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勇者な村人D  作者: ネコモドキ
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勇者な村人D 18話


ーーーはい!すっかり1話千文字縛りを忘れちゃってるネコモドキです!

いや?覚えてるんですよ?でもねぇ……書いてたらなんかねぇ?こんな感じになっちゃって……いえ、努力はしてるんですよ?でも、千、二千で区切ったら中途半端に………じゃあ!もう少し!で、3千文字に………よし!!!!眠いから寝る!お休み!←逃げたとも言う。

 

 水晶を通して見る世界。


 正面にいるのはシャル。ドラゴン。水晶。


 まるで、お伽の国に迷い込んだかの如く不思議な世界。


 幻想的で、神秘的で、それがまた、恐ろしくて………


 チカッと、水晶の一部がーーー右眼が光る。その右眼が見据えるはドラゴンの口元。


 色取り取りの発光する水晶。それが、規則的にドラゴンの口元へと収束していく。ぶつかって割れて、融合して、また割れて、段々と大きくなってーーー


 ドラゴンが、がぱあっと開けた大口の前には、大の大人二人分ほどの水晶が浮かんでいた。


 紅、碧、翠ーーーそれらが合わさり、毒々しくも美しい、見る角度によって色の変わる不可思議な水晶。


 キュオオオオォォッ!!


 大気が、空気が、空間が悲鳴を上げる。耳を劈くドラゴンの咆哮。それに当てられ、水晶はやがてゆっくりと自身を押し倒しーーー


 巨大菱形水晶の頂点がシャルへと向けられる。


「くっ!【ブレス】!!」


「『GUA!』」


 短く猛るドラゴン。空気よりも早く押し出された衝撃波が頰を叩く。


 光の螺旋を描きながら、側面の凹凸が辺りの水晶化した地面を削る、削る。その暴力的なまでのフォルムを誇張するかのように錐揉みしながら前方へと飛んでいく巨大水晶。


 それを、間一髪のところで避けたシャル。しかし、右脚の大部分と、右眼が水晶化しているためか、その動きは何処かぎこちないものがある。


「ぐうぅ……」


 転がりながら、なおも地面を蹴って遠くへと避難するシャル。それを見越してか、巨大水晶はある程度進んだところで破裂した(・・・・)


 爆発と共に弾け飛んだ数々の欠片。光の反射を受け、キラキラと煌めきながら飛来するその様は、何処か幻想染みていた。


「あ"あ"あぁ!」


 ブシュ!飛来した欠片が、シャルの脚を貫く。ーーー痛くて、泣きたくて、でも!あの二人の前では泣きたくなくて、そんな情けない姿を見せたくなくてーーー


 気丈にもなお、飛来してくる欠片を払い落とすシャル。その右眼には、もちろん涙など浮かんでいなかった。



 ☆



 ーーーぬちゃ。


「んんっ……」


 なにか、粘着質のあるものの上に転がっている?視界が紅い。思考が熱い。掌がーーー冷たくて紅い。ドス黒い紅。まるで血のようでーーー


「ーーー!?」


 バッ!と、身を起こす。よかった、どうやら気絶していたのは数秒だけのようだ。


「ぐうっ!……ハハッ……これは、マズイ……」


 痛みを感じて見れば、脇腹や脚、腕にも水晶の欠片が刺さっていた。客観的に見ればある意味アート作品とでも言ってもらえるのだろうか?


 そんな、どうでもいい事を考えられるくらい余裕があるのか、ないのかーーー


 茫然自失とした今のシャルでは、起き上がる事だけで精一杯だった。


「『GRUuu……』」


「…………」


 だが、声ーーーもしくは音がすれば其方を見てしまうのが人間の性というもの。ついつい声のした方をーーードラゴンを見た。いや見てしまった。


 一切の感情を宿さない怪しげな瞳。怠惰も嫉妬も強欲も傲慢も色欲も暴食も憤怒も………全てを忘れ、絶対人類コロスマンへと堕ちた堕龍。


 その瞳に、自身の瞳を写してしまった。


「あ……ああ……あああああ」


 今まで気丈に振る舞っていた自分はどこへ行ったのか?まるで泡沫のように消えた数分前の虚像。ただの見栄っ張り。薄皮一枚剥げば、もしくはベニヤ板さえ倒せばーーー後に残るはちっぽけな、まだ一桁の子供。


 そうだ、自分はまだ一桁。いくら王族と言えど、いや……王族だからこそ私は何をしているのだ?ただ、上から踏ん反り返って勇者に命令をして、帰ってきたら軍資金を与えるなり自身の身体を与えるならすればいい。


