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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第四章 幸せになりましょう!

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第101話 夢が潰える時

※バリストン公爵家当主セドリック視点です。

 ――建国祭が目前に迫ったある日。


 『聖女の力を奪い、国家反逆を企てた』という名目のもと、辺境伯家に対して下された王命。


 爵位と領地の剝奪。


 そして、『用済み』となったあの女を除く辺境伯家全員の処刑。


 その王命を執行するため、この国でもっとも優れている王国騎士団を辺境伯領へ派遣してから、約二週間後。


 謁見の間で王族や家族と共に『辺境伯領鎮圧』の吉報を待っていた矢先、私たちのもとへ届いたのは、まったく逆の報せだった。



「なにっ!? このタイミングで、バリストン公爵家以外の王侯貴族の大半が辺境伯家に寝返っただと!?」



 思わず声を荒げた私に、報告に来た騎士が肩を震わせながら深く頷いた。



「は、はい! 辺境伯領へ向かった騎士団からの報告によれば、領内へ進軍しようとしたところ、既に複数の王侯貴族が兵を率いて集結していたとのことです! しかも、そのほとんどが武に秀でた家ばかりで……!」

「チッ!」



 伝令役として王都に残していた騎士の報告に、思わず舌打ちする。


 この期に及んで、有力な王侯貴族を集めて徹底抗戦など想定外だった。


 全く、大人しく王命に従って破滅すればいいものを!


 いったい誰が、このようなことを……!


 そう考えた瞬間、ある男の顔が脳裏を過った。



「……フォール・リスタットか?」



 王家と公爵家を繋ぐ『繋ぎ役』として利用していたあの女に代わり、我が愛しいアリシアをフィリップ殿下の婚約者に据えようとした時、あの男は『用済み』となったあの女を自らの婚約者にすることを条件に、婚約者交換を了承した。


 まさか、あの時には既に動いていたというのか?


 だとすれば、あの女を婚約者に迎えたのも、すべてこの時のためだったのか!?



「そういえば……アリシアが辺境から帰ってきた時、『聖女の力は、田舎貴族の手を借りたあの女に奪われた』みたいなことを言っていたな」



『お義姉さまは、私に嫉妬し、『聖女』という地位を奪おうと、辺境の殿方に力を借りて、『禁呪』というものを使い、私から聖女の力を奪ったのです!』



 あの時は、誰が手を貸したのかまで考える余裕がなかったが……まさか、本当にフォール・リスタットが禁呪を使って、アリシアとあの女の魔力を『交換』したというのか?


 いや、ありえない。


 田舎貴族であるあの男が、私の崇高な計画を知るはずがない。


 だが……万が一、あの男が私しか知らない二人の事実を知っていて、あの時、婚約者の交換に応じていたとしたら……!



「……あの時から、私はあの男の思惑に嵌められていたということか?」



 そう考えれば、全ての辻褄が合う。


 あの男は次期国王の座を狙い、王都にいる父親や元王弟である祖父から情報を得ながら、水面下で王侯貴族たちを抱き込んでいたのだ。


 そのために、王太子妃教育を受け、『聖女の力』の本来の持ち主だったあの女を婚約者にした。


 ――そして、いつの日か『聖女の力』を取り戻させ、自らの妃として『未来の国母』に据えるつもりだったのだ。


 これほど多くの貴族を動かした以上、奴らが動き始めたのは一年やそこら前ではない。


 クソっ! 知らず知らずのうちに、私の計画を使われていたとは!


 ――フォール・リスタット。私を利用した罪、その身をもって償ってもらおう!



「セドリック! 先ほどから小声で何を言っている! これからどうするのだ!」



 陛下の怒鳴り声に、思考を遮られ、小さく息を吐いた私は、視線を陛下に移した。



「万が一、我が自慢の王国騎士団が王侯貴族どもに敗れでもすれば、それを機に、辺境伯側についた者たちが一斉に反旗を翻すぞ!」

「そうですよ、あなた! このままでは貴族たちの暴挙を許すことになりますわ!」

「父さん! 俺はこの機会にフォールを徹底的に甚振ってやりたいんだ! だから、早くどうにかしてくれよ!」

「うるさい! 黙れ!!」



 謁見の間に私の怒鳴り声が響き渡る。


 まったく、どいつもこいつも!


