第80話 レティシアと恋の病は治せない
心理的な問題が原因の不調には特効薬はないと言われている。特に今回の私のように特定の感情の揺らぎによるものが原因ならばなおさら。
いやいや、私の場合恋だのなんだのということではなく、単純に彼に興味があるわけだ。間違ってはいけない。
体のほうは一日寝ていれば回復するだろうと思っていたのだけれど、どうしてかなかなか治らない。
もう熱はほとんどない。体が怠くてたまらない。こんなに本格的に病気になったのは、あの時も雨に濡れたからだったか?いや、あのときは雪に潜ったんだった。
「これは、相当酷使していたか」
CHAPTER1ではたまに人外していたからな、仕方ない。幸い私には急ぎですることなんてないからね、ゆっくり治せばいいか。……ご飯は、究極の食材であるワインで済ませておけばいいだろう。
眠っていたようだ。
空腹感と、生理現象のあれな感覚で目覚めた私は怠い体を何とか動かして上半身を起こす。
「あれ?」
のどを潤そうと枕元のテーブルに置いていた酒瓶に手を伸ばすがどこにもない。飲み干した?それならその辺りに転がっているはずだ。
思い出すのは疲れるから、先にトイレに行こう……。
少しも修復されていない身体は重くて、ベッド、ドア、廊下、階段……トイレに行くのにも凄い決断が必要だ。手すりにつかまって、一歩ずつ階段を下りていくと、キッチンのほうで人の話し声が聞こえる。
トイレより確認が先だろう。
階段を下った先の柱からキッチンをのぞき込むと、怪しいには違いないが、いつもの子たちがいた。
「……何やってんの」
「レティシア!起きたんだ」
「うん、ちょっと、トイレ……」
「よいしょ」
リビングのワインセラーから適当な一本を抜き出してソファに座る。いい天気だ。
ワインの栓を抜く力はないけれど、我が家には自動コルク抜き器があるので問題ない。お行儀は悪いが、ラッパ飲みだ。震える両手で瓶を支え、三分の一くらいを一気に飲む。
あ~生き返る。
「レティシアちゃ~ん、何やってるの?」
やってくるとは思っていたが、私には完全な言い訳がある。論破できる?
「ご飯」
「バカなのかな~?」
「だって、おなかは空くけど。作れるほど体は動かないから。お酒ってカロリー高いのよ?特に赤ワインにはいろんな栄養があってね、とにかく良いものなの」
「没収します」
「待って、治ったらちゃんとするから、餓死しちゃうから!」
酷い子達だ、わかったら返せ。
「何のために私たちが来てると思ってるのよ」
「看病のつもりでしょ?ありがたいけど、期待はしていない。それに私は風邪を引いている訳じゃないし」
「だろうね」
ちょっとヒドい言い方だったかな、あれ?
「私達、昨日のお昼に来たのよ?」
「せっかく来たから看病しようと思ってたのよ。でも起きないし。まあ熱はなかったから、様子見してたの」
気付かなかったな。
「で、どういった状態なの?病院には行った?」
「身体が動かない、動かしにくいだけよ。去年はだいぶおかしかったから、気力が尽きたときに身体もガタが来たんだろうね。3日も休めば治るよ、きっと」
ホントはちょっと怖い。動けなくなってくる病気って昔あったはずだ。
「レティシア、あなた私達に連絡してから何日経ったと思ってる?」
「何回ご飯食べた?あ、ワインか。部屋には瓶が一本転がったてたけど」
「それって、アレ?また日の感覚おかしくなってる?」
「もう5日よ。連絡くれてから」
「だからおかしいと思って見に来たの」
「さっきも言ったけど、病気っぽさはなかったから。寝るだけ寝かせておいたの」
「ワイン一本で5日。そりゃ体動かないよ。エネルギー不足だよ」
馬鹿か。普通それだけ寝たら、逆ににしんどくなるはずなのに。
「落ち込まないで!疲れてたのは本当だと思う。去年はホント色々あったからね。最近もだけど……」
「はずかしい……」
ああ、顔も紙も汗っぽくて薄汚れている。……臭うか?
「流石に少し汗っぽいね」
そこはスルーしてよ。
「食べたら、シャワー行く」
「「いいえ、私達が入れてあげるわ!」」
ほら、こうなると思ったよ!
「や、やめて……」
「隅々まできれいに洗ってあげる」
「安心しなさい。私たちは洗いっこのプロなんだから!」
それは犯罪だ!
「やめて~!」




