勇者な村人D 4話
もう一作がかなりルーズな連載となって本当に申し訳ありません。
今、大幅に改稿していますので、もうしばらくお待ちください。
今日は、もう一作……○.5話を投稿して終わりです。
「「「「「……………」」」」」
そこで見た光景に、【聖騎士】隊の面々は、文字通り“開いた口が塞がらない”
白狼の少女が、その小さい拳に氷を纏わせ、トロールを殴り倒している。
どう見ても腰の曲がった老人が、奇声を上げながらトロールを切り倒している。
フライパンを持った主婦にしか見えない女性が、トロールをはっ倒している。ジュージューいっているところを見ると、どうやら料理中だったらしい。
明らかにさっき見たであろう自称村人D……シンクが、灼熱の大剣を持って大気を震わしている。
誰がどう見ても過剰戦力だ。トロールが可哀想になってきた。
………あ、泣いた。
「おいおいおい!天下のトロール様が命乞いかぁ!?みっともないねぇ!うちの旦那だったらちったぁ、気張るさね!」
………号泣し始めた。
「そうは言ってやるな、ネムよ。のう、トロール。お前さんも腹を空かして山を降りてきただけだろう?………お前に喰わせるもんなんてねーーーけど!」
………上げてから、落とす。まあ、老人が一番トロールを虐めてたのでそのダメージは計り知れない。
「ネムおばさんも、タナおじいちゃんも酷いよ。ね?トロールさん。命乞いなんてさせない。一思いにヤってあ・げ・る♡」
………白狼族……獣人に限らず、魔族とも人類とも違う亜人は、あくまで中立の立場と言うことになっている。
しかし、絶対数の少ない亜人は中立の立場と言えど、その存在力はかなり低い。中には冒険者として身を立てる者もいるが、奴隷という立場が殆どだ。
最も、数代前の勇者が奴隷の待遇改善を唱えたことによって昔よりは扱いがマシになったと聞いてはいるが。
………で、その白狼族の少女なのだが……今は、今だけは亜人に対するイメージとか、そう言うのが吹っ飛ぶ程その少女がぶっ飛んでいる。
上手くは言えないが、一度だけ隊の誰かから聞いた女王様?なるものに近い気がする。どうやらこの女王様と王様の妃とでは意味が違うようだが。
辺りを冷気で凍らして、自分だけのフィールドを作る。それが、白狼に限らず大抵の亜人の特徴的な戦い方なのだが………いかんせん規模が違う。
森全体を白い靄が覆い、その中で一人、可憐な王女が宙を舞う。
その姿は老若男女を問わず、魅了する。シャーロットとはまた別のベクトルの美しさだ。
「おーおー、皆やってるねー。さて、“俺”はフィニッシュを貰おうかな?」
一人称が違う。表情が違う。てか、お前誰だ。何処からそんな大剣持ってきた。
ツッコミどころは色々あるが……
「死にさらあ あ あ あ あ あ ああああッッ!!」
ーーーどうして辺境の村の筈が、こんなにも戦力が高いのか。
「『ぐああ あ あ あ あ ああぁぁ………』」
どうして王都の一個中隊でも敵わないトロールを個人で圧倒できるのか。てか、もう少し連携しろよ。なんで言葉責めだけは連携出来てるんだよ。
しかし、そう思っているのは最早シャーロットのみ。
ほかの【聖騎士】隊の面々はと言うと、
「「「「…………」」」」
ーーーめちゃくちゃウズウズしていた。
流石は国外にも名を轟かず脳筋隊。
あ、自分はそこの隊長だったなぁ〜と、肩を震わす。べ、別に泣いてるんじゃないんね!こ、これは汗なんだからね!
やがて、ズウゥンッーーーと、
人々を苦しめ、奪ってきたトロールが、苦しめられ、その全てを奪われる。
言葉にすると簡単だが、実の所難しい。
なにより、このトロールも何処かで悪事を働いたに違いない。
トロールは、人の味を覚えない限り人里には降りてこないと言われている。
しかし、人の味……または人を嬲り、犯す事に悦びを感じたトロールは例え、数キロ離れた山奥でも人の臭いを嗅ぎ分けることが出来るそうだ。
だから、きっとこのトロールも………そして、トロールを憎む人達も少なからずいるだろう。
シャーロットは一人、思う。
こんな辺境の地で、三方を山に囲われたようなこの村で、どうしてそれでいいのか。
ギルドなどにこのトロールについて話せばきっと、莫大な賞金を得るだろう。地位も名誉も……それこそ、この村の何処かにいる勇者並の。
だが、所詮私は余所者。
だけど……だがしかし、と考えてしまう。
この村の住人が王都に来てくれれば……もしくは……私がこの村に住めば……
楽しく、また誰かの役に立てるだろう。
次期王女が、こんな辺境の村にも関わらず、何処か惹かれているのを、【聖騎士】隊員は見逃さなかった。




