レティシアとスペシャルなイチゴ
「むー!むー!」
無限牢獄に顔を埋めて、バタバタもがいていた。
部屋中がな甘い香りに満ちている。
元凶たるイチゴをじろりと見る。
「むー!むー!」
ふう。
ひとしきり暴れると気が済んだ。
いわゆる一目惚れとかいうものではない。
ただ何というか、好ましい。
とりあえずば、この多すぎるイチゴをお裾分けしに行こう。追い出したまま会いに行かないのもアレだしね。
ちょうど二人は自由大学から帰る途中らしく、途中で会うことができた。途中の公園でベンチに並んで座る。
「あのあとは地獄だったよ」
仕方ないとは思うけどね。
「私も追い出したみたいになってたから、悪いなって」
「まあ、今回のことはレティシアはぜんぜん悪くないからね」
「マリーもキャラ付けが戻ったみたいで何よりだ」
マリーがイラッとした。
「まあまあ、これでお互い手打ちにしましょう」
保冷バッグからイチゴの小箱二つと、イチゴが入っタッパーを一つ取り出す。
「これはお家のみんなで食べてね。こっちは今、味見をしよう。今朝、叔父さんが送ってくれたのが届いて……」
伯父さんのプレゼントははたしてどっちだったのだろう?イチゴか、彼との出逢いか。
「レティシア?」
「また故障かしら?」
「誰が故障じゃ。これはね、アルティメット・ミラクル・アメイジング・シャイニング・ウルトラ・ギャラクシー・イチゴの頭文字をとって、「アマスギ」という品種だそうです。頂きましょう」
タッパーのイチゴにそれぞれ手を伸ばす。
「バカっぽい名前ね」
ソフィアはイチゴの先端をかじる。レティシアはイラッとした。
「アマスギって聞いたことあるわね……」
マリーは丁寧にヘタを取り、頭の方からかじった。レティシアはニッコリした。
「「「甘すぎ!」」」
こんなの食べたら、このシーズン他のイチゴは物足りなく感じるだろう。これは罪だ、罪なイチゴだ!
「あった。アマスギは地球のニホン州で収穫されるイチゴで、誰もが一口食べると甘すぎ、と叫ぶことからその名が付いた。ですって」
「アルティメット何とかって、なんなの?」
「そもそも地球産っておかしくない?」
「はは……伯父さん、結構無茶するから」
地球までは、どんなに急いでも一年以上かかる。それはだいたいの距離として共通の知識だ。このイチゴはどんなズルをして今ここにあるかなんて、考えるだけ無駄。叔父さんはたまにおかしいけど、自分では普通と思ってる。
怪しみながらもイチゴは順調に数を減らす。
「今年も行きたいね」
「ん?」
「春祭り。去年誘ってくれて、嬉しかったな……」
「そうだね」
「あの後は皆でレティシアの家に集まったね」
皆に可愛がってもらえて、つくづく私は幸せ者だと思う。
「……ホント、色々あり過ぎた。レティシアの主人公体質に振り回された一年だったよ」
そんな体質初めて聞いたよ。
「こんな話したら、最終回になっちゃうよ?物語だったらね」
また……。ソフィアも主人公並みに変なこと言うんだけどね。だから教えてやろう。
「最終回だよ。次回からは私とカレピッピのラブイチャ物語が始まるんだから。半端なキャラはここでサヨナラよ」
怖れるが良いわ。人を主人公扱いした脇役共!
「会わせてよ」
「え?」
「私達、消えることは仕方ないと思ってる。でも最後に、あんたのカレピッピに会わせて。挨拶だけさせてよ」
「そうね、くれぐれも無茶をしないようにってカレピッピに言っておかなきゃ」
「そうカレピッピにね」
ピッピ、ピッピとステレオで言うな!
「ま、まだ制作サイドから公開の許可がでてなくて……」
「残念」
「その分だと私が先にカレピッピ紹介しちゃいそうだな」
ソフィア、あなたの自爆ネタ、私好きよ。でもこれはあなたが傷つきすぎる。え?何?そのビミョーな照れは?マリー、ホントなの?
「あはは……」
「ど、どういうコト!?」




