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田舎のヒキニートおじさん、化物になってものんびり暮らしたい 〜裏山で巻き込まれて烏と狐に目をつけられた〜  作者: イシクラゲ


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黒い渦






 祠の前。


 


 天狗と九尾を前に


 


「……行ってきます」


 


 そう告げる。


 


 二人は軽くうなずくだけだった。


 


 止めない。


 


 止める気もない。


 


 その場で、コウモリに変化する。


 


 視界が変わる。


 


 音が広がる。


 


 気配を、完全に遮断する。


 


 存在を薄くする。


 


 消す。


 


 千里眼で、洞窟の入口を捉える。


 


 位置は正確に。


 


 ズレは許されない。


 


 空間移動。


 


 一気に距離を詰める。


 


 勢いをつけたまま


 


 そのまま、洞窟内部へ突入する。


 


 暗い。


 


 いや、違う。


 


 黒い。


 


 視界が、塗り潰される。


 


 黒い靄。


 


 濃い。


 


 重い。


 


 前が見えない。


 


 一メートル先すら分からない。


 


 そのまま、飛ぶ。


 


 ゆっくり。


 


 慎重に。


 


 気配は消したまま。


 


 十メートルほど進む。


 


 そこで、何かにがある。


 


 視る。


 


 触れて、確かめる。


 


 石。


 


 崩れている。


 


 壊れている。


 


 形を成していない。


 


「……祠か?」


 


 判断がつかない。


 


 祠の残骸なのか。


 


 御神体だったものなのか。


 


 ただ、分かることがある。


 


 力が、ない。


 


 龍の鱗と龍の爪。


 


 あのとき感じた力。


 


 それが、感じられない。


 


 だが、壊れた石に。


 


 そこから


 


 微かに、感じる。


 


 龍の気配。


 


 ほんの、わずかだ。


 


「……これか」


 


 その石を手に取る。


 


 そのまま、収納する。


 


 周囲を見る。


 


 崩れた残骸の向こう。


 


 さらに奥。


 


 何かがある。


 


 黒い靄。


 


 だが、違う。


 


 集まっている。


 


 渦だ。


 


 黒い塊が


 


 ゆっくりと、回っている。


 


「……」


 


 嫌な感じがする。


 


 直感だ。


 


 理屈ではない。


 


 試す、足元の残骸。


 


 石を一つ持つ。


 


 そのまま、渦に向かって投げる。


 


 吸い込まれるように、入っていく。


 


 音が、しない。


 


「……」


 


 何も起きない。


 


 地面に落ちる音もない。


 


 ぶつかる音もない。


 


 底がないのか。


 


 それとも


 


 別の場所につながっているのか。


 


 分からない。


 


 だが、確実に言える。


 


 危険だ。


 


「……帰るか」


 


 判断は早い。


 


 ここで無理をする必要はない。


 


 情報は取った。


 


 それでいい。


 


 そのまま、空間移動。


 


 祠へ戻る。


 


 変化を解く。


 


 元に戻り。


 


 天狗と九尾を見る。


 


「……中、やばいです」


 


 短く言う。


 


 そのまま、状況を説明する。


 


 黒い靄。


 


 視界ゼロに近い。


 


 壊れた祠の残骸。


 


 龍の力が消えていること。


 


 そして、黒い渦。


 


 音がしない。


 


 底が分からない。


 


 二人は黙って聞く。


 


 そこへ、カラスが戻ってくる。


 


 羽音。


 


 そのまま降りる。


 


「……情報だ」


 


 一言。


 


 話を聞く。


 


 術者たち、車を追ったらしい。


 


 カラスが調べたいたのか。


 


 大きな街の神社。


 


 そこの人間。


 


 そこが拠点。


 


「……なるほど」




「……人形を使っている、元陰陽師だろう」




「……あの場所で何がしたいのか、わからん」


 


 だが、確定した。


 


 持ち帰った石を取り出す。


 


 天狗と九尾に渡す。


 


 二人が触れる。


 


 少しだけ、表情が変わる。


 


「……微かに残っているな」


 


「龍の力だ」


 


 やはりそうだ。


 


「……龍に報告だな」


 


 天狗が言う。


 


 九尾もうなずく。


 


 龍の屋敷へ、三人で移動する。


 


 空間が変わり、空気が違う。


 


 静かだ。


 


 龍の前へ。


 


 挨拶は省く。


 


 すぐに、状況を説明する。


 


 洞窟。


 


 黒い靄。


 


 渦。


 


 見えない内部。


 


 石の欠片を渡す。


 


 龍が手に取る。


 


 その瞬間。


 


「……ここだ」


 


 即答だった。


 


 迷いがない。


 


 確信している。


 


「間違いない」


 


 そう言う。


 


 だが、続ける。


 


「……鱗と爪の力が、感知できん」


 


 完全に、消えている。


 


 おじさんは、思い出す。


 


 龍から聞いた話。


 


 過去。


 


 千年前。


 


「……同じ状況じゃないですか?」


 


 そう言う。


 


 龍が、ゆっくりとうなずく。


 


「……おそらくな」


 


 静かになる。


 


 空気が重くなる。


 


 そのまま、話し合いが始まる。


 


 対策。


 


 状況。


 


 過去との違い。


 


 術者の存在。


 


 全部整理する。


 


 時間が過ぎる。


 


 気づけば


 


 外が明るくなり始めていた。


 


 早朝。


 


 話は終わった。






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