勇者な村人D 19話
アホみたいにスピーディーな展開がウリのこの小説!
話は変わりますが漫画にしろ小説にしろいざ、設定を語る……と言う時には何故か色々な事を全て、それもスピーディーに語ってくれます……あるあるですよね……。
で!このスピーディーな小説だと!設定を語る際にはスピーディーなんてもんじゃないです!ほんともう!脱兎の如く!光の速さで!フレッツの方です!
と、言うわけで過去編終わりです。設定がごちゃっとしてわかりにくいよ!または、わかんねぇよバカ!と言うそこのあなた方!次話に色々と載せますんで良かったら見て下さい!
ーーーなんで今回じゃねえんだよ!?ですか?いえ、次話にも色々と載せますんで。ハイ。
と、言うわけで19話です!若干のグロシーンも入っておりますので苦手な方はご遠慮下さい。
「ーーーーーえっ!」
シャルは困惑していた。とある方から教わった抜刀の構え。げーむ?やまんが?なる物からヒントを得たと仰っていたこの構えなのだが………
「うわわわっ!!」
ーーーまさか、ここまで威力があるなんて思ってもないに決まってるじゃない!!
踏み込む。水晶化された地面にビシリとヒビが入る。「え」声は、遥か後方へと置いてきた。分厚い空気の壁を押しのけーーー気付けば、迫り来るドラゴンの胸元。無我夢中で身体を振り回し………確か蹴ったんだと思う。で、ドラゴンが仰け反っていた。
「ちょっと、シンク!ここまでパワーアップするなんて聞いてない!」
「言ってないし。大丈夫!シャルなら出来る!」
「マジで覚えておきなさい!」
ドラゴンを蹴りつけた際、脚が変な方向へと曲がってしまったが、昨日やっていたシンクのスタンプを真似して、無理に直した。いざやってみて分かったのだが、どうやらわざわざ地面を踏みしめなくとも治るらしい。
「フゥーーーッでも、これなら!」
「『GRUUUU………』」
怒っているのか、痛がっているのか、それともただ吠えているだけなのか………
利己的な光が無くなった瞳からは今、それを伺う事は出来なかった。
でも、その瞳が恐ろしいと思う事はもう、無くなった。
そう、後はーーー倒すだけ。
シャランーーー。剣を抜く。後ろ手に構え、身体を絞り、左脚を前にスライド。ビシシーー水晶化された地面にヒビが入るが、気にしない。
「ーーー疾!」
限界とか境界とか分解とか。とにかく、そんな枷的な………鎖的なものを引き千切り飛ぶ。
ぶちぶちぶちーーー生々しい音を立て、筋肉が分断されていくのがなんとなくだが、分かる。痛みはーーーない。いやあるにはあるが、戦いに支障が出る程では無い。恐らく興奮しているのだろうが、終わった後に気絶なりなんなりしてそれから逃亡すればいいだけの事。今は気にせず前だけを見る。
すると、気付く。周りの時間がゆっくりと進んでいる事に。迫る、ドラゴンの腕。灰色の世界で、まるでコマ送りのように見える腕。ーーーこんなもの、簡単にかわせる。
宙を蹴る。さらに勢いをつけ、ドラゴンの腕を掻い潜り胸元に飛び込む。私の得意分野はスピードけど………今はパワーもある!
「うらああああああああああっっ!!」
目指すは、先程蹴りつけた場所。水晶が割れ、肉が抉れ、白いものが見えている箇所。
いくら相手が魔王で魔物だからと言って少しばかりは躊躇ってしまうような状態。ーーーだけど!それが命取りになるんだ!
「あああああああああっ!!」
ーーー刺突。腰をひねり、手首を引き抜く。言ってしまえば、これだけの事。しかし、今はスピードもパワーも人類トップクラス。ただの刺突が、魔王を消滅足らしめる。
「『GUAAAAAAAA!!』」
ーーー絶叫。
さの声を聞き世界が、私の視界が色付いていく。胸元に焔を生やして後方へと吹き飛ぶ水晶龍。刺突の構えでフリーズした私。それらを、何処か客観的に見つめる目。
ブシィッ。腕から、紅い花が咲いた。ああ、脚からもだ。全身を駆け巡る紅くて、ちっとも優しくない破壊。
ーーーあ、これはマズイ。直感で、なんとなく分かる。早く意識を………落とそうとして、無理矢理現実へと引き戻される。
「あああああああああっ!!」
再び絶叫が聞こえる。身体からは力が抜け、頭が熱いのに冷たい。股下からはなにか液体のようなものが滴り、地面に水溜りを作る。
「あああああああ!……あぐぅっ!……ああっ!!」
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイイイィィィッッ!!
