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ルーナ物語  作者: 白栞
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ルーナ物語

第二章 始まりの授業


朝日が、フィーニス魔法学園の校舎を黄金色に染めていた。


入学式の翌朝。


一年一組の教室には、新しい制服に身を包んだ生徒たちの笑い声が響いている。


「昨日は全然眠れなかった!」


「寮すごかったよね!」


「今日から授業かぁ。」


期待と緊張が入り混じった空気。


クロエも窓際の席へ座り、校庭を見つめていた。


訓練場では上級生たちが朝の自主練習をしている。


炎が空へ舞う。


風が木々を揺らす。


巨大な水球が宙へ浮かび、教師の一振りで霧となって消えた。


「すごい……。」


思わず小さく呟く。


いつか、自分もあんな魔法が使えるようになるのだろうか。


その時だった。


「おはよう!」


後ろから元気な声が聞こえる。


振り向くと、昨日出会ったクレアが笑顔で手を振っていた。


「訓練場?」


「見とれちゃうよね。」


「隣、いい?」


「もちろん。」


クレアは嬉しそうに席へ座る。


「昨日はありがとう。」


「手、もう痛くないよ。」


そう言って小さく笑った。


クロエも安心したように微笑む。


「よかった。」


その様子を見ていた周囲の生徒たちも少しずつ集まってくる。


「クロエさんって優しいね。」


「未来の英雄なのに全然偉そうじゃない。」


クロエは少し困ったように笑う。


「やめてよ。」


「普通だから。」


教室に笑い声が広がった。


その時。


ガラリ、と扉が開く。


教室が一瞬で静かになった。


「席について。」


レオナルド・グレイス。


一年一組の担任だった。


「おはよう。」


穏やかな声が教室へ響く。


「まずは出席を取る。」


レオナルドは出席簿を開いた。


「クレア・ローウェル。」


「はい!」


「クロエ・カルぺ。」


「はい。」


名前が次々と呼ばれていく。


そして最後の方で、レオナルドの声がわずかに止まった。


「ノア・アステル」


「……欠席。」


レオナルドは静かに出席簿を閉じ、窓の外へ目を向けた。


「今日から本格的な授業が始まる。」


魔法は競うものではない。


教室中の視線が、その言葉へ集まった。


レオナルドは静かに教室を見渡し、ゆっくりと口を開く。


「この学園には、優秀な者もいれば、まだ魔法を思うように扱えない者もいる。」


「生まれ持った魔力量も、才能も、人それぞれだ。」


「だからこそ、人と比べる必要はない。」


「君たちが比べるべき相手は、隣に座る仲間ではない。」


「昨日までの自分だ。」


レオナルドが杖を振ると、黒板に白い文字が浮かび上がった。


「魔法は、人を打ち負かすためだけの力ではない。」


「誰かを守るために使う者もいる。」


「誰かを救うために使う者もいる。」


「誰かの希望になるために使う者もいる。」


その言葉は、一人ひとりの胸に静かに染み込んでいく。


「失敗しても構わない。」


「何度転んでも構わない。」


「大切なのは、そこで立ち止まらないことだ。」


「昨日の自分より、一歩だけ前へ進む。」


「それを積み重ねた者だけが、本当の意味で強い魔法使いになれる。」


レオナルドは穏やかに微笑んだ。


「私は、君たち全員がその一歩を踏み出せると信じている。」


教室は静寂に包まれていた。


その静けさは、退屈だからではない。


誰もが、その言葉を胸の中で噛みしめていたからだ。


クロエもまた、ノートへ丁寧に書き写す。


魔法は競うものではない。


その一文は、不思議なほど心に残った。


「フィーニス魔法学園は、君たちが思っているより、ずっと広い。」


その言葉に、生徒たちの目が輝く。


「午後から、学園の施設を案内する。」


「大図書館。」


「薬草園。」


「温室。」


「魔法生物飼育舎。」


生徒たちの目が輝く。


レオナルドは少しだけ声を落とした。


「ただし、案内されていない場所へ勝手に入らないこと。」


「学園には、生徒の立ち入りを認めていない区域もある。」


教室がざわつく。


「何があるんですか?」


一人の生徒が尋ねた。


レオナルドは短く答える。


「安全のためだ。」


それ以上は語らなかった。

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