勇者な村人D 13話
〜年齢表〜
これは、今やってる過去編?での年齢表記です。現代版はまた今度。
ヒスイ・シンク(一二歳)
フローラ・シルバイト(???歳)
シャリー・ベーカリー?(九歳)
ヒスイ・ロゥ(八歳)
大体こんな感じかなぁ……後、村人達も特徴と名前だけですが、どんどん登場してきます。
ーーーまあ!元々の数が少ないのですがね!
「ん、……んぅ……」
ーーー朝。いつも6時に侍女が起こしにくるものだから自然と、大体その時間に起きるようになっていた。
今は季節的に春と夏の間くらい……やはり、毛布一枚で野宿は肌寒い………野宿?
ーーーそうだ、私は……家出して……魔族と、魔族に親しい少年と会って……で、そのまま寝ちゃったんだ!
「なんて迂闊な……」
自分の危機管理能力を呪う。よりにもよって魔族なんかに就寝時の私を曝け出すなんて……これじゃあ、襲ってくれと言っているのと同じだ。
それに、少年とは言え、男も近くにいる。それも魔族と親しい少年だ。侍女達に男はオオカミになるとかなんとか聞いてたけど……衣服の乱れない。よし!大丈夫だ!
「ーーーケホッ……ケホッ……」
ーーーな、なに?……煙?
大丈夫かと思ったら実は横で火事でしたーなんて事はないわよねぇ………
「おぅ、起きたか」
横を見ると、魔族の少女………フローラが紫煙を燻らせていた。
カプカプと、あまり見かけない型の煙草の煙を自在に操る……
「て、ダメじゃない!煙草やお酒は16歳からよ!」
「む、むぅ!?……返し……いや、我はとうに過ぎとるし……それにそれは煙管じゃ」
「どう見たってシンクと同じか下じゃない!大体10歳くらいなんでしょぅ!?キセル?とかもよく分からないけど嘘はダメよ!」
「わ、わかった……お主の肺を気にせずに吸った我が悪いという事にしてここは引こう……ところで、熱くはないのかい?」
「ふぇ?……きゃっ!」
「はぁ………言わんこっちゃない。どれ、見せてみろ」
「い、いやよ!魔族なんかに火傷を見せるなんて!」
煙管の先端……ぐにぃと曲がった金属部分を触って火傷を負ってしまった。ああ、そう言えば父様が触ったら火傷するよとか言っていたような……
でも、だからと言って魔族に怪我を見せられるわけがない。城の人が言ってたもの。魔族は怪我をした所を舐め、酷く悪化させるって……
「んじゃあ、無理矢理かのぅ?《エリア・ヒール》」
パアァッ!と、フローラの足元から凄い勢いで幾何学模様が広がる。
エメラルドを薄くしたようなその幾何学模様……魔法陣は、私や大地を優しく包み込み、やがて煌めく。
数十秒……或いは数分。役目を終えたかのように粒子となって散る魔法陣。
ーーー何なのこれ……凄く気持ちいい……ふと、右手に視線を落とす。
ーーー火傷など元々なかったかのように、綺麗な私の手があった。
「これ……」
「ククク……お主は気付いとらんようじゃが……煙草を止めろと言ったのは我の身を案じてじゃろ?勝手にくたばればいい……と思っとるんじゃったら、寧ろ煙草を推奨するじゃろうに……」
「え!?あー………んん!………ありがとう……」
「クカカ……どういたしましてじゃ」
ニカリと八重歯を見せ、笑うフローラ。何処までも清々しい笑み。
きっと、城から逃げ出した私の悩みなんかも笑い飛ばしてくれるだろう……そんな安心感さえもあった。
「おい!どうした!」
突然、シンクが青い顔をして降ってきた。
本当に、上から。降り立つまで気付かなかった。
「な、なに……どうしたのよ……」
「いや、大きな魔力を感じて………ば、フローラァ?」
「いや、ちょっと力加減が難しくて、な?」
フローラは(´>ω∂`)な、顔をして必死に謝っていた。
傲岸不遜な態度が崩れ、取り敢えず上下関係は何方が上かは分かった瞬間だった。
「ふふ……」
「むぅ?ようやく笑ったのぉ……(ニヤニヤ)」
「あぁ、そうだなぁ……後で覚えとけよ(ボソッ)」
「だって……魔族って……人から聞いてた話とは違うもの……」
「はん。人伝に聞いた話を鵜呑みにするとは愚の骨頂よ。自身の目で見て、自身で感じて初めて、それを事実と呼べるのだ」
「………なんかフローラってコロコロキャラ変わるよね……」
「魔族ってそんなもんらしいぞ?急に奇声を発したり、情緒不安定にもなるそうだ。あまり殺り合った事はないから詳しくは知らないけど」
「魔族も魔族だけど貴方の事を詳しく知りたくなったわ……」
「…………告白?」
「違うわよ!?大体私はーー……」
「私は?」
ーーー言いかけて、止まる。
果たしてーーーこの者たちに自分の事を話していいのか?と、
今、胸中を占める思いはこの一点だった。
「ああ、そう言えば自己紹介がまだだったね。はい、小さなお姫様。どうぞ!」
ーーーわざとか?わざと言ってるのか?
