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勇者な村人D  作者: ネコモドキ
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勇者な村人D 第24話

恐らく、多分もう1話……今日、明日にでも投稿したいと思います。


勇者の出番→勇者の独壇場

変更しました。いえ、どっちの文字の方が格好良いとかそんな問題で。英語を頑張って日本語に直すとかもういいや。

 

「『Guuu……』」


 ずうぅん……っ

 土煙を上げ、青い巨体が地に沈む。

 強い憎しみを宿した単眼が今、ゆっくりと閉じ………一体の『単眼の巨人(サイクロプス)』が絶命した。


「「「いよっしゃああああああああ!!!」」」


 歓喜。怒号。咆哮。

 《サイクロプス》の巨体の上には幾人もの兵士。支給したての新品の鎧と剣は、泥に塗れ、血に汚れ、汗に輝いていた。


「うむ。よくやった、お前達!今日はワシの奢りじゃ飲み明かすぞっ!!」


「「「おおおおおおぉぉぉぉっ!!」」」


「はぁ………」


 そこから少し離れた場所で皺だらけの顔に笑顔を刻む老人と、気品溢れる紅い少女。そして、覇気のない村人。

 三者三様の組み合わせだが、そんなカオスな現状に誰も突っ込んだりはしない。


「よぉしっ!誰か()と飲み比べだ!勝った奴にはあの!タナム・オルタナが現役時代使っていた短剣(曰く付き)を、贈呈しよう!!」


「「「おおおおおおおおっっ!!」」」


 ーーー何故なら、彼らは剣を交えた“友”だからだ。


「男って………単純……」


「ふふん♪そこが可愛いんじゃない?」


「あ、ネムさん……お疲れ様です」


「ネムおばさん(・・・・)で良いわよ?」


 そう言ったネムは万人を魅了する微笑を貼り付けていたが、目は笑っていなかった。


「いえ、ネムさん(・・)でお願いします」


「あらそう?ふふ………あ、後片付けしなくちゃね?ーーー《燃えろ(灯れ)》」


 ボウッ

 その一言で《サイクロプス》の巨体は蒼炎に包まれ、誰かが「あ」言葉を発するよりも早く、灰塵と化した。


「あぁー……討伐部位だけで一週間は暮らせるのに……」


「みんなで均等に分けるのは面倒だからって、シンクが」


「そこら辺ちゃんとしてますよね、本当」


「まあ、私達が徹底したからね」


「一言発するだけで《サイクロプス》を灰に出来る人に徹底的かぁ………どんな地獄なんだろ」


「昔、シャルちゃんも何らかの特訓を受けたって聞いたけど?」


「あれは………」


 あれはそう、骨を砕いて治したら前よりも丈夫になってたーー!とか言う大変頭のぶっ飛んだ方法なので出来れば勘弁したい。傷痕を消す為に父が民の血税を結構いっぱい使ったのは、今でも笑い話に出来ないし。


「いやぁ!まさかあれから二日間ぶっ通しでぶち殺し合う事になるとはなぁ!」


「そっすね!皆さん、俺の予想より遥かに雑魚でしたんで!」


 肩を組んで笑い合うシンクと、下手をすれば山賊に見える【黒騎士】隊、隊長オルレアン。そこには、先日の遺恨など、影も形もなかった。


「まさか、【勇者の独壇場(ブレイヴ・ターン)】にあんな弱点があったなんて……」


「まあな!後、この事は魔王も知ってっから」


 ハァ……と溜息を吐き、シャルがシンクに駆け寄る。その顔は、弱点と聞いて絶望した顔とは、程遠いものだった。


勇者の独壇場(ブレイヴ・ターン)】には、制限時間がある。初代勇者、シンク・ヒスイ曰くお約束なそれは、絶大にして絶対の力を誇る代わりに、寿命を、力を、精神を、命を削る諸刃の剣。

 現に、限界突破などという掛け声だけで本当に限界を突破してしまった初代勇者の方のシンクのお陰で、初めは1時間もの制限時間があったのだが、今では45分へと減衰している。

