表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎のヒキニートおじさん、化物になってものんびり暮らしたい 〜裏山で巻き込まれて烏と狐に目をつけられた〜  作者: イシクラゲ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/59

修行の島





 目の前に、扉がある。


 


 普通の扉だ。


 


 どこにでもありそうな。


 


 木製で、取っ手がついている。


 


 何の変哲もない。


 


 その前に、四人で立っている。


 


 龍。


 


 天狗。


 


 九尾。


 


 そして、俺。


 


 天狗が扉を見る。


 


「……普通だな」


 


 ぽつりと言う。


 


 九尾も続く。


 


「……ああ、普通だな」


 


「……」


 


 これが修業部屋の扉なのか。


 


 どう見ても普通だ。


 


 だが


 


 その“普通”が、逆に不気味だ。


 


 龍が、扉に手をかける。


 


 そのまま開ける。


 


 何のためらいもない。


 


 中へ入る。


 


 天狗と九尾も、当たり前のようについていく。


 


 仕方なく、後を追う。


 


 中に入る。


 


「……」


 


 思わず、周囲を見る。


 


 そこにあったのは、普通の空間だった。


 


 リビング、キッチン。


 


 家具もある。


 


 生活感すらある。


 


 窓もある。


 


 外を見る。


 


 海が見える。


 


 青く、広い。


 


 波も動いている。


 


「……」


 


 違和感がない。


 


 あまりにも普通すぎる。


 


「……ここじゃないな」


 


 そう思う。


 


 ここはまだ、修行部屋ではない。


 


 そう判断する。


 


 龍がそのまま外へ出る。


 


 何も言わない。


 


 ただ出る。


 


 天狗と九尾も続く。


 


 自分も外へ出る。


 


 外に出た瞬間、空気が変わる。


 


 視界が開ける。


 


 見渡す。

 


 海だ。


 


 360度、全部。


 


 どこを見ても、海。


 


 水平線が、ぐるりと囲んでいる。


 


「……」


 


 理解する。


 


 ここは、島だ。


 


 小さな島。


 


 その中心に、さっきの家があるだけ。


 


 それ以外は、何もない。


 


 いや。


 


 よく見ると、いる。


 


 鳥。


 


 兎。


 


 遠くには、豚もいる。


 


 普通に生き物がいる。


 


 風が吹く。


 


 潮の匂いがする。


 


 波の音が聞こえる。


 


「……」


 


 現実だな、完全に。


 


 天狗が聞く。


 


「修行部屋はどこだ?」


 


 九尾も周りを見ている。


 


 龍が答える。


 


「ここだ」


 


「……まじか」


 


 思わず口に出る。


 


 頭の中にあったイメージ。


 


 真っ白な空間。


 


 何もない場所。


 


 某漫画の修行部屋。


 


 そういうものを想像していた。


 


 だが、違う。


 


 まったく違う。


 


 それ以上だ。


 


 普通に生き物がいる。


 


 自然がある。


 


 風が吹く。


 


 時間が流れている。


 


「……これは凄いですね」


 


 素直に言う。


 


 龍が、少しだけ得意げに笑う。


 


「そうだろう」


 


 嬉しそうだ。


 


 天狗も九尾も、感心している。


 


 龍が言う。


 


「好きなだけ修行すればよい」


 


 軽い言い方だ。


 


 だが、意味は重い。


 


 天狗が言う。


 


「じゃあ十年ぐらいやるか」


 


 九尾も


 


「いいな、それぐらいだな」


 


 乗る。


 


 軽い。


 


 あまりにも軽い。


 


「……いやいや」


 


 思わず口に出る。


 


「すぐ帰りますよ」


 


「年寄りになりますよ」


 


 当然の反応だ。


 


 龍がこちらを見る。


 


 そして、何気なく言う。


 


「お主」


 


「さっき鑑定したが」


 


「長寿種族になっておるぞ」


 


「……は?」


 


 理解が追いつかない。


 


 龍が続ける。


 


「竜族やエルフ、ドワーフと同じだ」


 


「……」


 


 無言になる。


 


 ゆっくりと


 


 天狗と九尾を見る。


 


 二人は、目をそらす。


 


「……」


 


「……まじですか」


 


 やっと言葉が出る。


 


「……なんか」


 


「化物になったとは思ってましたけど」


 


「……人間、やめてたんですね」


 


 天狗が言う。


 


「いやいや」


 


「儂らも知らなんだ」


 


 九尾も続く。


 


「なったもんはしょうがないだろ」


 


「どうしようもない」


 


 軽い。


 


 あまりにも軽い。


 


 天狗もうなずく。


 


「そうだな」


 


 龍が、肩に手を置く。


 


「どんまい」


 


「……」


 


 少しだけ


 


 イラッとする。


 


 だが、何も言わない。


 


 言っても無駄だ。


 


 そのまま、流れが変わる。


 


 天狗と九尾が、わざとらしく声を上げる。


 


「さー修行だー」


 


「やるぞー」


 


 話を流している。


 


 有耶無耶にしている。


 


「……」


 


 逃げ道はない。


 


 そのまま、強制的に。


 


 修行に突入した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