レティシアと通せんぼ
私の信用は地に墜ちたと言ってもいい。
だからカラオケで100点取ったよと言っても信じてくれないのだ。プンスカプン。
「レティシア行くよ~」
今日は登校日、だから三人一緒に行くのは構わないけど、何気に「保護者」なのが気に入らない。
「待ってよ、これ干していかないと、シワになる」
「間に合わないよ」
十分間に合うし。
「じゃあ先に行ってて」
「それは駄目」
「早く干してよ!」
分かってない奴らだ、君達のお気に入りのこの服を、ママ達が大事に洗ってくれているのに!私はそれを引き継がねばならないのよ。
最低限、型を崩さないように丁寧にハンガーに掛ける。たぶん大丈夫だけど、心配だ。
「お待たせ!行こう」
まあ待たせたのには違いはない。
「レティシア、さっきは急かしてごめん」
「うん、すぐシワになっちゃうんだよあの服。君たちのパジャマ。時間配分間違えちゃって、ごめんね」
「……いつもアリガトね」
ソフィアのデレ期だ。可愛いなコイツ。
自由大学までの道のりはそう複雑じゃないし、遠くもない。何を急いでいるのかは知らないけど、スタート遅れの影響が拡大していく心配はない。
「あれ?工事中……」
道路工事で行き止まりとは珍しい。
この時間、工事はしてないみたいだけど、通り抜けちゃう?
「ダメだよレティシア。危ないよ」
出たな、妖怪心読み。
「ほら、迂回路って書いてある」
「……妖怪心読みはいろんな所にいるのね」
でもこの迂回路を決めたヤツは街を知らないね。そこを降りちゃうと、あの先で、歩く方向が……
「レティシア~置いてくよ~」
「あ!待って」
何で走っていくかな!
あ、そこは下っちゃダメだ!
あ、学校が右に見えてるけど、そっちは行き止まりなの!
「二人とも!」
「レティシア~行き止まりだよ」
「この道初めてだから」
追いつくと、二人が引き返してくるところだった。
「この辺りは浅い谷だから、学校の側はあの辺まで崖になってるから……」
なんだ二人ともその顔は。
「さすがはフリーウォーカー……」
お褒めに与り光栄ですわ!
「私に付いてきなさい!」
ああ、すごくイイキモチ……!
ここからのリカバリーと近道ならば、谷沿いに進むしかない。もう少し行くと階段がある。浅いとはいえ、谷の一番深いところだからそれなりの階段で……。
「無理で~す」
「こんなに深い谷、どうして今まで気づかなかったのかしら」
深くはないんだけどね。理由は簡単。
「上の橋がさっきまで歩いていた所よ」
車用の橋がまずあって、両脇に歩行者用の橋ができた。少し広かった歩道には露店が出るようになり、数百年後はそこが橋と分からないくらい建物が建ってしまった。
「違法建築……」
「ではないみたいなんだけどね。ちなみに、谷の上り下りに辟易した住人が作ったエレベーターが階段の脇にあるんだけど……」
よく見ると階段の横に小さいトンネルがあって、先にエレベーターがあるという朽ちかけた看板がある。
「そっちは正真正銘の違法建築。しかも故障してて止まっているの」
「私達、どうすればいいの……」
ソフィアが泣き崩れる。そんな大げさな。そこそこ広い道の脇で、そんな演技してたら目立ちますよ?
「階段が無理なら、遠回りになっちゃうよ?急いでるなら、早く決めよう」
座り込んでしまったソフィアを引き上げる。
その横をコミュニティーバスが通った。
「あ、バス……」
「学園都市行きだって。へえ、こんな所にも通ってるんだね。次のに乗っていこうか」
「レティシア……」
どうして私をそんな目で見る?
「バスなんて私の選択肢にはないんだからしかたないでしょ!そもそも、谷に降りてきたのは、マリー達が悪いんじゃない!」
私はちゃんと迂回路の看板前で考えていたでしょう?ちなみに最適解は案内の迂回路を使わず、すこし戻って車道を渡る、だ。
バスはすぐに来るし、当然速い。ついでに車内は暖かかった