 深い紅から、真の紅へと受け継がれた最狂の力は、今もなお、身体を蝕み、狂わしているのだ。


「さーて、魔王が来るまで後大体二週間。次はドラゴン行くぞーー!」


「せめて【魔眼の蛇尾(コカトリス)】か【魔眼の巨蛇(バジリスク)】にして下さい!」


「そうです!ドラゴンなんて軽く死ねます!」


「まだ死にたくありません!」


「バカヤローーーー!」


「「「っ!!」」」


「人は誰しも一度は死ぬんだ!ここで死なないでいつ死ぬ気になるんだ!前を向け!お前らのその汚れは勲章か?ただの、汚れか!?二日間を思い出せ!千切っては投げられ、千切っては投げられを繰り返して来たのは何故だ!屍肉の上に兵が成り立つ?成り立つわきゃねーだろ、バーーカ!生きてるものしか英雄にはならない!死したもの達はただの一兵卒に過ぎない!それが何故!お前らには分からない!?教えてやる!変えてやる!お前らを!英雄へと変えてやるさ!…………俺に!付いて来いっ!!」


「「「「うおおおおおおおおっっ!!!」」」」


「………はぁ」


 何故かオルレアンまで一緒になって叫んでいたり、何故か逆賊どころか国賊扱いされてもおかしく無いことをしてる人物がわっしょいされてたり、タナ爺さんがドラゴンらしきモノを引きずってくるのが見えたが、敢えて無視する。


「よっし、お主ら!先ずは飛龍ワイバーンからじゃ!」


 べちゃ。そんな音を立て、ワイバーンが皆の前へ投げられる。心なしか、その瞳は潤んでいた。

 赤銅色の皮膚。爬虫類特有の縦に割れた瞳。乱雑に生えた、噛むと言うより、痛みを与えることに特化した牙。前脚はなく、恐竜を思わせる立派な後脚がある。

 この世界において、例え亜竜だとしても竜は竜。天空の覇者たるものの一角をこうも簡単に連れてくるとは………一同は改めて目の前の老人に戦慄していた。それと、その事に対してなんの感情も、いや、何時もの事か……程度にしか捉えていないエルフと村人と現姫様にも。


「さ、やるか」


「「「「…………っ」」」」


 トイレにでも行くか。そんな軽い感じで発せられた言葉。目の前の亜竜が、脅威に見えていない。ただの飛ぶトカゲを見るような目。

 その事に、その事実に一番恐怖したのは勿論、その飛ぶトカゲ自身。しかし、ちっぽけな脳みそでいくら考えたとしても、なんの解決策も浮かんでこない。

 ブレスを吐く。片手であしらわれる未来が見えた。タックル。片手であしらわれる。噛み付く。片手であしらわれる。蹴る。片手であしらわれる。翼で打つ。片手であしらわれる。逃げる。片手であしらわれる。命乞いをする。片手であしらわれる。

 ワイバーンは軽く絶望し、失神した。が、すぐに引き起こされる。目の前の、脅威“達”によって。

 ワイバーンは亜竜にして珍しく、体積のほとんどを竜鱗が支配しているわけでは無い。流石に、心臓部など己の弱点とも言うべき箇所にこそ竜鱗はあるものの、飛ぶ為に少しでも比重を軽くしようとしたご先祖様の努力の末に、天空では唯一無二のスピードを誇る存在となった。だがそれ故に、一度捕獲でもされてしまうと防御力の無さから為すすべがない。市販のナイフなどそんな生半可なものでは勿論通るはずもないが、聖剣など、伝説級の武具を持ってすれば例え赤子でも、その皮膚を切り裂く事が出来る。

 逆に地竜などは防御に特化しているのだが………それは今言う話ではない。今は、目の前の脅威“達”にとって鱗など、ただの防御の手段の一つにもならないと言う事。恐らく、パンチの一つでこの身に風穴を開けるだろう。

 ザッザッ……と、砂を踏む音。死神の行進曲。滅亡へのカウントダウン。ゴクリ。生唾を飲む音。生まれてこの方“死”という概念さえ知らなかったが、なるほど確かにこれは恐ろしい。今まで無邪気に命を狩っていたあの頃の自分を強く恥じる程に。

 後悔に後悔を重ねやがて………


「さて、じゃあ………皆、やろうか」


 どうやら、少年が手を下すわけではないらしい。その事に、心底ホッとしたワイバーンであった。



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