思わずよろけて転ぶ。それだけで、痛い。異臭のする水溜りの上をバシャバシャと、陸に干上がった魚みたいにみっともなく跳ね回る。
第三者から見たらさぞかし滑稽なのだろう。脚を、腕をピーンと伸ばし、物乞いをする乞食の如くのたうちまわる。顔からは、穴という穴から液体が漏れ出し、舌さえもだらしなく口から飛び出て、どんどんそのかさを増す水溜りを舐める。ーーーしょっぱい。
白目をひん剥き、時折ビクンビクンと痙攣する。もう、無理ーーーー永遠にも思える時間。やっと、意識を手放す事が出来た。
「………間違いなくこれ、絵面的に事後だよな?」
「まーた、そんな言葉を覚えてきて……あ、それはそうと大丈夫かぃ、オリオン?」
シャルの勝利を横目に見て、テコテコと歩み寄ってくる二つの小さい影。シンクとフローラだ。
よく考えてみれば、一桁の女の子に……しかも、次期王女にこんな……まあ、事後的な?格好にさせたのだ。本来なら、首が幾つあっても足りないだろう。
そう………本来なら。
「んじゃ、記憶を凍結するぞ?」
「やってる事なかなかに鬼畜だよな……」
「仕方ないだろ?この後にまたもう一仕事残ってるんだ」
「痛ぅ………んむぅ?我は一体どうして……」
「おぅ、起きたかオリオン」
「おぅ?確かあんたは………ああ、フローラか。久しいな」
そう言って水晶龍がいたところから姿を見せたのは赤毛の青年。切れ目に、活発そうな見た目の美丈夫だ。ーーー腹がクパァしてなければ別だが。
「オリオンさん。貴方に頼まれて欲しい事がある」
「お前は……【魔王紋】に呑まれていた際、幾度となく気配を感じていた。……主に殺気だがな」
クツクツと喉を鳴らし、愉快そうに笑うオリオンと呼ばれた青年。吊り上がった瞳は縦に割れ、元がなんであったのかを密かに匂わせる。ーーー腹からは色々垂れてるが。
「で、少年。何の様だ?」
「シャルの……貴方を倒した少女の護衛をして欲しい」
「んむぅ、いいのか?とある勇者の様に例外はあるだろうが、人類は我々が近付くのを酷く嫌がる」
「お偉い人には既に話は通してある。なにより、護衛対象であるこの少女はきっと嫌がらない」
「そうか……ならば引き受けよう。龍は、格上には従わねばならぬからな」
「なかなかに面倒臭い種族体制よのぅ……まあ、その分楽でいいんじゃが……」
「ククク………よく言われるわ」
「あの、もう一ついいですか?」
「なんだ?この際だ。なんでも言え」
「その左手………【魔王紋】を潰してください。後、腹を治してください。さっきからプラプラして正直目障りです」
「なかなかに言うなぁ………ほら。これで良いか?」
グチィッ。右手で、左手を【魔王紋】ごと握りつぶす。血肉が辺りに飛び散り、形のいい骨がグシャと落ちる。一切顔を顰めず、淡々と行った単純な作業。その光景が、いかにこの生物が常識外なのかを如実に表していた。
「いや、腹治せよ」
「流行りのファッションだ」
「ぶ千切るぞ!?」
「………で?【魔王紋】を潰せばどうなるんだ?」
「………次の魔王へと【魔王紋】が転生します」
「【魔王紋】が?」
【魔王紋】は、所詮紋章。幾ら力を与えると言えどもそれが転生するなんて………だが、実際に【魔王紋】が宿っていた水晶龍からすれば、それも納得できる話である。
「初代の見解なのですが、【魔王紋】と【勇者紋】は転生します。そして、転生する兆候があるのです」
「兆候?転生?………いや、確かに我の頭に響いた声は……」
「アルグ……いえ、大勢の民の声ですよね?人類を滅ぼせと、全ての人類を……」
