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田舎のヒキニートおじさん、化物になってものんびり暮らしたい 〜裏山で巻き込まれて烏と狐に目をつけられた〜  作者: イシクラゲ


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龍の準備






 早朝まで続いた話し合いが


 


 ようやく終わった。


 


 重い空気のまま。


 


 誰も軽口を叩かないまま。


 


 その場は解散となる。


 


 龍の屋敷の一室。


 


 そこで


 


 少し仮眠を取ることにした。


 


 体は疲れている。


 


 だが、頭は冴えている。


 


 妙な感覚だった。


 


 気づけば、眠っていた。


 


 目を覚ます。


 


 光の加減で分かる。


 


 昼過ぎだ。


 


 体を起こす。


 


 ゆっくりと呼吸を整える。


 


 意識を現実に戻す。


 


「……行くか」


 


 そう呟いて、龍の部屋へ向かう。


 


 扉を開ける。


 


 中には、龍。


 


 そして、天狗と九尾がいた。


 


 すでに揃っている。


 


 龍がこちらを見る。


 


 静かに。


 


 じっと。


 


「……決断は変わらぬか」


 


 低い声で問われる。


 


 迷いはない。


 


「変わりません」


 


「……俺が行きます」


 


 はっきりと言う。


 


 龍は、わずかに目を細める。


 


 何かを測るように。


 


 だが、すぐに頷く。


 


「……そうか」


 


「ならば――」


 


 龍が言う。


 


「前に渡したナイフを出せ」


 


 言われるままに取り出す。


 


 手渡す。


 


 次の瞬間。


 


 龍が、自分の腕を引きちぎった。


 

 

「……は?」


 


 思考が止まる。


 


 腕が、床に落ちる。


 


 だが


 


 血は、ほとんど出ない。


 


 すぐに、龍の身体が再生する。


 


 新しい腕が


 


 何事もなかったかのように生える。


 


「……」


 


 引く。


 


 普通に引く。


 


「何を……」


 


 言葉が出ない。


 


 龍は気にしない。


 


 そのまま


 


 ナイフと、ちぎった腕を重ねる。


 


 手をかざす。


 


 力が動く。


 


 錬金術。


 


 目の前で、形が変わる。


 


 ナイフが


 


 歪む。


 


 伸びる。


 


 変質する。


 


 やがて、一振りの武器になる。


 


 剣鉈。


 


 重く。


 


 厚く。


 


 異様な存在感を放っている。


 


 龍がそれを持ち上げる。


 


 こちらへ差し出す。


 


「……これを使え」


 


「お主には、こちらの方が合う」


 


 受け取る。


 


 ずしりとした重み。


 


 ただの武器ではない。


 


 明らかに、何かが違う。


 


「……ありがとうございます」


 


 さっきまでドン引きしていたが


 


 それでも、礼は言う。


 


 龍が近づく。


 


 手を、頭に置く。


 


「……?」


 


 次の瞬間。


 


 何かが、流れ込んでくる。


 


「……ッ!!」


 


 頭を押さえる。


 


 膝をつく。


 


 痛い。


 


 いや、違う。


 


 詰め込まれる。


 


 情報。


 


 知識。


 


 理解。


 


 処理しきれない。


 


 脳が悲鳴を上げる。


 


 そのまま、うずくまる。


 


 動けない。


 


 一時間ほどたち。


 


 感覚が曖昧になる。


 


 やがて、痛みが引く。


 


 ゆっくりと立ち上がる。


 


 呼吸を整える。


 


 龍が言う。


 


「……分かるか」


 


 理解できる。


 


 知識が、頭の中にある。


 


 自分のものではない。


 


 だが、使える。


 


「……貴方の知識、ですよね」


 


 そう答える。


 


 龍が頷く。


 


「役に立つ時が来る」


 


「……」


 


 少しだけ不満がある。


 


「……やるなら先に言ってください」


 


 思わず言う。


 


 だが、続ける。


 


「……ありがとうございます」


 


「助かります」


 


 龍は何も言わない。


 


 ただ、わずかに笑ったように見えた。


 


 そのまま、龍は外へ出る。


 


 庭に出る。


 


 タブレットを取り出す。


 


 見てる、アニメだ。


 


 静かに。


 


 集中して。


 


 十分ほどして。


 


 次の瞬間。


 


 龍の姿が、本来の姿へと変わる。


 


 巨大な龍。


 


 空気が変わる。


 


 重くなる。


 


 そのまま、土魔法を使う。


 


 地面が動く。


 


 形が作られる。


 


 巨大な壺。


 


 異常な大きさだ。


 


 そして、龍の目から。


 


 涙が落ちる。


 


 一滴。


 


 壺に入る


 


 次から次に涙が落ちる。


 


「……」


 


 スケールがおかしい。


 


 そのまま


 


 壺いっぱいになるまで流す。


 


 止まる。


 


 龍が鞄を出し。


 


 壺を持ち上げる。


 


 そのまま、中へ入れる。


 


 問題なく収まる。


 


 鞄を渡される。


 


「使え」


 


「これは天狗のものとは違う」


 


「中の時間は止まっている」


 


 少しだけ、自慢げだ。


 


「……凄いですね」


 


 大げさに言っておく。


 


 龍は満足そうだ。


 


 さらに、自分の鱗を剥ぐ。


 


 爪を剥ぐ。


 


 躊躇がない。


 


 それを、こちらに渡す。




「そのを埋めて」


 


「祠と御神体を設置しろ」


 


 鱗と爪。


 


 さらに、御札を渡される。


 


「これを貼れば結界が張れる」


 


 受け取る。


 


 祠と御神体も受けとる。




 すべて。


 


 重みがある。


 


 責任もある。


 


「……」


 


 準備は整った。


 


 全部、鞄の中に収める。


 


 龍を見る。


 


「……行ってきます」


 


 そう言う。


 


 龍が、静かに言う。


 


「……頼む」


 


「ありがとう」

 


 天狗が言う。


 


「気をつけろよ」


 


「後は任せておけ」


 


 九尾が言う。


 


「頑張りなよ」


 


 軽い。


 


 だが、信じている。


 


 おじさんは


 


 ただ、頷く。


 


 次の瞬間。


 


 空間移動。


 


 その場から消える。


 


 向かう先は、あの洞窟。


 


 黒の底へ。






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