勇者な村人D 16話
はい、予告通りの二話投稿。二話って書いたら庭ってなっちゃう。最近の悩みだす。です。
今回一人称ではなく、三人称となっております。分かりにくいかな?………うん、分かりにくいな。
まあ!頑張りますけどね!文才とか語彙力とか語学力とか!
と、言うわけで16話です!もうすぐ過去編?は終わります!
シャリー・ベーカリーを名乗る少女が苦しそうに、辛そうに、胸を押さえながら言葉を絞り出す。
それはまるでなにかを渇望するようで、なにかに助けを求めるようで………
きっと、これは誤魔化してはいけない。
ただ、それだけは理解できた。
パン屋かよwwとか言ってはいけないのだ。
「僕の力………そう、だね……」
「うん」
「ーーーまぁ、言ってしまえば僕のこの力はなんでもありだよ」
「なんでも……あり?」
「そう、なんでも。空を飛ぶのも、火を噴くのも、ましてや世界さえも滅ぼせるーーー」
空恐ろしい事を、笑いながら平然と話す。あたかもそれが、日常のように。
「ーーーそんな、馬鹿げた力だよ」
「一体、どうしてそんな力を……」
手に入れたの?と、聞こうとして辞める。手で制止されたからだ。
「僕はーーー俺は、この“力”を使ってしなければいけない事がある。だから、この力を継いだ」
「………継いだ?継承……?」
「そう。とある伝説の人物が操りし【英雄の時間】から受け継いだこの力」
「ヒーロー……タイム」
コクリ、と頷きその“力”の名前を呟く。
「【勇者の出番】」
「ブレイヴ………勇者?」
「そう、勇者。馬鹿げた妄想と捉えられても可笑しくはないと思う。でも、やらなくちゃいけない。他の誰でもない。俺、自身が」
威風堂々としてその態度に、シャルは心惹かれる。今まで、一度として自分の周りに居なかったタイプ。不可能さえも可能にしていく………そんな力強ささえも持った歳の変わらない男の子。
「……んんっ!あ、あの!話は変わるのだけど……」
「ん、なにかな?」
これ以上話しているときっとボロが出る……そう、判断して話題を転換する事にする。
「さっき、なんでもって言ってたけど……死者蘇生も………死んだ人も蘇らせることは……」
「………」
「あ、ごめ!ごめんなさい………」
「いや、こちらこそ、だ。力になれず申し訳ない……」
「ううん!もう、私の中で諦めはついているから!」
自分でも、見ていて痛々しい演技だとは思う。だけど、この人達ならこの演技さえも笑って誤魔化してくれるだろう……短い付き合いながら、その程度の事は理解できた。
「………クカカ……さて、湿ったい話は終わりか?なら、続きをするとしよう。シャル、お前の得意な属性は……【炎】だよな?」
「え、ええ……炎。母様から教えて貰った二つだけある私の特技……」
「もう一つは?」
「もう一つは……あるお方から教えて頂いた剣技よ。豪快ながらもその中に繊細さが見え隠れする矛盾した剣……それが、そのお方に教えて頂いた剣技なの」
「ふぅん……随分と慕ってるね?」
「あら、嫉妬?まぁ、あのお方は不可能さえも可能に……と言うより不可能なんて俺にはないって言いそうね……傲岸不遜と言うか……」
「そりゃ、随分と頼もしい……あぁ、俺の知ってる人も大体そんな感じだわ」
「へぇ……世界には頼りになるお方が多いのね……」
「ふふっ……確かに」
「…………ねぇ、聞いてくれる」
「ああ……」
意を決したかのような、キリッとした顔をするシャル。
しかし、唇はみるみる青くなり、手足は震えている。
「私の………」
だがーーーーそれを止めるものは今、この場にはいなかった。
「私の本当の名前はシャーロット・S・ガーネット!この国の次期王女にして、現プリンセス!」
「………」
「炎の剣聖とは私の事よっ!!」
「………炎の剣聖て(笑)」
「言ってやらぬのが優しさじゃぞ?(笑)」
「〜〜〜〜!ふ、普通『えぇ!お姫様!?ハハ〜〜〜!』ってならない!?」
「ハハ〜〜〜!て(馬)」
「お姫様て(鹿)」
「ぶち殺す!!」
プチン。或いはカチン。
その音がスイッチとなったのか、轟々とした炎がシャルの掌から、身体から溢れ出る。
龍を象ったそれは、生き物のように、意思持つなにかとなり二人に襲いかかる。
ジュウジュウと地面を、空気を焦がしながら、蛇のように迫るりくる炎龍。
「【土壁】」
複雑な詠唱を早口で唱え、炎龍の目の前に土壁が立ちはだかる。
ーーーだが、ドゴン!と、
あっさりと撃ち抜かれる土壁。いや、土塊。『グオオ!』と唸りを上げ、再度二人に迫り狂う。
受ければ軽く死ねる温度。どころか、蒸発さえするだろう。
にしては、三人の顔に笑顔が浮かんでいる。まるで、子供のじゃれ合いのように、いや子供なのだが……見るからに楽しんでいる。
シャルは憑き物が落ちたかのように、
シンクは年相応の、
フローラだけは外的年齢にそぐわないほどの慈愛の瞳で二人を眺めている。
燃え盛る炎龍。飛び交う土塊。土地は蒸発し、空気が乾燥する。風と水とが、必要以上の乾燥を堰き止め、辺りの自然破壊をなんとか食い止める。
しかし、それも時間の問題。魔物や低級の魔族はもう、数日前から近寄って来ようともしないし、精霊とか妖精とかそんな存在は一目散に逃げ出した。
一方でシャルの底力はこれでもかと言うほど上がり、最早王都で彼女に勝てるものは二人を除き、いないだろう。
それは確かに、後に【女傑】と呼ばれる者の、誕生だった。
「ーーーねえ、シンク!」
「ーーーなんだ、シャル!」
「楽しい!私、楽しいんだ!」
「そうか、良かった!」
「……お兄ちゃんって呼んでもいい!?」
「なんで!?」
「い、今までそんな……頼りになる男の子って居なかったから……」
「……いいよ」
「ふふっ……ありがとう!」
それは、まるで砂漠に咲く一輪の花。
金色の太陽を、めいいっぱいに吸収した満点の笑顔。
ーーーーこの日、この時、この瞬間、三人の距離は確かに縮まった。




