勇者な村人D 第25話
おかしい……もっとなろう小説王道の、勇者と一般兵士並びに騎士団長とのいざこざがあった筈。かんっぜんにスルーしとりゃんせ!
……や、あったんですけどね、構想では。オルレアンがめった殴りにされて、騎士団員が手も触れられずにボコボコにされるとか…………シャルに。あったんですけどねー。夏休みの宿題が如くぽいしちゃったカナー。
そのうち閑話でそこら辺のことを書くつもりです。(絶対に書くとは言っていない)
さて、今回はこの小説における魔法の設定回です!これまでにもちょこちょこ出してたんですが、今回と多分もう一回か二回で完全版ですね!今回書いた魔法の設定はいわば、「一般或いは魔法学をある程度納めているものが知っている常識」程度のものだと思っていただければ幸いかと。
あと一、二回で兵士の修行編は終わりを迎えます。と言うか、うちの主人公は今更修行したところで力を増すタイプではないので。過去編ならちょくちょく出てくるかもですが、今後主人公含め村の住人達の修行編を出すつもりはありません。
と言う前置きの上で、第25話の始まりー!
〜シンクの!猿でも分かる《飛竜》の攻略法!〜
①飛ぶ。
②おもいっっっっきり殴る。
③死ぬ。チーン。
「ぐへぶぁっ!!」
シャルにおもいっっっっっっっきり殴られた。どうやら、この崇高なる数式が分からないとのこと。うんまあ、これは分からんわ。
〜第二回!シンクの!シャルでも分かっ……
「ぐあぁっ!!」
シャルにおもいっっっっっっっっっきり蹴られた。ちょっとブレイヴ・ターンが遅れたが為に、肋骨数本を待っていかれたやもしれない。………成長したな!
流石に次は無いと理解したのか、真面目に始めた。
〜第三回!シンクの!猿でも分かるワイバーンの攻略法!〜
そもそも、ワイバーンの攻略法、第一としては少数精鋭が理想の形なのだ。先程も話した通り、ワイバーンには要所要所にしか竜鱗は存在しない。しかし、人間は知っている。古来より痛い汁を舐め続けた人間だけはソレを学習し、己らだけで昇華しあった。結果、竜鱗に守られていない箇所でも、当てれば勝てるであろう攻略法を幾つも生み出した。
その一つが竜翼の付け根。ワイバーンの竜翼は(大体のドラゴンがそうだが)蝙蝠の翼のように手、前肢、肩にかけて広がっている飛膜のお陰で、急降下や急旋回をこなす事が出来る。しかし、飛ぶ為には全く別の箇所の、別の方法が使われる。
ーーーそれが魔法だ。
この世界の魔法は多種多様。探求、或いは創造さえすればそれがどんなものでさえ実現出来てしまうだろう。宇宙飛行や核開発など、それが必要とされなかっただけで、やろうと思えば(仕組みをある程度理解しなければだが)再現出来る。
さて、ワイバーンが飛行する際に使うのは二つの魔法。重力操作と筋力増加のみ。
重力操作で自身の比重を軽くし、筋力増加で飛ぶ為の持久力と瞬発力を跳ね上げる。この為、地に落ちたワイバーンこそ最も警戒すべき状態と言われているが、それはまあ、いいだろう。
重力操作……言うのは簡単だが、一般的な解釈だとなかなか難しい。なんせ、この世界の魔法は“ある程度”仕組みを理解しなければ使えないからだ。が、逆に言えばそのある程度さえ理解出来れば発動する。(一部例外もあるが)
例えば、発火魔法。ーー空気中に漂う燃料となるナニカと、己の魔力とを合わせれば発火する。ーーこれさえ理解出来ればいいのだから。
さて、重力操作に話を戻そう。重力操作。物も人も、比重を変えてしまう、使えれば確実に便利な魔法。他人に使う際には、同意の許可の元、或いは疲弊している……という条件が必要になるが、それを差し引いても利便性の高い魔法である。
さて、この魔法を使う際に必要になるが知識は「この世界のありとあらゆるものはナニカに引っ張られている。そのナニカを軽くする為に何らかのプロセスを此方からかける」ーーだ。ナニカが多い、全くの虫食い論だが、この程度の理解で使えてしまうのが魔法だ。
では、そのナニカをワイバーンが理解しているかどうかと言えば、それは否だ。ここで先程の一部例外の話に戻る。【勇者の独壇場】や確かな詠唱、そして……力技。
ワイバーンの場合、最後……力技に当たる、
竜種……亜竜、真竜に限らず、すべからく絶大にして膨大な魔力を備えているのが竜種だ。比較的魔力が少ないと言われているワイバーンでさえ、重力操作と筋力増加、二つの魔法を力技で行使する事が出来る。
その行為に、必要なプロセス………詠唱も、理解も、感情も、思考も、一切を無視して。
賢竜という真竜の一種がいる。この種は、魔法を行使する為の理解を深く持ち、また詠唱も一語一句全て漏らさず暗記している。力技では決して発動しないような強大な魔法を、その一手間だけで使える事が出来るのだ。この事から、賢竜は真竜の中でも一、二を争う力を持っているとされている。同じ竜種と言えども、ワイバーンとは雲泥の差だ。
さて、話を戻そう。ワイバーンの竜翼の付け根。正確にはその辺りなのだが、魔法の力技行使は得てして、狭い範囲にしか掛からないものなのだ。ワイバーンの場合、滑空や旋回などは飛膜で賄われているが、重力操作は身体の一部と竜翼全体を軽くする為、筋力増加は後脚と竜翼を動かす為の筋肉増加。故に、その辺りに付与妨害でも打ち込めば楽勝出来る。
ーーーーと、言うわけで行ってみよーか!!
