黒猫のナゴ
「にゃに……違う。ニャ……違う。やっぱり、『にゃ』の段が言えにゃい……」
猫がいた。黒い、猫だ。
黒い綺麗な毛並みに、細くしなやかな肢体。
猫好きにはたまらない容姿を持った黒猫。残念なことに、俺は猫好きと言うわけではなくその横をただ通過しようとしていた。
だが。足を止める。耳を傾ける。
「猫が……喋った⁉︎」
しかも、何やらブツブツと独り言を言っている。
「……にゃ?おい、そこにょにゃんげ……にゃほんっ!人間」
呼び止められた。
っつか、にゃんげってなんだよ。懺悔か?ざんげのことか?
それから、にゃほんっ、って。咳か?咳なのか。
「人間、お前、黒田秋か?」
げほんっ。今度は俺が咳払いする。
青い黒猫の瞳を見ながら、信じられないと口を押さえた。
「何で俺の名前を……っ」
「おぉ、合ってたか!」
にゃ……つまり、な行を言わなければ何の不自由もなく人間の言葉を言っている気がするぞ、この黒猫。
しかし、そんなことに気を止めてる場合じゃ無い。
「良かったな、あっていて。まぁ多分同姓同名の別人だろうから他を当たってくれ」
良かった良かったと手を適当に叩いて、俺は黒猫に背を向けた。
黒猫が、人間の言葉を喋り理解するのは何故か。知りたく無いと言えば嘘になる。
だがきっとそれは、録音された声か何かだろうと想像しておこう。それ以外は想像出来ない。
じゃあ、俺の名前を知っている理由は……。
やはりこれも、気にならないわけじゃ無い。だが。それよりも。俺の本能が、関わっては行けないと言ってる。
俺の予想は大体当たる。悪い方向で。
いっそ、占い師にでもなってやろうか。悪いことばかり当たるんじゃあ、無理か。数秒で断念。
「あ、おい、どこに行く!」
慌てたような声が聞こえたが、それは無視して歩く。
「おい、人間!……いや、アキ!お前が話を聞かなければ、お前の大事な人が死ぬぞ!」
「……は?」
小説家になろうでは、初めての投稿作品となります。拙い部分も多くありますが、少しでもお楽しみいただければいいなと思います。
黒猫のナゴは、な行が弱いちょっと偉そうな猫。主人公アキは、苦労性だが面倒見の良いやつ。
そんな彼らが織りなす物語。気に入っていただけると幸いです。




