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レティシアと行列のできる店(16/20)

 我が親友であるマリーは、……親友だよね?

 マリーは流行に敏感で、実行者である。誉めてるのよ?何で睨むの?知ってる?あなたに睨まれるととても怖いんだよ?親友だから、このくそ暑い中一緒に並んでるんじゃない!

「レティシア、言葉が荒いんじゃない?」

「考えるのだけは自由でいたいわ」


 徘徊グルメ美人である私は当然この店のことは知っている。知っているだけで、今までは選択肢に入っていなかった。避けていたと言っても良い。店のあり方が私のグルメ道の流儀とはかけ離れているからだ。

 ああ、悪徳なお店というわけではないよ。レビューも実際すごく良いし。この店なりの考えがあって、それを実践しているにすぎない。私の求道が狭すぎるのかもしれない。

 簡単に言うと、閉店時間がすごく早いのだ。

 彼らの本業はパンを焼くことであり、それを他の店に卸すことであり。飲食店として客に提供しているのは、店側の好意だ。個数ではなく時間で制限をかけているのなんて、好意以外の何ものでもないのだから。

 だけどわざわざこんな暑い日に、並ばなくてもいいんじゃない?待たずに食べることが出来る所でいいじゃない?店の卸先を調べてそこに行けば、ちょっと高くなるけど、同じパンを食べることが出来るよ。割高さは、この消耗する待ち時間分のコストくらいにはなると思う。

 そんなにここのパンがここで食べたいのなら……

「「レプリケーターで良いじゃない?」」

 私の心からはみ出た声と誰かの声が被った。

 私たちは目を合わせた。

「「あ。」」

 そして同時にとなりの人から叩かれた。

「あんた、ここまで来て何言ってるの?」

 連れが周りの人に謝りまくってる。

「う~皆おかしいよ。こんなに並んで、店からはいい匂いばっかりしててさ……生殺しだよ。マリーは怖いし……」

 もうホント嫌だ。自分の弱さに涙が出てくるよ。

「レティシア、もう少し待とう。皆耐えてるの。あなただけ我が侭言ってはダメよ」

「私我が侭なんて言ってない!別に私を優先してとかそんなのじゃない!こんなに疲れて待っても、パンは二個までしか買えないなんて、あんまりだ」

「レティシア。無理やりあなたを連れてきた私が悪かったわ。でも、私のためにもう少し頑張ってほしい」

「うん……」

 マリーが優しく私の涙をハンカチで拭いてくれる。

「ほら、あの友達に滅茶苦茶怒られている人を見なさい、面白いわよ」

 マリーが指さす先。私たちのだいぶ前に並んでる人、さっき声が合った人。確かに同行者からまだ色々言われているみたい。

「アカリさん……」

 私が泣きやんだのを斜めに見て、安心した笑顔をくれる。自分が怒られてるのに優しいんだから。

 ほら、お友達がアカリさんの視線の先に私がいるのに気が付いた。今度は別のことで争いだした。迷惑な人たちだ。

「そうね、ああなるのは、確かにイヤね」

 私も騒がせた事を周囲にわびる。気にしてないよと、許してくれた。

 

 頑張って並んで、手に入れた二個のパン。バターとジャムのトッピングが無料だったけど、私はそのままいただくことにした。

 あの人たち、パンを手に入れてもまた言い争ってる。たぶんアカリさんは私と同じ感想を持って、それを口にしてしまったのだろう。

 できたて。単なる小麦を焼いたものでは出せない、あまい香り。割ったときの粘りも、口の中で解けていく様子も、及第点は遙かに越える。でも……

「普通のパンだね……」

 あ、しまった。

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