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悪竜の騎士とゴーレム姫【第16部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第16部

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第七章 獅子と悪竜の対峙③

 そうして約束の夜が訪れる。

 森の奥。一人の騎士が闇夜に潜んでいた。

 全身に白き鎧を纏う騎士。そう、白金仮面(マスク・ド・プラチナ)だ。


(ふむ)


 木々に身を隠しつつ、レイハート家の別荘を視界に捉える。

 仮面の下でハワードは双眸を細めた。


(よもや、あの場所を決戦の地に選ぶとな)


 ハワードにとって因縁深い場所だった。

 そもそもこの森自体が、ハワードが生まれ変わった場所とも言える。

 この森で初めてハワードは宿敵である少年と対峙したのだ。

 すべては一人の男のおかげだった。

 あの男の名は忘れもしない。グリッド=ワイズだ。

 ハワードがこの手で殺した男である。そしてあの男のおかげで、ずっと生き飽きていたハワードの灰色の世界は、ここまで鮮やかなる色を得ることが出来たのだ。

 宿敵を得て、新たな愛機を得て、そうして愛する妻も得た。

 あの男には感謝しかなかった。


(せめて墓ぐらいは建ててやるべきかもな)


 ふと、そんなことも考えるが、


 ――はン。いらねえよ。糞伯爵が。


 あの男なら、きっとそんな悪態をついてくることだろう。


(思えば惜しい男を亡くしたかもな……む)


 そこでハワードは面持ちを鋭くした。別荘の前に一台の馬車が到着したのだ。そこから見覚えのある黒衣の男と、数人の女たちが降りてくる。


(……ほう。堂々と来るか)


 だが、情報にある人数には足りていない。

 現れたのは全員で五人だ。

 残りはハワードと同じく周辺に潜んでいると考えられる。


(興味深いな。しかし)


 伏兵の方も気になるところだ。

 はてさて、どちらから探りを入れるべきか。

 ハワードは数秒ほど考えて、


(そちらから行ってみるか)


 行動の方針を決めるのであった。



       ◆



「さて。ウチらは控え組っすけど」


 同時刻。同じ森の中でラックが仲間たちに声を掛ける。

 そこは会談場として指定された館が視認できる場所である。

 木々に覆われたその場所にいるのはパメラ、レミとラミの双子姉妹、そしてルシアだ。ラックを含めると獅子兵団の内の五人がその場にいた。

 一方、会談側のメンバーは、ザーラにフェイ。エリスとマイア。相手側と因縁深いメンバーになっている。そこに対人戦の護衛としてツルギがついていた。

 ザーラたちは馬車で会談の館に向かい、ラックたちは待機している状況だ。


「どうなるっすかね。この会談」


「恐らく戦闘にはなるでしょう」


 と、パメラが淡々とした声で答える。


「互いの立場を鑑みれば、平穏に終わるはずがありません」


「やっぱりそうなるかな?」「やっぱりそうなるよね」


 レミとラミの双子が不安そうに呟く。


「相手は恐ろしく強いというお話でしたわね……」


 ルシアが瞳を細めて言う。


「対人戦でマイアさんを圧倒した殿方。ツルギさんは、対人戦では私たちの中で最強ですが、彼女でも厳しいのでしょうか……?」


 その問いかけにラックが腕を組んで「う~ん」と呻いた。


「確かにツルギさんは強いっすけど、ザーラさんの話だと、その男の子って魔獣にさえ生身で勝ったって話っすよね? 流石にそれは無茶苦茶っすよ。人間にどうにか出来る相手じゃないっすね」


「……ザーラも対人戦は悪手を考えているそうです。鎧機兵戦に持ち込む方が、勝ち目があるということでしょう」


 肩肘をそっと押さえて、パメラが言う。


「全員、鎧機兵戦を想定していてください。ザーラの合図で襲撃します」


「了解っす」「承知いたしましたわ」


 ラックとパメラが即答する。レミとラミも互いの手を強く掴み、


「任せておいて」「レミとラミは強いから」


 そう告げる。パメラは静かに頷いた。


「十分後に散開します。しかし、先走ることは禁止です」


 パメラは警告する。


「ザーラが戦闘の意志を見せてからです。戦闘は確実ではありますが、あくまで最後の手段と考えてください」


 ザーラを除けば、実質的にリーダーであるパメラの言葉に全員が頷いた。

 それからパメラは静かな眼差しで館の方に目をやった。

 丁度、馬車の姿が見え始めたところだ。御者にはフェイの姿がある。

 馬車は館の前で停車し、ザーラが最初に降りて、マイア、ツルギ、エリスの順で馬車から降車してくる。最後にフェイが御者台から降りてきた。

 ザーラたちが館のドアの前に立つと、ドアが開かれた。

 何故か全身鎧を着た幼児が二人、ザーラたちを出迎えたようだ。

 ザーラたちは館の中に招き入れられた。


 いよいよ、会談が始まるようだ。

 ――対極のような立場にある二人の人間の。


(会談が上手くいくとは思えません)


 それがパメラの率直な意見だ。

 恐らく、ザーラ本人も含めた全員の意見でもある。

 魔獣を生身で屠るという少年。極めて危険な相手だ。だが、それでも対峙せずにいられないのが、ザーラの本心なのだろう。


(少し嫉妬してしまいます。レオスという人物には)


 あのザーラが少女のように想い続ける相手。

 果たしてどんな人物なのか。

 今のところ、怪物めいた話しか聞いていないことも気になる人物だ。

 彼女たちの愛する主人の師であり、想い人でもある男。パメラのみならず、兵団のメンバー全員が気にするところだった。


(……ザーラ。私たちはあなたの兵団です)


 パメラは館を静かに見据える。

 そうして、


(どんな状況であろうとあなたを支えます。だから決して焦らないで)


 彼女は微かに唇を噛んだ。


(どうか無事に戻ってきてください)


 そう願った。








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