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僕の小さな救出作戦  作者: 桜 舞華
極めて平凡で概ね平和
10/16

ひきこもり、家を出る

 エミカの家の前。

 カチッと、インターフォンの硬くなったボタンを押した。しばらく押されていないかのように、インターフォンのボタンが硬い。

なぜだ。ここは俺のアパートよりも新しいアパートだぞ。

 かちっ。カチカチカチカチ。連打連打。

 気分は古いゲーム機で遊ぶ小学生。

 おかしい。音が鳴らない。

 俺の家のインターフォンは、押したらキーンコーンと鳴るんだぞ。この家はあれか。アナログか。

 自分でキーンコーンと言わなければならないのか。それをする勇気は俺にはない。


 仕方なく、コンコンっと、扉を叩いた。俺の拳が扉にぶつかっては音を鳴らす。中にちゃんと聞こえているだろうか。


 しばらくして、ようやくエミカが出てきた。


「あきいいい!!」


 泣きそうな顔だった。やめろ、ひっつくな。凹凸のない体を押し付けてくる。やめろ。虚しい。



「……って、エミカ!」

「何?」

「それ寝間着じゃねーか!着替えろよ!」


 行く気ねーだろ!絶対!



「ほへ?」



 ほへ?じゃねーよ!


 ピンクの、上下寝巻き。童顔なエミカにはよくにあっていた。でも、今は似合ってるかどうかの問題ではない。


「早く着替えてこいよ」

「はぁい」


 気の抜けた返事。

 大丈夫かこいつ。


 数十分して……え⁉︎もう数十分⁉︎



「遅いだろう!」



「おそいにゃー」




「うぉぁっ⁉︎ナゴ、いたのか」


 一緒に家を出たのは知っていた。

 だが、どこにいるかはわからなかった。まさか、こんな近くにいるとは。真横に仰け反ってナゴから距離を取る。


「にゃぁーん……。そんにゃにおどろかにゃくても……」


 まったりと欠伸を漏らして、ナゴが前足を伸ばす。猫が猫背ってことはないんだろうな ……逆側に背骨が湾曲してる。

 猫って体柔らかそうだな。


「ナゴ、どこまで着いて来るんだ?」

「……デートがいいのかにゃ?」

「違うわ!」


 エミカとのお出掛けは、断じてデートじゃない。なので、その点においてはナゴが着いて来ることになんら問題はない!そう!決して!


「じゃあにゃにが問題にゃんだ」

「喋る猫が隣にいることだ!」

「にゃん。にゃるほどにゃー。じゃあ、しばらく喋らにゃい。それでいいかにゃ?」


「……まぁ、はい」


 ……あれ?そういう問題なのか?


「お待たせ〜」


 ようやく、憂鬱そうな顔をしたエミカが出てきた。憂鬱そう……うわ、名残惜しそうに家を見てる。震える足で一歩前に出た。

 お前は、初めて巣を出る小動物か!

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