弾き上げる。



「うっ!!」


 元婚約者の手から離れた剣が、くるくると宙を舞う。


 その顔に驚愕が浮かぶが、フォール様は止まらない。


 懐へ踏み込んだフォール様は、元婚約者に反撃する隙すら与えず――剣の柄で首筋へ鋭い一撃を叩き込んだ。



「がっ!」



 元婚約者の身体がぐらりと揺れ、そのまま床へ崩れ落ちた。



「フィリップさまぁぁぁ!!」



 アリシアの悲鳴が響く中、フォール様は倒れた彼を一瞥する。



「俺のカーラを散々虐げ、『魔力ゼロ』と蔑んだ罪――しっかり償ってもらうからな。この無能のバカ王子が」

「フォール様……」



 冷たく吐き捨てたフォール様が、周囲を見回す。


 いつの間にか、激しい剣戟の音は止んでいた。


 王国騎士も王宮魔法師も、すでに全員が無力化されている。


 それを確認したフォール様は、静かに剣をある人物へ向けた。



「さぁ、あとは国王夫妻と妾の親子、そして、あなただけだ……宰相閣下!」



 その声が、静寂に包まれた謁見の間に力強く響き渡った。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、聖女の力を身に纏った精鋭たちが一気に数の不利を無くしました!


すごいですね、聖女の力って!


さて次回、いよいよお話がクライマックスに突入です!


お楽しみに!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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