勇者な村人D 第26話
そういえば完全に忘れてたので、ここで詳しい主要人物の服装(装備)を表記しておきます。
シンク・ヒスイ
村【白のTシャツ、茶色いパンツ、タオル】
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戦闘時【白のTシャツ、黒のパーカー、黒のパンツ、炎獄魔剣レーヴァテイン(多分上の文字はコロコロ変わります)】
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過去【灰色のシャツ、黒のズボン、熱い気持ち、純粋な心、綺麗な笑顔】
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旅道中【浅緑のシャツ、黒のパンツ、サファイアの嵌め込んである腕輪(素早さ+15〔目測〕)ルビーの嵌め込んであるネックレス(攻撃+20〔目測〕)】
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謁見の場【白のTシャツ、茶色いパンツ、軽い装飾、胡散臭い笑顔】
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訓練【黒のインナー、灰色のパーカー、黒のパンツ、痛い拳】
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でぇと【本編へ↓にスライドしてね】
予想以上に長くなりそうなので、シャル、ロゥ、魔王、ネム、タナ爺さんは次回、次々回、次々次回を予定しています。
さて、修行編もいよいよ大詰めである。勇者と伝説の男から出された最後の課題は、少数精鋭による中級或いは上級魔族の討伐だった。
中級より上位の魔族、魔物は、その殆どが人類の住む大陸とはやや離れた地域に分布している。魔族ごとに集落を持っていたり、もしくは国……とまではいかないが中規模な村レベルのコミュニティを持っていた例もある。
しかし、現在発見されている分布図をどう見ても、ここ王都から馬車を使って1ヶ月はかかる場所に存在する。
ので、仕方がないからタナ爺さんとネムさんが狩って来る事になった。
……………よって、今日は休みだ!
「………2ヶ月かかる距離をどうやったら一日で往復できるのよ……」
「そこはほら………気合い?」
「………はぁ……」
あまりの高スペックについつい暗い顔をして溜息を吐いてしまう美貌の少女。言わずもがな、シャーロット・S・ガーネット、この国の次期王女である。物憂げで儚い雰囲気を纏い、(実は気疲れしているのだが)行く人来る人にとってはそれが深窓の令嬢に見えるのだから、顔面偏差値が高い事はお得だ。そしてその隣を歩く爽やかな青年、現勇者にして村人……シンク・ヒスイその人だ。終始あの、知っている人がみれば気持ち悪い笑顔を辺りに振りまいている。
シャーロット……シャルは、髪との相性をよく考えた、決して表には出ないが、その存在感を上手く引き立てる飾り気のない白いワンピース。元々の素材がいい事は勿論、人に見られる事を意識して軽く化粧を乗せている為、普段より大人らしい雰囲気を醸し出している。現に今も、シャルを横目に見たデート中の男性が鼻の下を伸ばし、連れの女性に小突かれた。
そんな絶世の美女と言っても過言ではないシャルに対して、シンクの装いはこうだ。
白のインナーに浅緑のジャケット。身長もそこそこある為、黒のパンツが良く映える。装飾品も嫌にならない程度……目につくが目立たないネックレスやバングルなど……爽やかな好青年を意識したコーデだ。それが肉食系の女性に大ウケである。あるものは牽制し、またあるものは肉弾戦に躍り出る。割とシャルの事が目に入っていなかった。
「ふーん………」
「どしたの?」
「うーうん。なんでも」
だがしかし、一番シンクの格好に興味があるのは実の所シャルだった。
確かに、初めて出会った(再開した)時の第一印象は真面目な好青年であった。泥の付いた白いシャツに茶色いズボン、肩から掛けてあるタオルに汗が光る。その農作業姿に、何人もの肉食系隊員が「ねらっちゃう?」「あーでもー」「だいじょーぶ。金ならある」「い、いっちゃう……?」「よーし、4○だー」「お姉さんのテクに舌を巻きなさい」
