レティシアと銀河の果てまで抱きしめたい
定番でいけば、パーフェクト系主人公は音楽の才能には恵まれていない。あんなに素敵女の子なのに歌は音波兵器……みたいな。
その点レティシアちゃんは本当にパーフェクトなので、お歌も上手だ。野外ホールでよく歌ったものだ。観客は虫とか葡萄の木とか。彼らは無事だったので女主人公レベルとしては破格の上手さなのだろう。
ちなみに楽器は、そもそも親しんでこなかったので未知数。
だから今日は歌を、歌います!
♪~ (歌唱中)
「家の中じゃ、イマイチだな。いつもと変わんない」
こうなれば、うわさに聞く……か、カラオケとやらに行ってみようかなっ!
店は見たことはあります。なんかね、ワイワイガチャガチャしてて、若い子の……イヤイヤ、そう、楽しそうなところだったよ。
とりあえず家人を誘うべきなんだけど、奴らフェルディナンドの講義もない日にまで学校に行くなんて、どうかしてるぜ。団体の当番らしい、ご苦労様だ。
そうなるとまだまだ気軽に誘える友達がいない。人はいつだって独り。
臆するなレティシア!あんたは誇り高きフリーウォーカー、恐れるべきは一人でいることではなく、その誇りが傷つくことだろう!
ありがとう、私。
「やってみる!」
そして目の前には、昼間なのにギラギラ光る怪しげな巨大ビル(個人の見解です)。このビル全てがカラオケ屋さんである!
少し躊躇するが、ビルに突入する。
ビルの中は私よりやや若い少年少女で溢れかえっていた。私の突然の登場に喧騒が一瞬で静寂となる。ああ。変装忘れてたな。ごめんね……。
私はフロアを見渡すが、お店の人、受付がどこにあるか見つからない。
「ねえ」
私は近くにいた年の近いと思われる女の子に声を掛けた。
「えっレティシアちゃん!?」
「ねえ、受付ってどこにあるか知ってる?」
「え、えっ!ハイ、このエレベーターで一番上です」
ほんとだ、書いてある。
「ありがとうございます」
「あの、握手して下さい!」
え~っと、握手は良かったかな?
女の子の手を取ってぎゅっとする。
「ごめんね、たぶん握手も駄目なんだけど、教えてくれたお礼になるんなら……」
「ありがとう~!すごい嬉しいです!」
無事受け付けられ、迷った末にたどり着いたのは。
「ついに来た。ここが」
個室である。なんか受付で、「とうとう歌手デビューするんですか」とか言われたけど、しないよ?
デビューどころか、実家に帰ろうかと思案中である。しかしどうして、こんなに有名人になった?
部屋に来る前に手に入れたドリンクでのどを潤し、コントローラーを手に取る。当然予習済みである。
基本流行り歌は知らない。や、聞いたことあるな~レベルで歌い手もタイトルも、サビ以外のメロディも知らないの。自分のことながら、世間のことに異常に無関心だなと思う。
故郷のうたは絶対データに入ってないのは予想していたから、来る前にソフィアに一報を入れておいた。
『今からカラオケ行くんだけど、何歌えばいいかな』
一時間くらい前だから、返事は来てるかな。
『誰と?』
むしろ独り以外の選択肢を挙げてほしいわ。
『ひとり』
『レちゃんのイメージだったらこの辺りかな』
とリストが送られてくる。レちゃんで誰だ?
『ありがと』
実に事務的だ。送ってくれたリストの中で、知っている曲を選んでみる。ん?採点機能だと?
♪~ (歌唱中)
泣くなよレティシア、誰でも初めてはこんなものよ。MANGAのヒロインは、ここで機械を壊しちゃうのと比べたら、私はすごいよ、34点。私たちの戦いは始まったばかりだ!
それから私はひたすら歌い、延長を繰り返した。そして、安定して100点を出すことができるようになった頃、奴らは現れた。
「こら、レティシア!また変なことしてるでしょ!」
「ソフィア、なぜここに!」
って私が呼んだからだ。
「私の今日の成果をきいてもらいたくてね!」
「今何時だと思ってるの?もう夜だよ、ハ・チ・ジ!」
「うそでしょ?」
夜八時と言えば、初等生なんか寝ちゃってる時間。大人でも早い人は寝始めるころだ。
「帰るよ」
「ま、待ってせめてあと一曲……」
「帰るよ!」
私は3人がかりで部屋から引きずり出された。
「私の、私の歌を聴け~~!」




