第六章 伝言者②
「マイアさんからの定期連絡がないんすか?」
時刻は朝。
とある宿の一室にて、ラックが目を丸くした。
そこにはパメラとルシアの姿もある。
獅子兵団に所属する三人だ。ラックはベッドの上にて胡坐をかき、パメラとルシアは椅子に座っている。
「ええ。そのようです」
ルシアが頬に片手を当てて答える。
「心配ですわ。生真面目な彼女が定期連絡をしてこないなんて」
「マイアは今、ザーラから任務を受けています」
パメラが言う。
「そのため、定期連絡が出来ない状況にあるのかもしれません」
「けど、それってただの調査任務っすよね?」
ラックが眉根を寄せた。
「別に暗殺じゃない。ただの調査っすよ。なのに、マイアさんが無事を知らすだけの連絡を全くしてこないのは流石におかしいんじゃないっすか?」
「……そうですわね」
ルシアが瞳を細めた。
「やはり何かあったのかもしれません。パメラさん。ザーラお姉さまは何と?」
「いったん全員に集まって欲しいとのことです」
パメラは、ルシアとラックに目をやって告げる。
「マイアの任務にはまだ期限があります。それに立て込んでいて、定期連絡が出来ない状況にある可能性もあるのですが、ザーラは少し嫌な予感がするとのことです」
「……うわあ、ザーラさんの『嫌な予感』っすか」
ラックが渋面を浮かべた。
「ザーラさんの直感は凄いっすからね。それこそ嫌な予感がするっす。マイアさん、本当に大丈夫っすよね?」
マイアは素っ気なくはあるが、やはり大切な仲間の一人なのだ。
ラックが心配してそう呟くと、
「マイアは一流の暗殺者です。そう容易く危機に陥ることもないはずです。ただ、一流だからこそ心配なのは……」
そこで普段は無表情が多いパメラが微かに眉をひそめた。
「マイアが自害する可能性です。ザーラの足手まといになることを恐れて、マイアはその選択肢を考えています。安易な手段に出なければよいのですが」
「マイアさんは良くも悪くも生真面目な方ですから」
ルシアも心配そうに声を零した。
「ですが、私たちはザーラお姉さまの兵団である前にお姉さまの女なのです。もう少しご自身を大切にしていただけないと……」
「そうっすね。一人でも死んだら、ザーラさんが悲しむっすよ」
そう言って、ラックはベッドの上から飛び降りた。
「とりあえず、ザーラさんの命令通り皆で集まるっすか。他の誰かなら、もしかするとマイアさんの行先を知ってるかもしれないっすからね」
「ええ。それに期待しましょう」
パメラも立ち上がった。ルシアもだ。
そうして三人は部屋を後にした。
同刻。
路地裏にある広場にて。
ザーラは険しい表情で腕を組んでいた。
その傍らには気まずそうな顔のエリスと、ツルギが立っている。
広場に沈黙が続く。と、
「……もうじき全員揃うはずだ」
路地の奥の方から声を掛けられる。
ザーラたちが視線を向けると、そこには黒衣の男が近づいてくる姿があった。
フェイである。
「しかし、やはりマイアだけは不明のようだ」
「……失敗したね」
ザーラは舌打ちする。
「相手を低く見積もりすぎてたか」
「まだ確定した訳じゃないでしょう」
エリスが言う。
「任務中なのよ。連絡できない時なんてざらにあるわ」
「まあ、そうなんだけどさ」
ボリボリとザーラは頭を掻く。
「どうにも嫌な予感がするんだよ。ましてや白金仮面は充分に怪物だったからね。いくらマイアでも一人で行動さすべきじゃなかったか」
「……いえ。我が君」
それに対し、ツルギはかぶりを振った。
「マイアは単独行動こそ真価を発揮する者です。むしろチームで動くのはリスクを高めることになったかもしれません」
そう指摘する。ザーラは渋面を浮かべた。
「そいつを言われたら、あたしもそう思うけど」
おもむろに、ザーラは空を見上げた。
「それでも上手いこと行かなくて、内心じゃあ、ちょいと焦ってたかもな。あたしはマジで計画立案とか向いてねえよな」
「人には得手不得手があるものだ」フェイは言う。
「計画立案など参謀の仕事だ。お前は女王として君臨していればいい」
「そうさね」
ザーラは苦笑を浮かべた。
「計画立案は次からフェイとパメラに丸投げして、あたしはふんぞり返っているよ。そのためにもマイアには無事戻ってきて欲しいね」
「我が君。マイアは強者です」
ツルギが語る。
「拙者とはタイプは違いますが、そう容易く死にはしないはずです」
「その通りよ! 彼女もあなたが選んだ団員なんでしょ!」
バンッとエリスがザーラの背中を叩いた。
「しっかりしなさい! 私たちの女王さま!」
「……はは」
ザーラは思わず苦笑を零した。
数瞬の沈黙。それからパンっと拳で手を叩き、
「そうだったね。あたしの選んだ女がそう簡単に死ぬものか」
「……生死においては私には分からんが」
フェイが、ポツリと呟いた。
「ともあれ仕切り直しだな。マイアという娘の行方を追うにしてもな」
その言葉に、エリスとツルギが頷いた。
「ああ。分かってるさ」
ザーラも頷く。
「まずは全員を集める。話はそっからだよ」
そう告げた。
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