第三章2 北朝鮮②
二度目の失態
翌週。
金正温は軍部に命じた。
「今度は日本の近くへ落とせ」
「近く、とは?」
「近くだ!」
軍部は困惑した。
結局、前回より日本に近い海域へミサイルを落とした。
すると日本政府が発表した。
「今回の発射について、超越者に確認を求めます」
金正温は画面を見ながら待った。
数分後。
超越者の声が世界中に響いた。
『今回も、私への攻撃とは認定しない』
金正温は拳を握った。
「……やはりだ」
そして笑った。
「恐れる必要などない!」
側近たちも笑った。
ところが、その直後。
『ただし』
全員が黙った。
『あなたたちは境界線を探っている』
金正温の顔から笑みが消える。
『私はその行為自体を禁止していない』
『しかし、境界線を越えたなら、あなたたちは結果を受け入れなければならない』
金正温は椅子から立ち上がった。
「結果とは何だ!」
『試練だ』
その一言。
部屋の空気が凍った。
*----+
「試練」という言葉
その日から、北朝鮮では「試練」という言葉が極端に恐れられるようになった。
軍幹部は言った。
「超越者が言う試練とは何なのか?」
科学者が答える。
「分かりません」
「死刑か?」
「分かりません」
「国家への攻撃か?」
「分かりません」
「では何なのだ!」
誰も答えられない。
ただ一つだけ分かっている。
超越者は、実行できる。
金正温の苛立ち
金正温は地図を睨んでいた。
日本。
朝鮮半島。
ロシア。
中国。
太平洋。
これまでなら、地図上の線には意味があった。
国境。
領海。
防空識別圏。
軍事境界線。
しかし今は違う。
その地図の上に、
「超越者の境界」
という見えない線が存在している。
しかも誰にも見えない。
「なぜ我々だけが……」
金正温が呟く。
側近は答えない。
「アメリカならどうする?」
「分かりません」
「中国なら?」
「分かりません」
「ロシアは?」
「分かりません」
金正温は机を叩いた。
「誰も分からないではないか!」




