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悪竜の騎士とゴーレム姫【第16部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第16部

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第六章 伝言者④

 翌朝。

 やはり滅茶くちゃに怒られた。

 サザン伯爵邸の客室にて、コウタも、ジェイクも正座をさせられていた。

 なお、零号たちは正座が出来るほど足が長くないので、並んで腰を下ろしている。

 コウタたちの前に立つのは女性陣だ。

 メルティア。リノ。リーゼ。アヤメ。エル。アイリ。

 彼女たちは、とても不満そうな顔をしていた。そこまで怒ってはいないが、呆れてしまっているような表情だ。

 なお、リッカだけは少し落ち込んでしまっていた。

 なにせ、主人が暗殺者と対峙している時に、のんびり寝ていたのだから落ち込むのも仕方がないことだ。たとえ、それがコウタの気遣いであっても、真面目な彼女としてはやはり堪えたのだろう。


(後でリッカはちゃんとフォローしよう)


 リッカをちらりと見て、コウタはそう思った。

 それは確定にしても、直近の危機はこの状況だった。


「……そなたは」


 リノが額を片手で押さえて嘆息した。


「何故、暗殺者をキャッチ&リリースしておるのじゃ」


「その通りなの、です」アヤメもジト目で言う。


「捕まえたのなら幾らでも吐かせればいいの、です。私なら出来ました」


「そうだな」エルが腕を組んで言う。


「折角の捕虜だったんだ。使いようはあっただろう」


「いえ。確かにそうですが」


 リーゼがかぶりを振って言う。


「捕らえた場所がまずいですわ。ここは伯爵邸。引き渡し先はサザン伯爵になります。そうなればその暗殺者は相当危うい目に遭ったことでしょう」


 一拍おいて、


「いずれにせよ、長くは拘束できなったと考えるべきですわ」


 リーゼの言葉にメルティアが視線を向けた。

 少し小首を傾げて、


「私はあまりそういう駆け引きのようなことに詳しくありませんが、ただ、コウタはコウタなので、あまり傷つけたくなかったことは分かります」


「……うん。コウタ、甘いから」


 と、アイリが言った。

 女性陣では、リッカだけは未だ無言だった。明らかにへこみ具合が進んでいる。今は口を出すのもおこがましいとでも思っているのかもしれない。


「……えっと、みんなごめん」


 コウタは頭を下げた。


「リノやアヤちゃんならもっと情報を引き出せたかも知れないけど、ボクとしては、彼女は伝言者として可能な限り無事な姿で開放したかったんだ」


「……ザーラを呼び出すためか?」


 表情を鋭くしてリノが尋ねる。コウタは「うん」と頷いた。


「あの男との決着はついた。別にあの男に関わる人をすべて憎んだりしない」


 コウタは自分の胸倉を強く掴んだ。


「けど、やっぱりあの男の弟子だと聞くと気になるよ。どんな考えを持っているのか。あの男から何を受け継いでいるのか。それを知りたいんだ」


「それは分からなくもないが……」リノは腕を組んで嘆息した。


「あやつは弟子であると同時にレオスの女でもあるようじゃ。そなたがレオスを殺したことを知れば必ず戦闘になるぞ」


「……そうだね」コウタは瞳を細めた。


「けど、それは覚悟の上だよ。別に憎しみを受け止めるという意味じゃないよ。敵として迎え撃つ覚悟だ」


 そこでリーゼを見やる。

 不意に見つめられ、リーゼは「え?」と目を瞬かせた。


「特にザーラはリーゼをあんな目に遭わせている。すでに敵であることは変わらないよ。話し合いの結果がどうであれね」


「……意外とコウタ君、攻撃的に考えているの、です」


 と、アヤメが感心したように呟く。


「けど、その苛烈さが焔魔堂の主としては相応しいの、です。ですが」


 そこで零号、サザンX。そしてずっと黙り込んでいるジェイクに目をやった。

 目が合って、ジェイクは気まずそうにポリポリと頬を掻いた。


「コウタ君が危ないことをする時、巻き込むのが悪友と人外だけなのは不満なの、です。もう少し頼って欲しいところ、です」


「それは私も同感だ」エルがジト目で頷く。


「私は無論、アヤメ、リノ、リーゼは強い。メルティアやアイリを危険にさらしたくないというのは分かるが、戦闘前提なら私たちには頼れ」


 そこで一拍おいて、


「まあ、今回はリッカだけは気遣っても仕方がないとは思うが……」


「……姫さま。やめてください。よりへこみます」


 視線を斜めに落として、ズーンとへこむリッカ。


「……閣下の危機に私は呑気に……」


「いや。危機ほどじゃなかったよ。リッカ」


 コウタはかぶりを振った。


「正直、ボクはもっと桁違いな怪物たちと何度も出遭っている。レオス=ボーダーもそうだし、ラゴウ=ホオヅキもそうだ。確かに彼女は決して弱くはなかった。けど、姿を見せてしまった時点で暗殺者としての脅威は薄れていたよ」


「………」


「本当に危機だったら、ボクは君を呼ぶ。だから気を落とさないで」


「……閣下」


「まあ、コウタもこう言っている」


 エルがリッカの肩をポンと叩いた。


「それでも気落ちするのなら、次で挽回すればいいさ」


「……姫さま」


 顔を上げてエルを見るリッカだったが、そのエルは不意に「むむ」と呻き、


「それよりリッカは四人目になったんだな」


「え、あ……」


 かあああっと顔を赤くするリッカ。


「お前には色々と聞きたい。色々と。今後のために」


「……それは私も、です」


 エルとアヤメが左右からリッカの腕を掴んだ。

 そうして、リッカの足を軽く浮かせて、二人は彼女を連れていく。


「コウタ」エルは振り向きながら言う。


「リッカは私たちが叩いて直しておく。コウタたちは作戦を考えてくれ」


「……うん」


 エルの言葉にコウタは頷いた。

 そうしてエルとアヤメ、リッカの三人は部屋を退室した。

 こう言っては何だが、エルとアヤメは元々作戦立案が苦手だから下手に加わるより、リッカを理由に席を外したのだろう。


「さて」


 コウタは立ち上がった。

 ジェイクも立ち上がり、こきんと首を鳴らし、「……反省、カンリョウダナ」「……カンリョウ」と零号とサザンXも立ち上がる。


「それじゃあリーゼ。リノ」


 この中で戦闘――むしろ戦略か――が得意に二人を見すえた。


「メルたちにも聞いてもらうけど、改めて作戦会議をしようか」


 そう切り出した。


 ――コウタとザーラ。

 出会った時間こそ短かったが一人の男を切っ掛けにした因縁深き二人。

 彼らが再び交差する時は近い。









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