助けちゃいけない理由
『絶対に、助けてはならない』
____絶対に、助けてはならない?
「いやいやいやいやいや」
はい、今俺は何回『いや』を言ったでしょう。びっくりし過ぎて現実逃避。
現実逃避になってない気がするが、気のせいと決めつけた。人間思い込みが大事。
「にゃんだ?にゃにか、文句でもあるにょか?」
文句……?
文句は無いと言っちゃあないな。文句はないぞ。
「文句は、うん、ない。ただ、質問がある」
「質問にゃ?答えられる範囲で答えてやる」
ナゴが踏ん反り返って言うが、俺は頭が混乱中で質問が思い浮かばない。
どこから質問したらいい。
っつか、こういう場合って普通、大事な人が死ぬから助けろみたいなのが王道じゃないのか?え?何?俺って、悲劇の主人公みたいなやつなの?
だったら、誰だよ作者。いや知るかよ作者。
人生の作者は神様である。
誰が言ったよ。俺が言ったよ。
俺超混乱中。
おお、四字熟語完成とか思ったら五文字だったわ。
「えっと……えっと……そう!何で助けちゃいけないんだよ!普通、助けろってくるだろ!話の流れとして!」
助けられるかどうかは別として、俺自身、そういう話の流れだと思っていた。
漫画の読み過ぎか?
いや、そんなことはない。
「___まぁ普通、そう考えるよにゃ。でも、違う。アキ、お前は絶対に助けちゃいけにゃいんだ」
仕方にゃいことだ。
諦めろ。
「なんでだ!」
「助けちゃいけにゃいからだ」
「だからそれがなんでだ!って聞いてるんだよ!」
死ぬのは、俺の大事な人なんだろう?
なら、俺が助けたっていいじゃないか。
「ダメだと決まってる。理由は言えにゃい。あ、嘘。今にょ嘘。理由は知らにゃい」
言えにゃい、と言った瞬間に俺がナゴをギッと睨みつけたため、ナゴは毛を逆立てて嘘だと繰り返した。
さっきは出なかった目のビームでも出たのだろうか。冗談だ。人はそんな簡単に進化しない。むしろ退化はできる。
「本当に、知らないんだな?」
「さっきも言ったが、おれはほとんどにゃにも覚えてにゃい!細々とした記憶の中にも、助けちゃいけにゃい理由はにょこ(残)ってにゃかった!」
俺は深々とため息を吐いた。
この様子じゃ、仮に覚えていても教えてはくれなさそうだ。ナゴは肉球をむぎゅむぎゅと自分の口に押し当て、何も話さないというように口を閉ざしていた。
何か隠しているのは確実だ。
だけど、話してもらうのは多分不可能だった。
「……じゃあ、何で俺に会いに来たんだよ。お前一体何者だよ」
助けちゃダメなら、そもそも話さなければ良かったのだ。知らぬが仏、ってやつか。
「……それは本当に知らにゃい」
まっすぐこちらを見て、ナゴは首を振った。
こっちは本当に知らないらしい。つまり、さっきの理由はやはり知っているのか。
「ただ、アキに会い、大事な人間が死ぬこと、それからアキが救ってはいけないことをはにゃさにゃければいけないことだけを覚えてる」
「そうかい。で、それが終わったお前はこのあとどーすんだ?」
「アキ、しばらく一緒に住むから、よろしくにゃ」
……うぇー。超良い笑顔で言われた。
ただし、猫顔なので潰れた顔。
笑顔と判別したのはノリと雰囲気。
大事な人間が死ぬというのは追い追い考えるとして。
まずはナゴを追い出そうかと思う。
……でもやっぱり、大事な人間が死ぬのを助けちゃいけないって、どういうことなのか。




