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田舎のヒキニートおじさん、化物になってものんびり暮らしたい 〜裏山で巻き込まれて烏と狐に目をつけられた〜  作者: イシクラゲ


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帰る場所





 久しぶりに


 


 我が家に帰ってきた。


 


「……ただいま」


 


 小さく呟く。


 


 声が、少しだけかすれる。


 


 すぐに


 


 返事が返ってくる。


 


 カラスと子狐だ。


 


「おかえり」


 


 当たり前のように。


 


 いつもと同じ調子で。


 


 子狐が言う。


 


「どうでした?」


 


「主様たちとのバカンスは?」


 


「……」


 


 何を言っているのか分からない。


 


 いや、分かる。


 


 たぶん


 


 天狗と九尾が、そう言っていたのだろう。


 


 あいつらなら言う。


 


 間違いなく言う。


 


「……まあ」


 


 曖昧に返す。


 


 周りを見る。


 


 変わっていない。


 


 家も。


 


 空気も。


 


 匂いも。


 


 そのままだ。


 


 みんなも、変わっていない。


 


 カラスも、子狐も。


 


 秋田犬たちも。


 


 そのままだ。


 


 違うのは、自分だけだ。


 


「……」


 


 ふと


 


 胸の奥が、少しだけ揺れる。


 


 懐かしい。


 


 それだけなのに


 


 なぜか、込み上げるものがある。


 


 少しだけ、涙ぐむ。


 


「……楽しかった?」


 


 カラスが聞く。


 


 軽い調子で。


 


 いつも通りだ。


 


「……そこそこ楽しかった」


 


 正直に答える。


 


「……何もない島だった」


 


 それも本当だ。


 


「あー……」


 


「お土産もないな」


 


 思い出して言う。


 


 何も持ってきていない。


 


 余裕がなかった。


 


「……今日は何日だ?」


 


 ふと思い出して聞く。


 


 子狐がすぐに答える。


 


「13日」


 


「……」


 


 頭の中で計算する。


 


 ゆっくりと。


 


「……約13年か」


 


 ぽつりと呟く。


 


 静かになる。


 


 だが、誰も驚かない。


 


 もう、そういうものだと分かっている。


 


 秋田犬たちが寄ってくる。


 


 頭を撫でる。


 


 変わらない。


 


 温かい。


 


「……いいな」


 


 小さく言う。


 


 カラスと子狐と、少し話す。


 


 内容は、他愛もない。


 


 日常の話。


 


 それでいい。


 


 そのまま、温泉へ行く。


 


 湯に浸かる。


 


 体の奥に溜まっていたものが


 


 ゆっくりと抜けていく。


 


「……はぁ」


 


 長く息を吐く。


 


 やっと、終わった。


 


 そんな感覚がある。


 


 帰りに、実家へ寄る。


 


 顔を出す。


 


 少しだけ話す。


 


 それだけでいい。


 


 すこしだけ安心した。


 


 家に戻る。


 


 その日は、すぐに寝る。


 


 布団に入る。


 


 目を閉じる。


 


 思い出す。


 


 あの島のこと。


 


 修行。


 


 痛み。


 


 時間。


 


 龍との会話。


 


 龍の過去も、聞いた。


 


 異界に住み着いたこと。




 生まれ育った住処を出てきたこと。


 


 長い時間を生きること。


 


 変わっていくこと。


 


 残ること。


 


 失うこと。


 


 少しだけ、理解できた気がする。


 


 自分は、もう人ではない。


 


 それは、はっきりしている。


 


 なら、どう生きるか。


 


 これからだ。


 


 ゆっくり考えればいい。


 


 急ぐ必要はない。


 


 時間はある。


 


 そう思いながら、眠りについた。


 


 翌日。


 


 いつものように起きる。


 


 支度をする。


 


 現地に向かう。


 


 探索を始める。


 


 龍の祠。


 


 まだ見つかっていない。


 


 だが

 


 焦らない。


 


 前と同じだ。


 


 同じでいい。


 


 気づけば。


 


 いつもの一日が、戻っていた。






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