勇者な村人D 第22話
この回から村人達の設定をドバドバ出していきたいと思います。
「死刑♡」
シーーーン、と場が凍る。魔法的な影響ではないのだが、重苦しい空気が辺りを包み、それから何とか逃げようともがくのだが……頼りになりそうな大臣はさっきから同じ事をぶつぶつと繰り返しているし、姫……シャーロットは目に涙を溜めてプルプルし出したし、張本人である勇者も王も終始ニコニコだった。
ーーーこの場を何とかするには、正直魔法よりもタチが悪いかも知れない。
「ええ、とお、父様、冗談ですわ、よね?」
「ああ、冗談ーーーーー」
ほっ、と周りが溜息をつく。基本は温厚な王だが、些か少し短絡的な所があるのもまた事実なのだ。
「と言うとでも思ったか?」
「『シンクーー!謝って!ほら早く!地面に頭つけて!』」
「『お前さっきまで笑い堪えてたのになにその変わりよう!』」
「『お父様の本気ギレって分かりにくいのよ!』」
「『親子だろ!?何とかしてくれ!』」
「『数年前にあんたが私を誘拐してから城内での私の発言権は地に落ちたわ』」
「『おおぅ……ごめん』」
「『兎に角!ほら早く謝って!今なら半殺し程度で許してくれるかもしれない!』」
「『この国の王は温厚って聞いたんだけど?』」
「『自分より身分の低いものに指図されるのが大嫌いなのよ………数年前よりは大分マシになったんだけどね』」
「『典型的な悪い貴族じゃねえか』」
「『典型的な悪い貴族の家に産まれたのよ。で、外でお母様に出会って生き方を改めるのを条件に結婚……
婿養子よ?』」
「『王族の結婚ってそんな簡単なものだったっけ?』」
「『あんたは村の出だから知らないかもだけど……案外そんなもんよ?一応、お父様はお母様の政略結婚の相手の一人だったらしいし』」
「『あ、そーなんだ』」
「『そーなのよ。ほら、早く謝って』」
「『いやぁ、別に大丈夫じゃないのか?さっきと同じ質問してみろよ』」
「『え、えぇー……』」
確かにそう言えば、父がここまで異性と話す……もしくは近くにいるのに引き剥がそうとしなかったのはこれが初めてかもしれない。
何か理由でもーー……と思い、チラリと顔を上げる。
「………?」
特に変わりはなかった。シンクに向かい、仄かな殺気をぶつけている。取り敢えず、言われた通りに質問をしてみた。
「お、お父様……先ほどの事は勿論……冗談ですわよね……?」
「勿論だにぃー☆」
「お父様!!?」
王がHAPI☆HAPI☆してた。誰の目にも、異常は明らかだった。やばい薬でも……と、シャルが辺りを見渡すが、いや、見渡した所で分かる筈がない。可能性としては遅効性の毒か、この勇者の不可思議な力だ。
「貴様ァッ!王になにをした!」
ジャランーーと、王直属の部隊『黒騎士』隊隊長であるオルレアン・オールドがシンクに向かって剣を抜いた。因みに、先程『聖騎士』隊を罵倒していたのもこの男である。
長身に粗野な目つき、乱雑に伸ばした群青色の髪を後ろで束ねると言う装備が無ければ山賊にも見える男でもあった。
「いや、いいのだ。オルレアンよ。すまぬな」
「ーーーーハッ!」
王の言葉に、大人しく剣を納める。最後にシンクをギリリと睨みつけ、所定の位置へと戻った。
「さて、さっきの話だが……死刑ではなく、私刑だ、私刑」
「「「「………はあっ!?」」」」
「ーーーと、言うわけでその内容を言い渡したい。二人に……いや、シャルも含めて三人にしてくれるか?」
「「「「ーーーは」」」」
しこりも、憤りもあるだろう。だが、上の命令だ。色々と言いたい事を我慢し、すごすごと退出していく。
「…………ふぅ、で、あの変わり様は一体……?」
たっぷり数分待った後、シャルが口を開く。勿論、内容は先程の疑念についてだ。
「何が?」
「はい?」
「ああ、勇者殿も退出して貰って結構だよ。私刑の内容は王都に滞在中私の近くにいてはならないにしようかな」
「ちょ!?と、いえ王よ!これより二週間後にはもう魔王軍が侵攻してくるのですよ!?作戦の指示などは……」
「追って説明する。なぁに、宰相と私に任せてくれ………なぁ〜んて勿論言わないにぃー☆ずぅ〜と、ここにいてくれても構わないんだにぃー☆」
「お父様!?」
「くくく……あの変わり様。長いものに巻かれる癖は、やはり今も昔も変わらないなぁ」
「何奴!………て、タナおじさん、ネムおばさん?」
鋭い殺気が王の発言を捻じ曲げた。それは分かった。
しかし、こんな異様なまでの殺気は感じた事がない。まるで、人の皮を被った化物のような殺気。そう、目の前のシンクを思わせる何処か機械的で、生物的な矛盾したもの。
まさかそれを飛ばしたのがこの二人だったとは………その覇気だけで分かる。この二人も、シンクとそう変わらない実力を持っていると言うことを。
「やほ♪気付かなかった?」
「久し振りに笑わせて貰ったぞ?シャルちゃんも久し振り」
「え、ええお久しぶりです?」
「タナム・オルタナ元帥様、ネムーイ・ムイムイ特別顧問様」
ばっ!と、もしくは、ばっっっ!と、首から上がもげそうな勢いで頭を下げる王。
「あ、面を上げても構わないよ?」
「うんうん。私達、別にそこまで怒ってないし♪」
「はっっ!!」
「え?え?」
「ああ、言い忘れてたけどな?」
シンクが、本当に言いにくそうに後頭部を掻く。そして、二人を指差しこう言った。
「二人共、地位と純粋な戦闘力で言ったら、王都の誰も手が出せない程の化け物なんだわ」
「え、えええぇぇぇえええええ!!?」
ーーーやはり、あの村の住人は皆化物だった。




