レティシアと宇宙の人(10/20)
最近は、起きているときの半分は彼のことを考えているんじゃないだろうか。
正しい純愛のため気持ちの整理が必要だ。
いやいや、愛とか。そういうことではないはず。
こう言うときは、レティシア式ラブコメチャートを使用するとわかりやすい。
ラブコメか。私もいい歳なんだからあんまりコメ側に振ってる余裕はない。わかるね?だからこれはどんな結果が出ても参考だ。ちなみにこのチャートはレティシアさんが八歳の頃に作ったものだ。
Lv1『その人のことは好ましいですか?』
あったり前だ、聞かないでよイエス!
Lv2『その人と今でも逢いたいですか』
バカなチャートだ、イエス!
Lv3『その人とは会話が続きますか?』
イエスイエス。
Lv4『その人と話せなければ泣いちゃいますか?』
あ……イエスだな。
Lv5『その人が誘ってくれれば、お出かけしたいですか』
もちろんだよ。
Lvfinal『その人が誘ってくれれば、エッち……』
ギャー!
なんだこのチャートは!飛躍しすぎだ!
十数年前のおませな私に大人な私がやっつけられた事になる。私は周りの通行の邪魔にならないように、道の端に座り込んで悶えた。
「レティシア式ラブコメチャート、なんて恐ろしい……」
全く参考にはならなかったけど、方向性は理解した。次の段階はあれね、好意を自覚する。コレが好きなのかどうか、わかんないもの。
立ち上がろうと、視線を上げるとアカリさんの顔があった。昼間っから幻を見ちゃうなんて、これ私、あの人のこと好きなんじゃない?
「レティシアさん、大丈夫?」
「本物?」
「だと自分では思ってるよ。……顔が赤いな、暑さにやられた?」
八歳の自分にやられたなんて言っても理解してもらえまい。
「……僕と逢って、照れてる?」
「ち、違います!」
「そんなに力強く即答されるとは……」
「そうじゃなくて、アカリさんに照れてるんじゃなくて、ではなくてですね、逢えてとても嬉しいんですけど、前段階がありましてね……」
「まずは落ち着こう?お水しかないけど」
アカリさんは瓶入りの冷たい水をくれた。
「ありがと……」
「驚かせてゴメンね?落ち着いたかい?」
「うん」
これはあれだ、あとで恥ずかしくなって枕に埋もれるコース。
「乙女の色々は詮索したらダメらしいから、聞かないでおくとして、」
アカリさんのこの意地悪な笑顔。いったいどのあたりから見てたのかしら?どこからからかわれていた?……あまりそういうのは好きじゃないな。
「お、気を悪くしたらゴメン。こういうノリはちょっと早かったかな?距離感を間違えちゃったようだ」
「ちょっと拗ねただけです。アカリさんとはもっとお話しして、たまにはケンカして。美味しいごはんで仲直り。みたいな……何言ってるんだ私は」
「そうだね。とても、楽しくなるね。……ところでこんな所で何してるんだいって聞きたかったんだ」
たしかに、ここは繁華街ではない。ポツンとやってる穴場なカフェがあるわけでもない。景色は見どころが殆どないという点では珍しいのかな。ここは駐機場だ。
「宛てもなく徘徊……」
は嘘だ。ここに来ればあなたに逢える予感がしたんだと言ったらさすがに気味悪がられるだろう。
「じゃあ、僕の船でも見ていく?」
こっち、と私の答えも聞かずに駐機場の奥へと促される。だから手を繋いで引っ張って行ってくれて良いんだよって。
「これです」
見せられたのは、白くて角ばっていて、「カッコイイ」乗り物だった。
「アカリさんの宇宙船なんですか」
「そうだよ。小さいけれど、ちゃんと宇宙まで行けるんだ。ステーションと地上をこれで行き来しているんだ」
個人船持ち。ちょっと俺の車見てくれよ、みたいなノリで見せられても。小さいというけど普通の車よりかなり大きいですよね。自分の船を自慢する様子は少年みたいで可愛いのだけど。
「ステーションに付けてある船にもね、今度遊びにおいで。ハイペリオン号って言ってね、小さい……これと比べたら十分大きいけど、まあかなりいい宇宙船なんだよ!」
これはお金持ち確定だよ、アカリさん!価値観の違いって、カップルが分かれる要因ナンバーワンだよ、アカリさん!
これは、始まる前に終わる恋だよ、アカリさん……




