第二章3 世界情勢③
ケニアでは、村の人々が夜空を見上げていた。
「超越者は星にいるのか?」
老人が答えた。
「違う」
「なぜ分かる?」
「星にいるなら、星を見る必要があるだろう」
若者が笑った。
「じゃあ、どこにいる?」
老人はしばらく考えた。
「我々には分からない場所だろう」
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オーストラリア
キャンベラ。
首相は国防当局から報告を受けていた。
「アメリカと連絡は?」
「取れています」
「中国は?」
「取れています」
「日本は?」
「……はい」
首相は深く息を吐いた。
「つまり、世界中の国が同じ問題を抱えている」
「そうです」
「では、我々だけが慌てる必要はないな」
側近が苦笑した。
「世界中が慌てています」
「そうか」
首相は窓の外を見た。
「ならば、少なくとも孤独ではない」
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東南アジア
フィリピン。
政府は軍に警戒態勢を命じた。
しかし数時間後、軍の幹部が政府に質問した。
「何に対して警戒するのでしょうか?」
政府は答えられなかった。
ベトナム。
同じ問題が起きた。
インドネシア。
同じだった。
タイ。
同じだった。
マレーシア。
同じ。
シンガポール。
同じ。
世界中の軍隊が、
敵が存在しないのに警戒態勢を取る
という奇妙な状況に陥っていた。
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国連
ニューヨークの国連本部。
中国、アメリカ、日本以外の各国代表も次々に発言した。
「超越者との外交窓口を設けるべきだ」
「超越者を国際法上どう位置づけるのか」
「試練とは何なのか」
「超越者に説明責任を要求すべきだ」
「人類は超越者を恐れるべきなのか」
議論はまとまらない。
ある小国の代表が突然立ち上がった。
「我々は一つ、重大なことを忘れている!」
全員が振り返った。
「超越者は、中国でもアメリカでも日本だけの問題でもない!」
「我々の国にも存在する!」
議場が静まった。
「だからこそ、我々は自分たちの立場を考えなければならない!」
その言葉に、各国代表が顔を見合わせる。
超越者は世界最大の国だけを見ているわけではない。
人口数百万の小国も、
人口数十億の大国も、
同じ人類として見ている。
それは恐怖でもあり、
同時に希望でもあった。
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その夜。
世界中で、街の明かりが少しずつ消えていった。
人々は疲れて眠りにつく。
しかし眠る直前、多くの人が同じことを考えていた。
アメリカより強い国が現れたわけではない。
中国より強い国が現れたわけでもない。
新しい帝国が誕生したわけでもない。
国家という枠組みそのものの外側に、超越者が現れた。
しかも超越者は言っている。
「人類の未来は人類自身で決めろ」
それは自由だった。
しかし同時に、
これまで人類が経験したことのない自由でもあった。
そして世界中の政府が、ようやく理解し始めていた。
これからの国際政治で最も重要な問いは、
「どの国が一番強いのか」
ではない。
「超越者が見ている世界で、人類はどう生きるのか」
という問いになる。
その答えを、
超越者は教えてくれない。
『考えるのは、あなたたち自身だ』
その言葉だけを残して。
世界は、初めて自分たちだけで答えを探し始めた。
ここから話は無限に作れますがそれはそれ。事実上の序章はここまでです。




