序章3 三日後
三日後。
国連総会。
史上初めて、加盟国すべてが満員になった。
議場の中央には、誰もいない。
それでも各国代表は、その「誰もいない場所」を見つめていた。
議題は一つ。
「超越者を国際秩序の中で、どのように位置づけるか」
アメリカ代表が立った。
「我々は、超越者を国家とは認めません」
中国代表も続いた。
「同意する。国家ではありません。そもそも人類ではない」
フランス代表が言った。
「では、何なのでしょう」
沈黙。
そのとき、日本代表が手を挙げた。
「超越者自身に聞いてみる事は出来ませんか」
議場が静まり返った。
そして全員の頭の中に声が響いた。
『私は国連の上に存在する』
どよめきが起きた。
『しかし、国連を廃止するつもりはない』
『あなたたちはあなたたちの制度を維持すればいい』
『私はあなたたちを統治するつもりはない』
『ただし、私に関する事項については、私自身が最終的な判断を持つ』
中国代表が立った。
「では、あなたは世界政府なのですか?」
『違う』
「では、国連の最高権力者ですか?」
『あなたたちがそう呼びたいなら、そう呼んでも構わない』
「曖昧すぎます」
『そうだろう』
一瞬、声に笑いが混じったように聞こえた。
『私はあなたたちの法律を知らないのではない』
『あなたたちの法律に縛られる必要がないだけだ』
議場が凍った。
だが次の言葉は、意外なものだった。
『その代わり、あなたたちには私を批判する権利がある』
『私の判断について説明を求める権利がある』
『質問する権利がある』
『反対する権利もある』
『公開討論を要求することも認める』
『私は絶対的な力を持つ』
『だからこそ、あなたたちが私に説明を要求することを認める』
誰かが呟いた。
「……それが、代償ということですか」
『違う』
声が答えた。
『それが、選択だ』




