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『大事な人が死ぬ』
単純だが明確なその言葉に気を取られ、思わず足を止めてしまう。おいおい。
今時ペテン師でもそんなこと言わないだろ。
「それ、どう言うことだ?」
半信半疑。けれど信じるの割合が少しばかり多い気がする。
気付いた時には振り返り、黒猫に近づいて聞いていた。
「にゃふん。単純な人間だにゃあ」
バカにされてる気しかしない。黒猫はしてやったり、みたいな顔で笑ってる。
黒猫の首根っこを鷲掴みにして、俺と同じ高さになるよう持ち上げた。
黒猫の余裕な顔は崩れなかった。
「アキ、場所は移動しようか」
ふわっとした毛に覆われた猫手が、俺のアパートを指す。若干イラっとしながらも、素直にアパートに向かった。
喋る猫と人通りの多い場所で喋るのは、嫌でも注目を集めそうだ。
「おい猫」
お前はなんで俺の名前を知っているんだ、と聞こうとして黒猫に話しかける。丁度、向かい側から来る女の人とすれ違うところだった。
「にゃあ」
わざとらしく、黒猫が鳴き声を出す。
人間が、真似る気もないのに猫の鳴き声を真似したみたいな声だった。
「……」
今更普通の猫を装うとは。睨みつけてやったが、残念なことに俺の目はビームを出さない。
だが、黒猫は居心地悪そうに身動ぎしたので、少し気分が晴れた。
___家に着き、黒猫を腹いせに放り投げてやった。
※良い子は真似しないでね。
と、テレビの下の方に付きそうな注意事項を添えておく。
誰のためかはわからない。
黒猫は投げられたことなんてなんでもないように、くるりと身を丸めて一回転し、ピシッと着地を決めた。なんかムカついた。
「さて、お前にょ質問に答えてやる」
ドヤ顔なんだが、な行が全てを台無しにしている気がしてならなかった。




