第三章7 試練③
国連緊急総会
数時間後。
国連本部では緊急総会が開かれた。
各国代表が次々に発言する。
「北朝鮮の住民を保護すべきだ」
「人道支援が必要だ」
「核兵器関連施設の安全確保が必要だ」
「しかし、どの国が行うのか」
「国連ではないのか」
「国連にそれだけの能力があるのか」
議論は紛糾した。
そして一人の代表が立ち上がった。
「一つ確認したい」
議場が静まる。
「北朝鮮という国家は、まだ存在しているのか?」
誰も答えられなかった。
法的には存在している。
領土もある。
国民もいる。
行政機関もある。
軍隊もある。
しかし、
国家として意思を決定する中枢が存在しない。
その状態を何と呼ぶべきなのか。
国際法学者たちは頭を抱えた。
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北朝鮮国内
一方、北朝鮮では地方の行政官たちが動き始めていた。
中央から命令が来ない。
しかし、
住民には食料が必要だった。
病院には電力が必要だった。
鉄道を動かす必要があった。
発電所を維持しなければならない。
つまり、
国家の中枢が止まっても、人間の生活は止まらない。
地方の役人が判断する。
軍の下級指揮官が判断する。
工場長が判断する。
医師が判断する。
農村の人間が判断する。
それぞれが、
「自分の目の前にある問題」
を処理し始めた。
北朝鮮は初めて、
中央の命令なしに動くことを強制された。
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そして国境が開く
数日後。
北朝鮮国内から大量の住民が移動し始めた。
食料を求める者。
家族を探す者。
安全を求める者。
韓国、中国、そして国際機関は対応を迫られた。
しかし国境を越えた人々に対して、
誰が北朝鮮政府として責任を持つのか。
誰にも分からない。
やがて国際社会は、北朝鮮国内への人道支援を開始した。
国連の支援物資。
医療チーム。
食料。
水。
発電設備。
通信設備。
北朝鮮国民は、初めて大量の外国人を目にする。
それまで「敵国」と教えられてきた人間たちが、
食料を運んできた。
医薬品を運んできた。
子供たちに水を配った。
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一方、平壌
金正温はまだ動けなかった。
目の前には時間だけが流れていた。
そして超越者の声が聞こえる気がした
『あなたは、自分の国家が消えていくのを見ている』
金正温の目が動く。
『私は国家を滅ぼしていない』
『あなたの国を攻撃してもいない』
『あなたの国民を殺してもいない』
『私はただ、あなたに試練を与えた』
『その後の結果は、あなたたち自身が作ったものだ』
金正温は何もできない。
反論することもできない。
命令することもできない。
そして、
自分がいなくても世界は動いている
という事実だけを見せつけられていた。