 自分の望みばかりを好き勝手言いやがって!


 状況が悪くなった途端、宰相である私にすべてどうにかしろなど……本当に使えない奴らだな!!


 苛立ちを募らせていると、今度は可憐な娘が私の腕に縋りついてきた。



「お父様! 私、お義姉さまから聖女の力を取り返したいのです! それから、お義姉さまには一生、フィリップ様と私のお仕事をしてもらわないと困ります! ですから、せめてお義姉さまだけでも連れ戻して――!」

「うるさ――――い!!」

「キャッ!」

「「アリシア!!」」



 怒りに任せてアリシアを突き飛ばすと、エイモンとフィリップ殿下が慌てて彼女へ駆け寄った。


 だが、そんな二人を撥ね退け、私は怒りのままアリシアの肩を掴んだ。



「元はと言えば、貴様が勝手に辺境伯領へ行ったのが悪いんだ!」

「お、お父様……?」

「貴様が余計なことをしたせいで、私は……公爵家は、今までにないほど追い詰められているのだぞ!」



 そうだ。


 元はと言えば、こいつが『自分の仕事を義姉に押し付ける』というくだらないワガママを叶えるため、勝手に辺境伯領へ向かったのが悪い!


 アリシアが王太子妃――ひいては未来の国母として、フィリップ殿下と共に、あの女のように粛々と公務をこなしていれば!


 このような面倒な事態にはならなかった!


 ――長年の夢が、このような形で潰えることなどなかったのだ!!



「お父様、私はただ、公爵家のために……ひいては、この国のためにしただけで……!」

「そうだぞ、公爵! アリシアは未来の国母として、あの女を連れ戻そうとしただけだ! それの何が悪い!」

「それが余計だったとなぜ分からない!!」



 次期国王と王妃の肩が大きく跳ねる。


 アリシアはともかく、『文武両道』だった王太子殿下がここまで愚かだったとは!



「何が『国のため』だ! 結局は、自分たちが楽をしたかっただけだろうが! 自分たちのワガママを正当化するために、都合よく国を持ち出すな!」



 ――もっとも。


 自分の望みのために国を利用してきたという意味では、私も人のことなど言えない。


 だが、こいつらよりは遥かにマシだ!


 なにせ、私はこの国の未来のことも考え、我が愛しいアリシアを未来の国母に据えたのだから!


 地味顔の『聖女』より眉目秀麗な『聖女』の方が良いに決まっている!


 だから、私利私欲で国の未来を左右する一大事を起こすこいつらとは違う!


 私の至極真っ当な意見に、謁見の間が重苦しい沈黙に包まれる。


 その時だった。



「陛下! 早急にご報告がございます!!」



 扉が勢いよく開かれ、先ほどとは別の伝令が血相を変えて駆け込んできた。



「今度はなんだ!!」



 陛下の怒声に僅かに肩を震わせた伝令が、息を整える暇すら惜しむように声を張り上げた。


 ――それは、最悪の報せだった。



「王宮内に、辺境伯家を中心とした王侯貴族の軍勢が突入しました!」

「なにっ!?」

「既に正門は突破され、王宮騎士たちも次々と制圧されています! このままでは――!」



 そこまで聞いた瞬間。


 遠くから、悲鳴が聞こえた。


 続いて、何人もの人間が廊下を駆ける足音。


 剣戟の音。


 そして――。


 ガシャ、ガシャ、ガシャ、と。


 鎧の擦れるけたたましい音が、こちらへ向かって近づいてくる。



「ま、まさか……」



 本当に来たというのか。


 ――この国に反旗を翻した『国防』の要が。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、遂に皆様お待ちかね(?)のざまぁタイムが始まります!


カーラを『繋ぎ役』としか思わなかった公爵と、彼の思惑にまんまと乗ってしまった彼らの運命とは!?


物語も佳境に入ってきました!


最後まで楽しんでいただけると幸いです。


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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