「ああ、いつしかそれに呑まれ……最初の方は自我がハッキリしていたんだがな……それに、我の水晶に変なものがついて、ハッキリ言って邪魔だとも思っていたし」
「それがいけなかったんだと思います。【紋章】は、拒否反応を見せると一気に思考へと侵入してくるらしいので」
「マジか」
プラーン。
「マジです」
プララーン。
「クカカ……それ、燃やしていい?」
プラララーン。
「ほら、早く腹治せって。ここら一帯が火の海と化すぞ」
「………ちっ。人のとれんでぃーを」
「一体何処でそんな言葉を……まあいいや。兎も角、俺のやるべき事はその兆候の芽を潰す事です」
ポワワ〜とかふわ〜んとか、緑色の光と共にそんな音を出してオリオンの腹が治る。
「………ほう。で、次の兆候が表れているのは誰と誰なんだ?」
「俺と、フローラです」
「………………フフフ……フハハハハ!そうか!そうなのか!初代魔王の復活か!これは面白い!!そして………んん!?勇者の血を引くもの………くくく!なんと数奇な……」
いきなりどんな得心を得たのか……腹を抱え笑い出したオリオン。その口は吊り上がっていた。
「よく見ろや。魔王の血も引いてんだろうが」
「うわ、マジか」
「マジだよ」
「【魔王紋】から知識を得た今なら、この数奇な運命も納得できるというもの……面白可笑しく、この少女の隣から見守ってやろう」
「はいはい。ありがとうな。ーーーじゃあ、記憶を閉じるか」
「ん……んぅ?」
「げ、起きた」
乾いた血やら液体やらが身体にべったりとくっついており、かなり寝起きが悪そうだ。だが、シンクを見た途端、顔色を変えて恐る恐る尋ねた。
「こ、これが……お別れなんだよね?」
「ああ、そうだよ」
「や、やだよぅ……もっと色々教えて欲しいよぅ……」
「ダメだよ。ーーーでもね、俺達は数奇な何かで繋がっている。きっとそのうち会えるよ」
「やだ!………いや、じゃあ、最後に一つ………いい?」
「聞き分けのいい子だ」
「手を……握って」
「ああ」
ーーー小さい手だ。改めて、自分は最低だなと思う。こんな、小さい手に凄く重い物を背負わせて……自分だけが背負っていた……そんな軽はずみな思いはすぐに吹き飛んだ。
「お兄ちゃんって呼んでいい?」
「そう言えばそれ、結局一度も呼ばなかったな」
「今呼ぶの!………ええ、と……お兄ちゃん」
「なんだい、シャーロット」
「〜〜〜!」
バフン!と、顔が真紅に染まる。顔から煙が出ていないかスッゴく気になる。なんで、この男は顔を平常なのよ!理不尽な怒りが、心の奥底から湧き上がってくるのを感じる。
「………」
………まあ、でも。それでいいか。どうせまた会えるんだろうし。そう思ったら、涙なんて出てこなかった。
「じゃあな?」
「……うん」
「………っ」
「どうし、たの……」
右頬を伝う暖かいものを感じる。ーーーなんだ。やっぱり出るじゃん。ストンと、何かが落ちて……意識も闇の中にゆっくりと落ちていった。
「じゃあ、頼むわ」
「クカカ……もういいのか?」
「ああ、どうせこの後も直ぐにおば、フローラとの別れも待ってるしな」
「あん?ワシがそう簡単に呑まれると?」
「そこは期待してるよ」
「カカ……一体誰に似たんじゃろうなぁ……大事な所ではぐらかしおってからに……」
「老婆心はどうでもいいから、早くやってくれ」
「ーーーああ」
直後、水晶と化した一帯が光に包まれる。蒼い、何処か冷たい光。天まで届くその光は………数分後に、役目を終えたのだろう。灰の様にサラサラと崩れ去った。