…………まぁ、全力で止めたが。
それはそうとして、シャルの鼓動は早くなっていた。理由としては、大体11話から今に至るまでを見て頂けたのならば、分かるやもしれない。
さて、話は変わるが、今の今までシャルにはお付き合いしている異性は勿論のこと、親しい異性の友達さえいなかった。(隊の人達な別)………シンク以外。
王族として、もう直ぐ成人を迎える身としては幾度となくそれはどうなのだろう?と疑問に思ったのだが、表面上は大怪我をして帰ってきたあの日、ディオンが、自らの従者となり副官となり右腕となり親友になったあの日、身体のダメージとしては心労的な割合が多かったのだが、それがいけなかった。いや、どんな理由があろうと、一桁の娘にドラゴンを倒せ、なんて無茶ぶりは頭がおかしいとしか言えないのだけれども。
まあとにかく、後から国王……オーレンが詳細を聞いて激怒した。かの悪虐と言うか娘をこんな目に合わせた上に誑かしたクソ野郎は許さんと誓った。血の涙を流す程に。
それからだ。シャルの自由が徹底的に奪われていったのは。幸い?シャルはその男の記憶を無くしていたので、言い繕うのは簡単だったし、当時まだ、引退こそしているがタナムとネムがいた時代、二人にシャルの事を任せると、驚く程すんなり籠の中の鳥を受け入れた。
この時、二人に任せたが故に成人前の少女だと言うのに、王国最強の《女傑》として名を馳せてしまったのだが、それは蛇足と言うべきか。と言うよりも、シャルは覚えていないのだ。タナム・オルタナ、ネムイ・ムイムイ両名が自身の教育係であった事実を。まあ、シャルの教育係については、次回か次々回辺りで詳しく話すとして………今はデートだ。
そう、デート。古来より伝わりし伝説の戦さ場。男と女が互いに凌ぎを削る、実しやかに紡がれし英雄譚。これにさえ勝利すれば男は栄光を、女は幸福を手にする事が出来るという………
「で、シンクは誰かと行ったことがあるの?その………でぇと、と……らに……」
それはそれ、これはこれ。基本的に、聞きたいことは今聞こうのスタンスなのだ。当然、プランやでぇとに必要な心情?も、この後じっくりねっとりリサーチするつもりだ。
「ん?行ったことあるよ」
「!?へ、へー……しょ、しょーなんだ……」
「うん」
「た、たのひかった?」
「うーん……初デートだったからよく分からなかったけど………」
「けど?」
「相手は喜んでくれたよ?」
「っ!」
笑顔。それも、いつもの汚いモノではない。純粋に、相手を限りなく慮ったであろう綺麗な笑顔。肉食系女子がいた辺りから何か肉のようなものが倒れた音がしたが気の所為だろう。
「で、だ、誰らとひったの?」
「ん?シャルも知ってる娘だけど?」
これである。これを聞きたかった。空気?情緒?情景?そんなものは気にしない。我が道を往くスタンスだ。
「あ、ロゥちゃん」
「そうそう、ロゥと………え?」
シャルの視線の先には、ロゥとディオンとその目の前に倒れる複数人の男という中々にカオスな状況。まあ、大事なのは男の胸が緩やかに上下しているという事。大丈夫かどうかで言えば、限りなく黒に近いグレーといったところか。死にはしないが、生き返りもしない。後数刻で輪廻転生の輪に乗るだろう。
「………いや、…………いや?」
「どうする?」
目で、見捨てるかどうかを問うシンク。そこで、シャルは気付く。男達の周りに無造作に転がっている鉄屑ーーもとい剣や斧だったものを。
「多分だが………アレは此度の魔王討伐に呼ばれた傭兵崩れだろう。一応、逃げる準備が必要な大規模店舗から順を追って王が呼びかけてるからな。予定より少し早いが………大方何処ぞから漏れたか?」
「で、その傭兵崩れが女子供相手に武器を抜いたわけ?」
「まあ、二人とも見た目だけで言えば華奢な美少女と美女だからな」
「ん〜………警備兵が来る事を祈るわ」
「ハハッ了解」
シンクは、薄く笑ってディオンとロゥへと歩を進める。今日の警備当番は《聖騎士》隊だとは告げずに。




