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勇者な村人D  作者: ネコモドキ
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勇者な村人D 12話


うぅ……かなり不定期な更新になって申し訳ありません……。

今後は、最低でも一日一回投稿を目処に頑張ります。

 

「君たちにとっては……魔族。の方が親しみ深いかもしれないが」


 そう言って、まるで悪戯が成功した子供みたいな顔をしながらクカカッ……と、喉を鳴らす少女。


 魔族と知った今でも、魅力的に見えて、蠱惑的に見えて、私が、街頭に誘われるちっぽけな存在に思えて来てーー………


「て、これ【魅了チャーム】じゃない!」


 バチン!目の前にラグが走る。これは、状態異常系の魔法やスキルを弾いた際に起きる現象だ。


「クククッ……第一とは言え、看過するとは……娘、お前……化けるな?」


「へぇ?化け……え、しかも……魔族が……私を」


 咄嗟の【魅了(チャーム)】には抵抗できたものの、未だ脳内では事態の収拾には至っていない。


 嫌になって城を抜け出して、走って、歩いて、疲れて……“声”に導かれるままにやって来た泉のほとりで大型モンスターが倒れていて、見知らぬ誰かに思いをぶちまけて……今は、魔族の少女が目の前にいる。


 頭の中が混乱したままだが、本能というべきか、勘が働いたというべきか……


 ただ、一つの思いに従うと決めた。


 ーーー魔族は悪しき存在。


 ーーーだから、清き粛清ーー


「…………っれ?」


 ーーーを!として、腰の辺りに違和感を感じる。無い。腰のショートソードが、無い!


 焔の加護が付与(エンチャント)されたそれなりに値を張る一点もの。最初、宝剣の如く煌びやかな装飾がされていたのを全部剥がして、何処にでも売ってそうな無骨なものに変えてしまったという思い出のある愛剣だ。


「おい、剣は抜くなよ?……や、……後ろのあんただよ(・・・・・・・・)


 鋭い殺気。


 まるでカエルが、蛇に睨みつけられたかのように動けなくなる。


「え、……後ろ、って?」


「いや、何でもない。こちらの話だ。で、唐突にだし、そこの銀髪が全て悪いと言えば悪いのだが……お前に敵意はあるのかないのか……それを聞きたい」


「………」


 ーーー敵意はあるのかないのか……?


 それはもちろん……ある。


 何と言っても魔族だ。人類の敵。それに、敵意を向けるな。なんて……無理に決まって……


「一応言っておくが………俺は、お前が瞬きする間に三回は殺せるぞ」


「そんなの……!」


 脅迫じゃない!………言いかけて、気付く。ギガントの上のシルエットが消えている!?



 ーーー一体どこへ……?


「後ろ!」


「いい勘だ……だが、惜しい」


「ぎゅむ?」


「右だよ」


 目と鼻の先に少年の顔。


 この辺りでは珍しい黒髪と、真紅と翡翠色のオッドアイ。


 あどけなさの残る優しげな顔。


 しかし、その中に何か……得体の知れない……そう、ナニカを感じる。


 まるで、翡翠を覗き込んだ時、映る自分をずっと眺めているような………そんな、不思議な感覚。


「これは返すよ」


 シャラン、とそこには見慣れたショートソードが。


 いつの間に…………というか、


「き、きゃあぁっ!近っ!」


「あ、………ごめ」


 ゴチン!言いかけた少年と頭をぶつける。


「きゅう………」


 少年の頭が思いの外硬く……今はそれを恨みながら意識を手放した。



 ☆



「いや、もういいから帰れって。ああ、タナム・オルタナとヒスイの名を出せば絶対に黙るから。……それとも、いまこの場で首を掻っ切ってもいいんだが?」


「カカッ……此奴……というより此奴の血筋な者はひとの話を聞かん。それも病的にな。それよりも……早く報告に行った方がいいぞ?定時の時は過ぎておる」


「んあ?何故それを……だと?目と耳だけを転移させる事のできるやつなんて捨てる程にいるだろう?」


「「ーーーいいから早く行け」」


 ………なんだろう……寒い?今は時期的にそんな寒くない筈……いや、直接冷気を当てられるような……?


「ーーーそうだ、魔族!」


 ガバッ!と毛布を跳ね除け身体を起こす。外傷は………ない。頭も……うん、痛くない。毛布は………毛布?