「「「「うおおおおおおおおっっ!!!」」」」
隊列を組む魔法大隊、落ちた所を逃さんとする騎士の皆さん、トドメを今か今かと待ち望む比較的軽装の、様々な武具を装備した人達。
タナ爺さんにぶん投げられ、一先ず空を旋回していたワイバーンは事ここに来て理解する。
『ああ、奴らにやられた方がーーーー痛そうだなっ!』
と、
それからの行動はまさに疾風迅雷………とまでは行かないが、残像を残すスピードで真っ直ぐに狙うはシンク。どう言うわけか、先程の会議?の際、奴からは覇気というものが全く、全然、これっぽっちも感じられなかった!そう、自身の直感を信じ、突げ
「さ、もう一回な?」
ワイバーンは、己は、確かに死んだ。一度、確かに死んで、蘇った!!
「シンク、貴方……」
「ああ、これは正確には蘇生じゃない。ーー生物ってさ、頭と胴が離れても数瞬は生きてるんだ。その数瞬の間に再生した。たった今、木っ端微塵にしたから再生は難しいかな?って思ったけどさ、案外上手くいったわ」
「「「「……………」」」」
バケモノだ。本物の、バケモノだ。自分が何をしたか、それこそ、トイレに行ってくる感覚。ワイバーンが、生物が、まるでミキサーに入れられたみたいにグチャグチャになって、およそ生物の尊厳なんて塵も残さぬような姿になって………それからどうした?蘇生?再生………だ、と?巻き戻しのように、肉片から部位へ、部位から肉体へ。その様は、自然を馬鹿にしたかのように、神秘とは懸け離れた光景だった。何人も吐いた。何人も目を覆った。魔物の尊厳なんて、威厳なんて、生物として本来持っているカス程の誇りなんてものは、コレにとってカス程度にもならないのか?なら、己達のいる意味は…………?
改めて、勇者と己らの圧倒的な“差”を見せつけられて、植えつけられてーーー
「よっしゃ、こいやああああああっっ!!」「きばれやああああああっっ!!」「雑魚があああああっっ!!」「うがあああああっ!」
ーーまだ、折れなかった。
「え、えっ?」
「シャーロット様!あの程度!楽勝ですよ!」「ええ!やってやりましょう!」「俺がやる!お前らは退いてろ!」「いいや、俺だ!」「「「どうぞどうぞ」」」「畜生!!」
「どうして………」
あんな差を見せつけられて……恐怖とでも言うべき絶対的上位者は誰なのかを植えつけられて………
「なんで立っていられるか?と」
「シンク……」
「や、当事者の俺が言うのもなんだけどな?あいつらにも家族はいるし、友達もいる。守るべきものがあるからこそ、負けられない……泥沼の戦いが待ってるんだ」
「守るべきもの………」
臭いけどな。そう言ってシンクは、顔が様々な液体でぐしゃぐしゃになったワイバーンを無理矢理飛ばせ、大規模討伐訓練が始まった。
「なら私は、シンクを守るね?」
「……へ?」
訓練は、それから三日三晩続き、タナ爺さんの奢りでささやかな食事会を開くのは、それからさらに2日たってからの事だった。




