報告と予知
朝晩はまだ冷え込む。
日中は、少しずつ暖かくなってきた。
季節が、確実に進んでいる。
「……もうすぐ春か」
小さく呟く。
畑に向かい、去年植えた
にんにくと玉ねぎの様子を見に来た。
「……いいな」
にんにくは、しっかり伸びている。
力強い。
玉ねぎも、順調だ。
玉が膨らんできている。
土の中で、確実に育っている。
「……早ければ四月中旬か」
収穫の目処を立てる。
問題ない。
一度、家に戻る。
探索の準備をする。
装備を整える、呼吸を整える。
そのまま、現地へ向かう。
まずは、完全に気配を消す。
それから移動する。
周囲を確認、違和感はない。
気配もない、問題なし。
今日の区画の、探索を進める。
いつも通り、変わらない。
感覚を広げる。
探る。
動く。
この区画は、何もない。
そのまま千里眼で、他の場所を確認する。
少し広めに式神がいるかどうかみる。
見つけた。
離れた場所、紙の人形。
動いている。
「……やっぱりか」
同じだ。
一定の範囲を順番に探索している。
自分と同じで何か探してるな。
ふと思う。
「……これ」
「俺、行かなくてもいいのでは?」
式神が動いている。
術者がいる。
もし、同じ祠を探しているなら
こいつらを追えばいい。
寒い中、動き回る必要はない。
家で、ソファーに座りながら。
千里眼で監視する。
数時間おきでいい。
それで十分だ。
「……それでいいな」
決める。
そのまま帰宅して、温泉に入る。
体を温める。
湯に浸かると、力が抜ける。
そのまま、予知を使う。
集中する、映像が浮かぶ。
複数の術者。
そして洞窟。
中までは見えない。
そこまでだ。
「……」
目を開ける。
断片的だが、十分だ。
風呂から上がる。
その日は、ゆっくり過ごす。
無理はしない。
翌日。
薪ストーブの前で、火を眺める。
ソファーに座り、珈琲を飲む。
そのまま、洞窟を探し始める。
まず、衛星画像のマップを開く。
周辺を確認していく。
だが、入口は見つからない。
当然か。
千里眼に切り替える。
洞窟を探す。
同時に、術者と人形も監視する。
位置。
動き。
範囲。
全部把握する。
そして、見つける。
洞窟。
「……これだな」
予知で見た場所。
間違いない。
すぐに、天狗と九尾へメッセージを送る。
状況だけ報告。
式神との距離も確認する。
かなり近い。
だが、微妙な距離だ。
術者たちが気づくかどうか。
判断は難しい。
「……」
なら、撤退するまで待つ。
その方が安全だ。
「……夜に行くか」
決めた。
そのとき、メッセージが来る。
天狗と九尾から。
「祠に来い」
短い。
祠へ、すぐに向かう。
すでに、二人は来ていた。
軽く挨拶をする。
そのまま、状況を説明する。
もう一度、丁寧に。
タブレットを出して、マップを開く。
位置を指す。
「ここです」
九尾が、千里眼で確認する。
少し間を置く。
「……洞窟だな」
そう言う。
龍に聞いたが。
「龍の話では、洞窟ではなかった」
「……」
なるほど。
だが
「千年前だ」
天狗が言う。
「どう変わったか分からん」
それもそうだ。
納得する。
そのまま監視を続ける。
夕方、動きがあった。
術者たちが、洞窟を発見する。
数名が洞窟の前に立つ。
待機している。
中には入っていない。
慎重だ。
千里眼で中を見ようとする。
だが、見えない。
黒い靄で、遮断されている。
「……見えないな」
明らかに何かある。
夜になるが、帰る気配がない。
そのまま待機している。
「……失敗したな」
思う。
発見した時に、すぐ確認すべきだった。
そのとき、九尾が言う。
「コウモリになって行ってこい」
「……本気ですか」
思わず言う。
「相手は術者ですよ」
「見破られたらどうするんですか」
天狗が笑う。
「お主は気配を消すのが上手い」
「儂らでも見失うことがある」
そして、一言。
「流石ヒキニートだ」
「大丈夫だ」
「……」
複雑だ。
褒められているのか、分からない。
なぜか、信用できない。
だから、試すことにする。
子狐で。
完全に気配を消して、工場へ移動する。
そのまま、ねずみに変化する。
足音も消し、静かに近づく。
呼吸も消す、気配を消す。
子狐の真後ろへ。
そのまま、変化を解く。
「……」
後ろから声をかける。
子狐が、飛び上がる。
完全に驚いている。
「……」
これなら大丈夫だ。
確信する。
そのまま適当に会話する。
自然に、何もなかったように。
祠へ戻る。
天狗と九尾を見る。
「……行ってきます」
そう言う。
潜入を、決行する。