確かに自分はマジもんのプリンセスだ。だからと言って、本物をプリンセス呼びって……良くて不敬罪で財産の没収、悪ければ死刑だ。
出会って一日も経っていないが、この者達は年齢に反してかなりキレる。所謂聡明な子供達だという事は分かる。
自分の事を棚に上げた発言だが、そこには目を瞑ってほしい。
ーーーさて、話すべきか、嘘をつくかーーー
流石に、わざわざ選んでプリンセス呼びをしたりはしないだろう。この者達は賢いからな。もしかすると、催促かもしれない。
だが、もし盗賊やテロリストだった場合はどうなる?
若くして様々な、覚えたくもないような事を頭に詰め込められば、嫌でも賢くなるというものだ。
きっと、私を信頼させる為にわざわざこんな事をーー………
ーーーいや、違う。
そう……本当は、自分でも気付いている。
この者達は、決して信頼を勝ち取る為にわざわざこんな事をしているのではないと。
私が帰る。と、言えばきっと手厚く城まで送ってくれるだろう。身代金も、謝礼金も要求せずに。
魔族?それと親しい人間?
ーーー城の中で、もっと卑しく、汚く、浅はかな“ヒト達”を見てきたから分かる。
この者達は、聡明で、透明で、鮮明で、綺麗で、泪が出るくらい優しいのだと。
今まで出会ったどの人間よりも魔族の方が優しいなんてーーー………なんて、なんて皮肉なんだろうか。
だが、だとすれば何故、私はこの者達に言いたくない?
一言言えばいいじゃないか。「私は嫌になったから家出してきたこの国のお姫様です」と、
そしたらきっと、それを笑いに変えてくれる。この少年はそんなユーモアを持っているし、この少女はそれを受け止めて優しく包み込んでくれるだろう。ーーーお婆ちゃんか、
「はぁ……理由は分かってるんだけどな……」
ああ、そうだ。分かっている。
私は、万が一シンクとフローラに拒まれるのを怖れているのだ。恐いのだ。恐怖している、と言ってもいい。
王族だから?身分の差?
ーーー違う。何より、二人は種族の壁さえ越えている。
私の性格が露見するのを怖れて?
ーーー違う。と言うか、もっと酷い人をこの少年と少女は見てきている。そんな確信さえある。
じゃあ、一体ーーーー
「誰だって、自分の醜い部分は否定したいし、それを他人に見られるなんて以ての外だ。羞恥で顔は紅く染まり、心中にはドロドロとしたヘドロのような嫌悪感さえ漂うだろう。だか、しかし。それを乗り越えれば後は楽じゃん?青空は澄み渡り、華麗な花園がお前を待ってるぜ!」
若干惚けた口調で、明後日の方向へと大声で独り言を発するシンク。
全部言い切ってスッキリしたのだろう。此方を見てニカリ、と笑ったその表情は、何処と無くフローラに似ているものがあった。
「はぁ…………」
そうだ。何を怖がっているのだ。何を恐れているのだ。
自分の醜い部分を曝け出すことに、今更なんの躊躇いがある?今、ここには私を知っているものはいない。
ならばーーー………!
「私の名前は、シャリー・ベーカリー。貴族の娘よ。堅苦しい生活が苦になって家出してきたの。年齢は多分、貴方達より三歳程下だと思うわ」
一瞬。刹那。ほんの、瞬きの刻。
シンクとフローラの悲しげな顔を、見逃せなかった。見てしまった。それを、見ないフリなんて………出来なかった。




