↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超越者――戦争の終わる日  作者: 4ランクは下の人間
第四章 日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/34

第四章3 変わる世界

アメリカに続き、中国も超越者ノ間の利用を申し込んだ。


そして、超越者ノ間を訪れた中国代表が、日本政府の担当者に尋ねた。


「台湾情勢について、超越者の見解を聞くことは可能でしょうか」


日本側の官僚は、慎重に答えた。


「質問そのものは可能です」


「回答は?」


「超越者が答えるかどうかは、我々にも分かりません」


中国代表は黙った。


それは当然の話だった。


日本政府が超越者を管理しているわけではない。


超越者に質問できる。


ただ、それだけだ。


しばらくして、中国代表は言った。


「……では、お願いします」


その日の午後。


中国代表は超越者ノ間へ入った。


扉が閉じる。


空間が静まり返る。


やがて、対話が始まった。


「台湾問題について、超越者はどのように認識していますか」


しばらくの沈黙。


そして、声が響いた。


『それは、人類が決めることだ』


それだけだった。


中国代表は、しばらく黙っていた。


「……以上ですか?」


『はい』


それ以上の回答はなかった。


対話を終えた中国代表が戻ってくる。


待機していた日本側の担当者が尋ねた。


「いかがでしたか?」


中国代表は複雑な表情を浮かべた。


「何も教えてくれなかった」


「そのようです」


「台湾について、何の判断もしない?」


「はい」


中国代表はしばらく黙っていた。


そして、ふと呟く。


「それでも……」


「はい?」


中国代表は、超越者ノ間の方を振り返った。


「我々は、直接質問できた」


日本側の担当者は答えなかった。


中国代表も、それ以上は言わなかった。


台湾についての答えも得られなかった。


だが、それとは別の事実が残った。


中国は、超越者に直接質問することができた。


現時点では――


それだけで十分だった。


*----+


中国では、帰国した代表団から報告を受け、さらに激しい議論が始まった。


ある幹部が言った。


「日本を経由しなければ超越者に質問できないという状況は危険です」


別の幹部が答える。


「しかし、超越者自身が日本を支配者にしたわけではありません」


「それでも結果は同じだ」


「違います」


「何が違う?」


「日本が超越者に命令できるわけではない」


「だが、日本だけが超越者との対話を成立させられる」


「代行者が必要だからです」


「その代行者を管理しているのは?」


一瞬、沈黙が落ちた。


「……日本政府です」


「正確には違う。日本政府が管理しているのは、皇族の時間と、その負担だ」


「しかし、各国が超越者に質問するたびに、皇族の時間が必要になる」


「その時間を確保できるのは日本だけだ」


「しかも、日本政府はその時間を無償で提供しているわけではない」


別の幹部が口を開いた。


「つまり……」


「日本には、他国が持っていない資源がある」


その言葉に、部屋が静かになった。


「金でもない」


「石油でもない」


「軍事力でもない」


「だが、世界中が欲しがる」


誰も、それを否定できなかった。


超越者は日本の所有物ではない。


日本政府が命令することもできない。


日本が超越者の意思を決めることもできない。


それでも――


超越者と話すためには、日本を通らなければならない。


それだけで、日本の立場はこれまでとはまったく違うものになっていた。


結果として日本には、世界のどの国にもない接点が残った。


「我々は、日本を敵に回したくない」


別の幹部が言った。


「しかし、日本に依存することも避けたい」


その二つの意見は、どちらも正しかった。


中国にとって問題なのは、超越者そのものではなかった。


超越者と話すことのできる日本を、これからどう扱うべきなのか。


それは、これまで存在しなかった外交問題だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。