序章4 代行者
超越者は、国連で代行者を指名すると発言した。
『私には実体がない。それではこちらの世界では不便であろう』
『よって私は、三日後、人類の中から一人を代行者として選ぶ』
そして、超越者出現より七日後
場所は東京。
日本国民の大半が、その発表を固唾を飲んで見守っていた。
皇居。
天皇が姿を現した。
超越者の声が世界中に響く。
『私は、人類の中から一人を代行者として選ぶ』
『日本の天皇を代行者として指名する』
世界が息を止めた。
『理由は単純だ』
『地球上に現在まで続く王統の中で、最も長い歴史を持つ王であるからだ』
ざわめき。
『私は日本人を特別な民族とは考えていない』
『日本に特別な権利を与えるつもりもない』
『ただ、私の代行者を必要とした』
『そして私は、平和を望む』
『だから、大和の民の長として長い歴史を持つ天皇を選ぶ』
世界中で議論が始まった。
だが、超越者は続けた。
『勘違いしないでほしい』
『日本が世界を支配するわけではない』
『日本政府が私の政府になるわけでもない』
『天皇が私の命令を人類に押し付けるわけでもない』
『天皇は、人類と私の間に立つ』
『それだけだ』
その言葉を聞いた天皇は、しばらく沈黙した。
天皇側の側近が答えた。
「平和を望むというのは本当ですか?」
『偽りはない。そして今回の決定はわたしの選択である』
天皇は、しばらく沈黙し答えた。
「承知しました」
世界中の人間が、その言葉を聞いた。
「ただし、私は日本国憲法の下にある存在です」
一瞬。世界が止まった。
超越者は答えた
『問題ない』
一言。だが、その一言が世界を変えた。
超越者は、人類に従う必要がない。
人類も、超越者に従う必要がない。
それでも両者は共存する。
人類の新たな秩序が始まろうとしていた。




