↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/6

1 旅立ち その④

 今日もいつものように、家の外壁に背を預けて、丘から村を見下ろしていた。麗らかな日差しは、睡眠不足のガジュを眠りの世界へ誘う。昨夜は眠れなかった。


 この日差しのように穏やかな日々が、この先も続くのものだと思っていた。しかし、ガジュを巡って、不穏な空気が漂い始めているらしい。


 これから僕はどうなるのか? ウルワシカとは今後どのように付き合えばいいのか?


 悩みを相談できる相手もおらず、一人で悶々と悩んでいる間に、いつしか空は白んで、朝になっていた。


 欠伸をすると、丘を登って来るウルワシカの姿が目の端に映った。


「おはよう」


 昨日と同じように、ウルワシカが元気な挨拶をする。しかし、その表情はいつもと違って硬い。


 昨日、コリンがウルワシカにプロポーズをしたことは、すでに村長から聞いている。ウルワシカがコリンのプロポーズを受け入れたのか、ひどく気になった。しかし、さすがに不躾過ぎて、直球では聞けない。


 どう切り出そうか悩んでいると、ウルワシカのほうから質問してきた。


「ガジュは私のことを、どう思ってるの?」


 ウルワシカが真っ直ぐにこちらを見ている。

 この質問はきっと、昨日コリンがウルワシカにプロポーズをしたことと関係がある。


 ウルワシカとの関係を、今以上に発展させたいのであれば、素直にウルワシカが好きだと打ち明ければいい。


 若い二人は、今まで互いに好意を言葉にはせず、それを楽しむように時間を共有してきた。ほんの一つのきっかけさえあれば、二人の仲はすぐに進展したはずだ。


 昨日、村長の話を聞く前であれば、素直に自分の好意を、ウルワシカに伝えていた。だが、もう今はそうできない。今もっとも優先すべきなのはウルワシカの安全だ。ウルワシカとは、距離を保つ必要がある。


 ウルワシカを傷つけぬように、ガジュは慎重に言葉を探す。その沈黙を、ウルワシカは誤解したらしい。


「ガジュは私が嫌いなの?」

「そんなわけないだろ」


 すぐにウルワシカの言葉を否定する。そんな風に思われるのは心外だ。


 ウルワシカは唇を噛んだ後、決意して口を開いた。


「じゃあ、ガジュは私が好き?」


 もう逃げられない。昨晩から悩んでいたことについて、結論を出さねばならない。


「僕は……」


 もし、ここで正直にウルワシカを好きだと打ち明けたら、一体どうなるのだろう? ウルワシカはコリンのプロポーズを断るのだろうか?


 ウルワシカの幸せを願うのであれば、ウルワシカはコリンと結婚すべきだ。


「……ウルワシカが好きだよ」


 ウルワシカの目に喜びが宿る。胸が引き裂かれるような痛みを堪えて、その喜びをガジュは打ち消す。


「でも、それは恋愛感情の好きじゃない。人として好きなんだ」


 みるみるうちにウルワシカの目に涙が溜まっていく。ウルワシカはなにも言わず、ガジュのもとを走り去った。


 これでよかったんだ。


 何度も何度も自分に言い聞かせる。しかし、胸を刺す痛みは消えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。