勇者な村人D 17話
おそようございます、ネコモドキです。アニメも変わり、いよいよ春が来たと私に知らせてくれるこの、なんとも言えない時期。好きか嫌いかと言えば大好きです。
なんかねぇ、中途半端な季節や天気が好きなんですよね。曇り空の梅雨とか。
さて!いよいよ過去編も次かその次で終わりとなります。私の稚拙な文章をお読み頂きありがとうございました。これからも【勇者な村人D】をよろしくお願い致します!
ーーーここは、とある山頂。剥き出しの岩や地面が、辺りの生命力の無さを顕著に表す。
「ねぇ、シンク。これと戦うのが修行なの?」
「いぁー!いえす!」
「ねぇ、フローラ。これと戦うのが修行なの?」
「いえす!あいえあ!」
「……………帰っていい?」
「ちょっと待って!」
「クカカ……どうした、シャル?これが反抗期というやつかえ?」
「違うよ!?二人のテンションとの格差に嫌気が刺しただけだよ!」
「なんだよ〜こんな相手、楽勝だろう?」
「それ、全世界の冒険者から津波を思わせる怒涛の反感がくるよ……」
「ーーーそうか?シャルならもう倒せるぞ?」
「えぇー………だって、魔王だよ?」
そう、魔王。魔の王。魔族、魔物の王者にして、統べるモノ。
その、圧倒的な魔力は世界を三つ破壊し尽くせる言われている。
ーーーで、話題に上がった魔王様が、三人の目の前に佇んでいる。
「『グルル……』」
一見すると、ただのドラゴン。されどドラゴン。負の象徴にして、罪を司るもの。
憤怒の感情を瞳に灯し、汚い歯茎を涎と供にチラリと見せる。
色は、水晶。と、言うよりも水晶が鱗のようにビッシリと生えているのだ。牙も爪も手も足も身体も下手すれば目も、全て水晶。
だけど、歯茎は汚いし涎も垂らすと言うちょっと残念なドラゴン。
個体名を、【ダイヤモンドラゴン】と言う。多分、考えた人が深夜テンションだったのだろう。
左前脚には、水晶の中に禍々しく光る紋章。煌々と光るそれは、よく見れば手を模していた。
ーーーそもそも、魔王というのは称号であり、職業ではない。【魔王紋】という、左手の甲に記される紋章が魔王を魔王足らしめるのだ。
魔王になる資格はたった一つ。魔物か、魔族である事。ただ、それだけ。例え魔力がカス程度も無くとも、世界最強の魔力保持者になり、例え病弱で床の間に伏せて居ても、世界を丸々二周しても有り余る体力が手に入る。
ーーーそんな、絶望的な存在。
勇者と相対する……いや、すべき相手。
しかし、今代の勇者はまだ現れて居ない。ともすれば誰が?ーーーえ?私?無理無理。絶対!無理!死ぬ!
「と、言うわけで頑張ろうか!」
「いや、無理だから!」
「大丈夫!水晶ってガラスと大体性質同じだから!」
「だから!?」
「燃やすとヒビは入るけど、多分割れたりはしないと思う!」
「なんで挫折させるような事言ったし!?」
「勇者って………逆境に打ち勝つものだから、ね?」
「やだよ!絶対にやだよ!」
「こら!幼児退行しないの!」
「マジで燃やすぞ!?」
「こら!反抗期に入らないの!」
「どうすればいいの!?」
☆
そんなこんなで始まった【ダイヤモンドラゴン(魔王)】対【炎の聖剣(笑)】
ショートソードを正面に構え、ドラゴンと対峙する。自身より何倍もの体躯を持つドラゴンに、一歩も引いていない。
「『GUUOOOOOOOO!!!』」
ーーー咆哮。
ピリピリと肌を震わせるプレッシャー。辺りの岩が共鳴し、ギャリィ!と、空気を引き裂いたような音が辺りに響き、水晶化する。
それに連鎖してか、パリン。精巧な硝子細工が割れる音。ーーーパアアアアァァァン!!まるで侵食されるように、勢いのある津波のように、地面さえもが水晶化する。
「なぁ!?」
ふと右手に、違和感を感じる。見れば、指先が水晶化していた。足指にグッと力を入れる。右小指が動かない。恐らく、こちらも水晶化しているのだろう。
「ーーーふっ!」
腰を落とし、剣を後ろ手に。左脚を引き、前に出る。
弓から放たれた矢の如く、真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに突き進む炎の刃。
恐らく、バジリスクやコカトリスやらの石化の呪いと同等のもの。しかし、その威力と範囲は段違いだと考え、短期決戦へと頭を切り替える。
手元には轟々と燃え盛る炎剣。しかし、頭はこれまでにないくらい澄み切っていた。
「ゼアァッ!」
ガギィン!甲高い金属音。青と赤の火花が散り、水晶化した地面を茶色く焦がす。
「ふっ!はっ!るぅっ!」
一閃、二閃、三閃ーーー。
目にも留まらぬ紅い剣戟が、真紅の閃光となり宙に後を残す。バチバチと空間が弾け、大気が歪み、水晶の体躯に傷が入る。台風を思わせる怒涛の攻めにしかしーーードラゴンには未だ、致命傷と呼べるものは入っていない。
短期決戦。それを可能足らしめるのは未だ、兆候さえも見えない。
「さ、流石にここまで効いてないと………心が、折れそう……ハハッ」
ゼェハァと、肩で息をするシャル。言葉に反して、瞳に宿る炎は爛々と燃えていた。
「『RUUAAAAAAA!!』」
パキキキーー………
耳を劈く不可解な音。まるで脚元から虫がゾゾゾと這い上がってくるような、そんな音。
知らず知らずのうちに鳥肌が立ち、冷や汗が背中を伝い、水晶化された地面に水溜りを作る。
「……!?」
ーーー水溜り?下を向いていた?勝負事において、油断や余所見は死に直結する。ーーーなのに、下を……向いていた、の?
正面をーーードラゴンを見据える。
「………っ!!」
そこに居たのは、一回りも二回りも巨大な体躯を持つダイヤモンドラゴン。尾の方から、水晶が水晶を食い破り、より強固な鎧が身体に纏わりつく。
雄々しく、猛々しく、神秘的なーーー
しかし、左手の甲の【魔王紋】が、不純物を含まない水晶を毒々しぃ色に染める。
「『GAAAAAAAAAA!!!』」
瘴気を辺りに撒き散らし、唸る罪の化身。ドラゴンの瞳からは利己的な光が消え、赧く、光る。
「ハハッ………二回戦の始まりって?」
冷や汗を拭い、前を見据える。ーーー右側が、まるで硝子を通して見たように世界が一変する。
「………え?」
水晶化された地面に顔を写す。
「マジ?」
ーーー右目が、水晶化されていた。