 そう、だからーーー私はーーー諦めてーーー


「シャルーー!諦めるのか!?」


「うん、もう、いいかなっ、て……」


 唐突に後方から聞こえたとある男の子の声。頼もしいと思っていた声も、今はただ目障りだった。


「本当にか!?諦めたらそこで試合終了だぞ!?」


「しあ、い……なんて……どうでもいい、よ……今は」


「お前は!僕と………俺と共に冒険の旅に出るんだ!だから!諦めるな!」


 ーーームカつく。そんなドス黒い感情が胸中を占めた。耳障りで、目障りで、よく分からない【スキル】でなんでも出来る、歳の近い、村人の男の子。そんな下々の身分の人間が、王族であるーーーやんごとなき身分である自分よりどうして強く、どうして誇り高く、どうして………どうしてそんなにも格好良いのか……


 思えば、短い付き合いでこれほど打ち解けたのは身内を入れても彼と彼女だけだろう。キラキラと子供の目から見て煌めいていて、それが辺りにも伝染して……自分も強くなった気でいてた。


 翡翠のオーラは私に癒しを与えてくれた。


 真紅のオーラは私に勇気を与えてくれた。


 それは、勇ましくて、勇敢で、勇猛な、勇者。


 そうだ。自分は子供心ながらに勇者に憧れたんだ。うら若きピンク色の少女おとめが白馬の王子を偶像化するように、私も……ただの【ちょっと特別な男の子】を勇者化して、見えないようにした。太陽の如く光る……なんて言い訳をして。見えないんじゃなくて、見る努力をしなかった。


 ーーーだからーーー


「だから、私は諦めるよ。一人の王族として、勇者に上から踏ん反り返って命令を下し、いざ帰還すれば金なら女なり名誉なり土地なり与えるーーーそんな、当たり前な王になる」


「ーーーだから、あいつを、【魔王】を倒して?勇者シンク。私には……資格がなかったって事で……エヘヘ……」


 しまった。と、一人頭の中で後悔した。別に魔王との戦闘を他人に譲った事ではない。王様権限で命令すれば、きっと彼ならば聴いてくれるだろうという確証があったからだ。


 もう一度口を開く。今度こそは、と。震える身体を、心を叱咤して。自分にとっても、シンクにとっても残酷な命令を下すために。


「ーーー断る」


 だが、それよりも早くシンクが口にしたのは意外な言葉。決して、振り解こうとはしないと、甘い考えを打ち砕かれたような絶望感が心を襲う。


「ど、うして……?」


 左目尻にキラリと光るものが溜まる。右目はあいも変わらず不可思議な世界を写していた。


「いやぁ……使うのを忘れてたんだがな?俺の【勇者の独壇場ブレイヴ・ターン】は、支援系に限り他人に使えるんだ」


 ニヤリと口端を吊り上げ、挑発的な目線で語るシンク。で、それが意味する事は……つまり……


「……ハハッ……鬼畜だね」


「さあ!三回戦の始まりだ!」


 ………何故だろう。会話は噛み合ってないし、こっちは満身創痍で顔は鼻水やら涎やら涙やらでグチャグチャになっている。乙女としてはあるまじき姿。服も見る余裕はなかったが、肌寒いと感じる辺り、体温的にも体力的にも服的にも限界が近いのだろう。


 でも、不思議とポカポカしてくる。身体がじゃないーーー心がだ。


「ーーーーーさぁ!共に叫べ!不安な時も!寂しい時も!苦しい時も!ヒーローは必ず!勇者はきっと現れる!腹の底から!心の底からあああぁぁ………哮ろ!穿て!【ブレイヴ・ターン】………」


「「超動っっ!!」」


 地面から伸びた真紅と翡翠色のオーラがシャルを包み、再生していく。


 腰まであるプラチナブロンドのポニーテールを凛と靡かせ、勝気なガーネットの瞳が眼前の水晶龍を捉える。水晶化した右目は翡翠色の輝きが灯り、その機能を回復する。


 パキン!パリン!と、硝子の割れる音。右脚をグッと引き締め、掌を握る。ーーー治った!


 異常状態は取り敢えず治った!後はーーー倒すだけ。


 シャランーーー。神秘的で、何者も寄せ付けない、不思議な抜刀。轟と、鞘からは許容しきれなくなった焔が溢れ出す。


「今なら……魔王どころか、勇者さえ倒せそう……」


 不吉な事を小さく呟き、先程の構え。


 剣を後ろ手に引き、腰を落とす。


 上半を前屈みにし、今度は左脚を前に出す。


「ーーー疾ッ!!」


 その言葉と共にシャルは消えーーー地鳴りを思わせる音が響いて、ドラゴンは仰け反っていた。


 胸元に、焔を生やして。


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