表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルーナ物語  作者: 白栞
PR
4/21

ルーナ物語

第四章 本の海


午後の授業。


一年一組の生徒たちは、レオナルドに案内されながら学園の中を歩いていた。


「今からフィーニス魔法学園の施設を案内する。」


その一言に、生徒たちの表情が明るくなる。


最初に訪れたのは訓練場だった。


朝とは違い、上級生たちが本格的な実戦訓練を行っている。


炎がぶつかり合う。


氷の槍が宙を駆ける。


巨大な結界が魔法を受け止め、眩しい光が辺りを包んだ。


「すごい……。」


クレアは思わず声を漏らす。


クロエも目を輝かせていた。


「いつか、私たちも。」


「うん。」


二人は顔を見合わせ、小さく笑った。


その後、一行は薬草園へ向かう。


色鮮やかな花々。


薬草の香り。


空を飛ぶ小さな妖精たち。


初めて見る景色に、生徒たちは夢中だった。


さらに温室。


魔法生物飼育舎。


フィーニスには、世界中から集められた植物や生き物が暮らしていた。


「ここまでが一般施設だ。」


レオナルドは振り返る。


「そして最後に案内するのが、この学園で最も大切な場所。」


目の前には、一つの巨大な建物が立っていた。


白い石で造られた塔。


何階建てなのか分からないほど高い。


窓には色鮮やかなステンドグラス。


大きな木製の扉には、古い魔法文字が刻まれている。


レオナルドは静かに扉を押した。


重い音とともに、扉がゆっくり開く。


その瞬間。


一年生たちは息をのんだ。


「……。」


言葉が出ない。


天井まで届く本棚。


何百列も並ぶ書架。


空中をゆっくり飛び回る魔法灯。


螺旋階段が何本も上へ伸び、その先は霞んで見えない。


紙の香りが、静かに漂っていた。


「ここが。」


レオナルドは穏やかに微笑む。


「フィーニス大図書館だ。」


小さな歓声が上がる。


「広すぎる……。」


「全部読むのに何年かかるんだろ。」


「一生でも無理じゃない?」


レオナルドは笑った。


「正確な冊数は誰にも分からない。」


「新しい本が増え続けているからな。」


生徒たちは思い思いに館内を歩き始める。


クロエも本棚を見上げていた。


魔法史。


魔法生物。


古代文明。


星の研究。


世界中の知識が、この場所へ集まっている。


「すごい……。」


自然と声が漏れる。


ページをめくる音が、小さく響いていた。


ペラ……


クロエはその音に耳を傾ける。


レオナルドが静かに声を掛ける。


「図書館では静かに。」


生徒たちは慌てて声を潜めた。


「本は、多くの人が命を懸けて残した知識だ。」


「読む者は、その想いも受け継ぐことになる。」


館内は再び静けさを取り戻した。


その日の夜。


部屋の明かりが消えたあとも、クロエは布団の中で小さな魔法灯を灯し、

図書室で借りた本を読んでいた。


そこに書かれていた英雄たちは、誰も最初から強かったわけではない。


失敗し。


迷い。


傷つき。


それでも立ち上がり。


誰かを守るために歩き続けた人たちだった。


一ページ読み終えるたびに、クロエの胸は少しずつ熱くなっていく。


やがて本を閉じる。


そっと胸に抱き、小さくつぶやいた。


「私も……。」


静かな部屋に、その声だけが響く。


「いつか、誰かを守れる英雄になりたい。」


まだ何者でもない。


魔法も未熟。


失敗することの方が多い。


それでも、その願いだけは誰にも負けなかった。


窓の外では夜風が木々を揺らし、星々が静かに瞬いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