第四章4 日本①
日本人のすべてがその状況を歓迎したわけではなかった。
国会では激しい議論が起きていた。
「なぜ日本が世界中の問題を背負わなければならないのか!」
「天皇陛下を外交交渉の道具にしてはいけない!」
「超越者の力を日本政府が利用していると思われるぞ!」
反対意見は少なくなかった。
政府も慎重だった。
超越者は日本の所有物ではない。
天皇も政治的に超越者を命令できるわけではない。
そこで政府は、一つの原則を定めた。
超越者との対話は、天皇個人の政治的意思として扱わない。
超越者から何らかの回答を得たとしても、それを日本政府が勝手に「超越者の命令」として利用することを禁止する。
それは、超越者を日本政府の権力として扱わないためでもあった。
同時に、日本が超越者を支配しているわけではないことを、世界に示すためでもあった。
それでも、日本には世界各国から問い合わせが届き続けた。
日本政府は、そのたびに対応した。
これらの対応によって、日本は辛うじて世界からの疑念を抑えた。
そして少しずつ、日本人も気づき始めていた。
日本は、超越者を手に入れたわけではない。
それは、日本政府も理解していた。
超越者ノ間を管理している。
天皇を通じて、超越者と対話することができる。
しかし、それだけだった。
超越者が日本政府の命令を聞くわけではない。
日本の国益に沿った回答をするわけでもない。
むしろ、これまでの対話を見る限り、政治的な問題については極端なほど距離を置いていた。
それでも、質問は届き続けた。
アメリカ。
中国。
ロシア。
ヨーロッパ。
国際機関。
大学。
研究機関。
世界中が、超越者に何かを尋ねたがっていた。
そして日本もまた、質問を持っていた。
だが、日本政府は慎重だった。
超越者から得た回答を、政府の政策決定に利用してはならない。
まして、
「超越者がこう言ったから」
という理由で政治を動かすことなど、認められるはずがなかった。
それは、超越者を日本政府の権威として利用することになる。
だからこそ、最初の質問は慎重に選ばれた。
何を聞くべきなのか。
何を聞いてはならないのか。
そして――
超越者に、何を答えさせるべきなのか。
そもそも。
超越者は、何を答える存在なのか。
日本側は、まずそこから確かめることにした。




