レティシアとあっぷあっぷ(17/20)
友情は大切だけど、炎天下に何時間も列に並ばせるのは勘弁してほしい。
だから私は、自分のペースで動くことができる場所に向かう。
「大きな池または小振りの湖」の東には綺麗な三角形の山がそびえている。その名も「サンカク山」。この星の開拓者達は名づけが非常にうまい。
サンカク山の一番高いところは1000メートルを超える相当立派な山だけど、湖の近くの小ピークは数百メートルと、なかなか手ごろなハイキングコースだ。と言ってマリーを誘ったらもう私とは登らないと言われたのは去年の話。
ほとんど汗もかくことなく、山道を登っていくと小ピークの山頂にでる。少し広くなっている所に、展望広場や売店が作られていて、良い休憩所になっている。展望広場からは町の全貌がよく見える。街の中心を示す軌道エレベーター駅。その向こうに海。海から山まで、やっぱりけっこう凹凸のある街の地形がよく分かる。徘徊と言いながら、あんまり歩いてないなあ。そしてここからは全貌は見えないけど、南には私の葡萄畑。どちらにせよ一回帰らないといけないな。
一息付いたところで、予定通り売店でミルクアイスを購入した。
汗をかき、ここまで頑張って登ってきた後に食べるアイスは格別だろうけど、広場で風に当たってすっかり汗も疲れも引いてしまったので、残念ながら感動は味わえなかった。
「しまったな……着いてすぐ食べとけば良かった」
真のグルメって、こういうプライスレスな部分を味わうものよ。
おいしいけど物足りない。一口食べた私は、どうしたものかとスプーン話くわえたまま外の景色を眺める。
「むむむ……ん?」
あれは、アカリ氏?水を飲む姿もステキ。
でも完全に想定外だ。緊張してきちゃった。
「レティシアさん、こんにちは。こんな所で会うなんて、珍しいね。というか僕の方が珍しいのかな?」
やっぱり来るよね!いかん落ち着けレティシア。
私は座っていた長椅子上から一歩分飛び退いてしまう。
「え?」
そりゃ、そうよね。
アカリさんはもう一歩近付く。私はその一歩分飛び退く。
周りから見ると、わたしがナンパ青年から必死で逃げてるようにしか見えないわ。
「……じゃあまたね。ごめんね食事の邪魔して」
アカリさんが行ってしまう!
「違うの!そうじゃなくて!違うの……ちょっと汗かいてて、恥ずかしくて」
私たちが知り合いだと解って、店内の雰囲気が変わったみたいだ。
「じゃあ外で待ってるよ」
ほっとしたようなアカリさんが店から出ようとすると、他のお客さんになんか絡まれてる。
(違うでしょ~!そこは君、全然気にならないよとか、君からは良い香りしかしないとか、実際この子良い香りしかしないし!)
何?ずっと観察されてた?で、なんか変なこと吹き込まれてない?
ちょっとこっちに来なさい!もう恥ずかしい!
「もう、アカリさん恥ずかしい!」
「僕が悪いのか?」
「違うけど~!」
けどこれで良い。隣にいてくれれば、お話ししても変に注目されることもないだろうし。
「すまないね、君に逢えたのが嬉しくて、つい無遠慮に近づいてしまった」
っと今、その言葉はいらない……。
「レティシアさん起きてるかい?」
どうやら私は、背負われてしまっているようだ。
誰だろう?暖かい背中。
うん、私とんでもないことをしている。
アカリさんの確殺セリフで気を失って、アカリさんに背負われて、サンカク山を下山中。
途中温かい何かがあったので、無意識にしがみついて……。
今、とんでもなく密着している!
というか抱き着いている!
起きていないふりをして、どうやら気づかれずに麓まで降りてこれた。私の演技力も捨てたもんじゃない。
「ゴメン、急にお願いすることになって」
アカリさんは誰かとお話ししているみたい。
「良いですよ。レティシアがご迷惑をかけ……続けていますね。こちらこそすいません」
マリーだ!ヤベェ!
「ああ……迷惑ではないんだけど、ちょっと困るね」
「結構正直なんですね。まあこの子結構良いものを持っていますし」
そういうことをいうんじゃない!と思っていると、くるりと体を回されて、ベンチに座らされた。
「では、すいません。レティシアさんをお願いします」
「ええ」
この流れは、帰っちゃうやつだ。
「起きてたらこの後お昼でもと思ってたけど、仕方ない。まぁ逢えただけ嬉しかったよ。じゃあね」
「ほら、彼行っちゃったよ。目、開けなよ」
「……知らない。今気が付いたから何のことか分からない」
「ほらほら、また顔真っ赤」
「う~アカリさんはアホだ……」
「さ、行くよ。何があったか聞かせてもらうよ。と言うか、あんたがアホよ」




