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超越者――戦争の終わる日  作者: 4ランクは下の人間
超越者 ― 第一章 超大国編

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第一章2 大統領には何も出来なかった②

同午後20時


CNN。


FOX。


NBC。


CBS。


ABC。


すべての放送局が同じニュースを流していた。


画面の下には、赤い文字。


BREAKING NEWS


「世界中で原因不明の現象が発生しています」


キャスターの声が震えている。


「現在、アメリカ政府は国民に冷静な行動を呼びかけています」


その瞬間。


テレビ画面が消えた。


そして、すべてのアメリカ人の頭の中に声が響いた。


『聞こえているなら、聞いてほしい』


ニューヨーク。


タイムズスクエアで、人々が一斉に立ち止まった。


誰かが叫んだ。


「What the hell is that?!」


ロサンゼルス。


高速道路で、何百台もの車が路肩に停まった。


シカゴ。


地下鉄の乗客が顔を見合わせている。


テキサス。


教会では礼拝が中断された。


ラスベガス。


カジノの客が一斉に空を見上げた。


だが、空には何もない。


声だけがある。


『私はあなたたちの敵ではない』


その言葉を聞いた瞬間、泣き出す人間もいた。


逆に、


「嘘だ!」


と叫ぶ人間もいた。


「神だ!」


「宇宙人だ!」


「政府の実験だ!」


「中国の兵器だ!」


「ロシアだ!」


情報が爆発した。


SNSは数分で混乱した。


「#WE_ARE_NOT_ALONE」


「#ALIEN」


「#GOD」


「#END_OF_THE_WORLD」


「#TRUST_THE_PRESIDENT」


あらゆる言葉が世界中を駆け巡った。


しかし、一つだけ誰も否定できない事実があった。


アメリカ政府にも、この現象を止める方法がない。


21時。


大統領は国民向け緊急演説のため、ホワイトハウスの演壇に立った。


カメラの前には何百万人もの国民がいる。


大統領は原稿を持っていた。


しかし、手が震えていた。


こんなことは就任以来、一度もなかった。


「アメリカ国民の皆さん」


一度、息を吸う。


「現在、我々は……」


そこで言葉が止まった。


大統領自身も分かっていた。


国民に、


「政府は状況を完全に把握しています」


とは言えない。


嘘になる。


「……我々は、現在起きている現象について、まだ完全な説明を得ていません」


全米が静かになった。


「しかし、現在確認されている限り、アメリカへの物理的攻撃はありません」


その瞬間。


声がした。


『正確には、地球への攻撃もない』


大統領は目を閉じた。


全国民が聞いた。


大統領も聞いた。


「……そうですか」


大統領が小さく答えた。


そして初めて、


世界最強国家の大統領が、


自分より遥かに強い存在に対して言った。


「では、あなたは何を望んでいる?」


『何も』


「何も?」


『私は観察する』


「それだけか?」


『それだけだ』


大統領は苦笑した。


恐怖と疲労が混ざった、乾いた笑いだった。


「……それは、我々にとっては十分すぎるほど怖いことですよ」


『そうか』


それだけだった。


大統領は演説を続けた。


しかしその日から、アメリカ人の多くが理解することになる。


アメリカは強大な国家だ。


世界最大級の経済力を持ち、世界最強クラスの軍事力を持つ。


大統領には巨大な権限がある。


核兵器の発射権限すらある。


だが、


この世界で初めて、それらが何の意味も持たない相手が現れた。


そして、その存在は敵ではないと言っている。


味方でもないと言っている。


ただ、


見ている。


それだけだった。


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