地獄の修行
稽古が始まった。
最初に教えられたのは
柔術。
槍術。
剣術。
呪詛。
解呪。
それだけでも十分すぎる。
だが、増えた。
天狗が言い出す。
「風もやるぞ」
風魔法(仮)。
さらに、龍が加わる。
「火、水、風はある」
「土がないな」
「なら教えてやる」
土魔法。
そして、生活も含まれる。
狩り、解体。
食料確保だ。
「……多くないか」
思う。
だが、誰も気にしていない。
最初は、優しかった。
本当に、優しかった。
基礎。
構え。
動き。
一つ一つ、丁寧に教えられる。
時間をかけて、理解させられる。
「……これならいけるか」
そう思った。
だが
それは、最初だけだった。
基礎が終わる。
次の段階に入る。
実戦。
そこからは、訓練ではなかった。
体罰だった。
いや
もしかすると、虐めかもしれない。
槍。
剣。
対人。
木刀など使わない。
真剣だ。
そのまま、戦わされる。
1対1。
容赦がない。
普通に。
斬られる。
刺される。
折られる。
死にかける。
何度も。
そのたびに、龍の涙を飲まされる。
回復する。
すぐに、再開。
「……は?」
なにも思う暇もない。
呪詛と解呪。
これもひどい。
自分に呪いをかける。
かけられる。
複数重ねる。
その状態で、解呪させられる。
できなければ、そのまま。
苦しむ。
「……」
地味にきつい。
いや、かなりきつい。
魔法。
これも同じだ。
ひたすら攻撃される。
火。
水。
風。
土。
避ける。
受ける。
防ぐ。
耐える。
「体で覚えろ」
「見て覚えろ」
「気合だ」
「根性だ」
「……昭和かよ」
思わず口に出る。
だが、誰も否定しない。
三人とも、鬼教官だった。
最後は出来るようになった。
時間の感覚が、消える。
何日経ったのか。
何ヶ月か。
何年か。
もう、分からない。
ただ、繰り返す。
壊される。
直す。
覚える。
また壊される。
そして、ある日。
三人が言い出す。
「この海、どこまで行けるんだ?」
唐突だった。
船を出す。
そのまま、出ていく。
帰ってこない。
一年。
二年。
三年。
「……」
放置された。
完全に。
それでも
やることは変わらない。
教わったことを
毎日繰り返す。
体に刻む。
動きにする。
無意識にする。
気づけば
それが当たり前になっていた。
ある日、突然に。
三人が帰ってきた。
それも、家のドアから。
「……」
思う。
(お前ら、海行ったんじゃないのか)
だが、言わない。
言っても無駄だ。
話を聞く。
五日ほど、龍の家で休んでいたらしい。
「……」
頭の中で変換する。
五日。
ここでは、五年。
「……五年もたってたのかよ」
言葉が出ない。
さらに
自分が寝ている間に戻ってきたらしい。
寝ていたから、そのまま出ていった。
「……」
(おい)
思う。
だが、言わない。
もう慣れた。
そのまま、誤魔化すように。
「どこまで成長したか見てやる」
と言い出す。
強制だ。
逃げられない。
やる。
戦う。
動く。
見せる。
結果。
「いいな」
「もう一人前だ」
軽い。
あまりにも軽い。
そして
「じゃ帰るか」
と言い出す。
「……」
思う。
(飽きただけだろ)
だが、言わない。
この生活が終わる。
それでいい。
何年も付き合ってくれた。
それだけでありがたい。
「帰りましょう」
先に言う。
それに乗る形で、移動する。
龍の部屋に戻り。
龍がいる。
こちらを見る。
「ご苦労」
「よくやったな」
そう言う。
軽い。
だが
ちゃんと見ている。
そんな感じがする。
「記念だ」
そう言って、大型のナイフを出してくる。
渡され。
素直に受け取る。
重みがある。
「昔、足に刺さっていたやつだ」
さらっと言う。
「……」
何も言えない。
だが、いいものだと分かる。
力がある。
ただの武器ではない。
「持っていけ」
そう言われる。
「……ありがとうございます」
素直に言う。
少しだけ、嬉しい。
「……もう帰りたいです」
正直に言う。
龍も、天狗も、九尾も。
うなずく。
「そうだな」
あっさりだ。
そのまま、解散となった。
気がつけば。
自分の家に戻っていた。
静かな空気。
いつもの場所。
でも。
もう、前とは違うか。