「お、気が付いたか?」


「………今、誰かと話してなかった?」


 ブスゥ……もしくはジトーとした表情で少年を睨む。魔族一人に圧倒的な力を持った少年……どうせここで殺されるのなら……最後まで反抗してやろうじゃない。


 ーーーそう思っての行動だった。


「いんや、別に?ああ……自己紹介がまだだったな。それと……後回しにしてしまったが、其方のプライドを傷付けるような真似をしてしまってすまない。少し、宥めるのに苦労しそうな人がいたもんでつい……」


 ああいう、人質をとった上での交渉が一番やりやすかったんだ……と、あっけらかんとした表情で言う少年。


 ーーーテロリストや盗賊の類かな?と、疑ってしまっても非は向こうにあると思う。


「なによ、その宥めるのに苦労しそうな人って……どうせ私の事でしょ。いいもん、城中ではなんて呼ばれてるか知ってるもん!どうせ、あんた達だって身代金を要求するテロリズム思想を持った危険物質なんでしょう!」


「これ、俺の行いが悪かったのか、お前(魔族)がいるのが悪いのか……」


「どちらもじゃろ」


「はぁ………ロゥも最近こんな感じなんだよなぁ……反抗期?」


「ああ、あの白狼の娘か。クカカ……それはそうとしてここにいる事は言っておるのか?」


「いや、四回前くらいから言ってないよ?」


「…………原因が判明したぞ」


「マジで!?教えて、教えて」


「自分で考えい……ハァ……苦労しとるなぁ……」


 魔族の少女と人類の少年との楽しげな会話。


 異種間でのコミュニケーションなのに、こんなにも自然だなんて………


 ーーーいや、ダメ!魔族は信じてはダメ!それに………魔族と仲良しな人間も………


「あ、やべ……忘れっ……放置してた。んんっ!改めて!俺の名前はヒスイ・シンク。性はヒスイで、名はシンク。ここら辺じゃ珍しいかと思うけど、そう言うものだとうまく飲み込んでくれ。そうだなぁ……職業は『画面に映り込んだ際に見切れるか見切れないかの位置にいる村人D』……辺りをやっている」


「なにその、『画面に映り込んだ……なんちゃら村人D』って」


「祖父ちゃんに、お前の必要性はその程度だって言われてからはそう名乗っているが?」


「あんた、本当にどんな卑屈な人生を送ってきたのよ……」


「いや、たかだか2桁しか生きてない俺の人生なんざまだまだ……知り合いに4桁生きた人がいるけど、まだまだ現役って言ってた」


「なにそのエルダーエルフ!?」


「エルダーエルフを知ってるのか?」


「例えで行ったのにまさかのドンピシャ!?」


「最近は料理に嵌ったらしくてな……フライパンで無双する姿はまさに鬼神の如し」


「えぇ……4桁生きていて今、嵌っているのが料理なの……?しかも、フライパンって……」

 

「赤龍程度ならフライパンでワンパンできるかな?」


「なにそのこだわり!?もう、そこはエルフらしく魔法でいいじゃない!なんで頑なに物理で戦おうとするの!?」


「分からん……が、『主婦たるもの、調理場が戦場だ』って………」


「しかも女性だった!」


 どうして、エルダーエルフの……それも筋力が遥かに少ない女性が騎士団一個団体分の戦力を誇る赤龍をフライパンでワンパン出来るのだろうか……?


 と、いうかフライパンにこだわる意味はあるのだろうか……。


「すまん……そろそろ自己紹介に戻ろうかの?」


「あ!ごめんなさい……」


「ほら〜ダメじゃないかぁ〜」


「ぶっ飛ばすぞ!?」


「ゴホン!」


「ご、ごめんなさい!」


「………な、魔族だって人間と同じだろ?それに、毛布を掛けたのだってフローラだぞ?」


「……あっ!〜〜〜っ!」


 フンッ!と、二人から背を向けた。パチパチと、静かに、されど力強くもえる焚き火が背中越しに伝わってくる。


 ーーーずっと、無意識の内に掴んでいた毛布に目を落とす。


 これを、彼女が………


 ふと、視線を横にずらすと目があった。


 蠱惑的な瞳。吸い込まれそうなほどに綺麗。


「…………ぁ……ぅ」


「え?」


「あ、ありがとう!って言ったの!疲れたし、もう寝る!おやすみ!」


 言うや否や毛布を勢いよく被る。


 見た所私より4つか5つほど年上の彼ら彼女らはまだ寝ないのだろうか……?


 そんな事を考えながらやがて、トロン……と、意識がゆっくりと微睡みの中に落ちていく。


 ………不用心だな、私。何も知らない……それも、魔族なんかの……隣で寝て、る。それ、に……ま、く……ら…い……ねん…も……


「すぅ……」


 知らず知らずのうちに、口元は弧を描いていた。


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