レティシアと星団の配達人
朝、明るくなるのがだいぶ早くなった。
私が起きる頃にはもう、空全体が明るくなっている。
ベッドから出て一階のベランダへ。
朝の澄んだ空気を体中に行き渡らせると、プランターのハーブを千切る。目立つ奴は摘み取られるのよ~。葉っぱを洗い、水出しポットにぶち込む。買い置きのミネラルウォーターをポットに注ぎ、エキスが抽出される間に散歩の準備をしよう。
歯を磨いて顔を洗い、ジョギングウェアに着替える頃には、薄めのバーブエキス抽出水ができている。コップ一杯をゆっくり飲んで、さあお散歩だ。
コースは何時も同じ、川の土手まで。河川敷は枯れ草の中にきれいな緑の葉っぱが目立ち始めている。土手のチェリーブロッサムの木には花芽が出ていて、少し色づいている。
「春が来るねぇ」
家に戻ると、しっとり汗ばんでいるのでシャワーを浴びる。コレを見越して朝一番は我慢していたのよ。
朝食はシリアルにミルクと蜂蜜をたっぷりかけた。ヨーグルトにはレーズンをいっぱい。そしてさっきよりやや濃いハーブエキス抽出水、ハーブティーといえる濃さになったな、うんうん。
その他家事をやり終え、残りの午前をまったり過ごす。一日の中でも好きな時間だ。
リビングの大きな窓から外を見る。
猫の一匹もいないや。
視線を少し上にやると吹き抜けから空が大きく見えた。
今日もいい天気だ、こんな日はきっと素敵な出会いがあるに違いない。
運命の人か、運命のお店か。
そうなると外に出ないといけないんだけど、何だろうあと少し待った方が良いような気がしていた。奴らの「だらけウィルス」に感染したか?
それならそれでいいんだけどね~。
ん~。ムズムズする。
何かありそうな、動き出さなくちゃダメな気持ちと、まだ動かない方がいいという気持ちがぶつかり合って落ち着かない。
「……なんか飲もう」
キッチンへ行くためにはこの無限牢獄から脱出しなくてはならない。ハーブティーは苦くなってしまったかな?コーヒーで良いか。む、なかなか立てない……。
『buzz……』
玄関のブザーか。
ちょうど立ち上がれたので、玄関に向かう。
「はーい、どなたですか」
モニターをみる前に、端末をちらりと見るが、友人達からの連絡はない。
あの二人はしばらく謹慎?らしいのでレティシア宅にやってくる人なんていないことになる。となるともう宅配屋さんしか選択肢はない。まあ、もう来てるんだから選べはしないけど。
『お届け物です』
声を聞くとドキッとした。
そしてやっぱり宅配屋さん。レティシアちゃん大正解。でも男の人か……どうしよう、部屋着だけど出ても大丈夫かな。
けどすごく好みの声だ。私、声の好みなんてあったっけ?好みというか、ずっと聞きたかった声?
どんな人だろう……モニターに映る姿をチラリと、いや堂々と見ていいんだよ。……その人を見た途端、この出会い、絶対に逃してはいけないことが分かった。自分はこの人を待っていたのだ。
私は素早く自分を確認にはいる。
自分のことだけど、可愛いよ私。それもかなりの上位者!スタイル、体型も自分なりには気を使っているし。若さで維持できているだけ?違うよ、努力はしているんだから。趣味は……これから決めます!得意なことは飛び抜けて無いけれど、苦手なことも無い。……なんか見た目だけか?良いのは!でも嫌な娘じゃないよ!猫だって好きだし。まあそうそれはともかく、わたしは今かなり上等な物件だ。
自らの全てを肯定し、運命に対峙する力を蓄える。
「ちょ、ちょっと待ってね。部屋着なんで……」
私は何を言っているんだ、部屋着情報はいらないじゃないか。
チラリとモニターの彼を見ると、少し困った感じで笑っているのが見える。
『はい、急いでませんので……』
優しい!……イヤ待て普通だ。お客に急がせたりはしないものだよ、普通。どうしよう、元々そんな人前に出ることが出来ないほどひどい格好じゃないし。でも可愛い格好でもないし。いやいや、可愛くなくていいんだよ、荷物を受け取るだけなんだから。
鏡の前で、部屋着の乱れと髪型だけは整える。
「よし、可愛いぞ私」
気合いを入れて、玄関のドアを開けた。
「ごめんなさい、お待たせしました……」
配達員の「彼」と目が合う。
イチゴの甘い香りを感じる。
これが私と、アカリさんのファーストコンタクトであり、「再会」であった。
このお話から、本編たる『裏銀河の冒険者』と同じ時間で進みます。
『冒険者』側のイベントをレティシア視点では......という形ですね。
『冒険者」側のペースで進みますので、週に何回も更新があったり、一日に何回も更新があったり!
本編側もご贔屓に。......向こうは今日で68話目かな?




