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超越者――戦争の終わる日  作者: 4ランクは下の人間
第二章 世界情勢編

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第二章1 世界情勢①

世界中の人間が、同じ声を聞いた。


それだけなら、まだよかった。


問題は、その声が、


どこから来たのか誰にも分からなかったことだった。


*----+


モスクワ

ロシア連邦大統領府。


午前5時。


国家安全保障会議が緊急招集されていた。


「アメリカの攻撃ではない」


軍情報部の責任者が報告する。


「中国でもない」


「では誰だ?」


「分かりません」


「衛星は?」


「何も映していません」


「潜水艦?」


「ありません」


「宇宙?」


「確認できません」


大統領が机を叩いた。


「ならば、存在しないのと同じではないか!」


誰も答えなかった。


その瞬間。


『存在している』


会議室の全員が固まった。


『私はここにいる』


大統領は天井を睨んだ。


「姿を見せろ!」


『できない』


「なぜだ!」


『あなたたちと私は、存在する次元が違う』


沈黙。


大統領は初めて、


ロシアの核兵器が何の意味も持たない可能性


を考えた。


*----+


ロンドン

英国首相官邸。


「国防省から報告です」


秘書が言った。


「何を?」


「軍は通常通り機能しています」


「それならいいじゃないか」


「……問題はそこではありません」


「何だ?」


秘書は一瞬ためらった。


「軍が、何に対して警戒すればいいのか分からないそうです」


首相は黙った。


テーブルの上には、


NATO加盟国の緊急連絡網。


核抑止に関する資料。


軍事衛星の状況。


あらゆる情報が並んでいる。


しかし、それらは全部、


「国家」を相手にするための道具だった。


超越者には国境がない。


基地もない。


艦隊もない。


大使もいない。


そして、攻撃できない。


首相は小さく呟いた。


「……外交官を送ることすらできないのか」


外務大臣が答えた。


「はい」


「では、どうやって話す?」


「向こうから話しかけてくるのを待つしかありません」


*----+


ベルリン

ドイツ政府は、科学者を集めていた。


物理学者。


神経科学者。


天文学者。


情報工学者。


哲学者。


軍事研究者。


誰もが同じ問いを与えられた。


「これは何なのか?」


三時間後。


物理学者が首を振った。


「現時点では説明できません」


神経科学者も言った。


「脳内に音声が生成されていると考えることはできます。しかし、なぜ世界中の人間が同じ内容を同時に認識できるのか説明できません」


情報工学者。


「通信ではありません」


天文学者。


「天体として観測できません」


哲学者。


「……存在論の問題になります」


軍人が苛立った。


「つまり?」


哲学者は答えた。


「我々の知識体系そのものが、相手を前提にしていません」


部屋が静かになった。



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