レティシアと自由大学
「サントルの繁華街からは出ません。山、海には行きません。主に学校の周りで行動します」
居候達が学校に行っている間、私の行動を制限しようということだ。マリー達が言い出したのなら「うっかり」忘れちゃうかもしれないけど、ママさん達が噛んでいるこの条約を破るわけにはいかないよね……。
「あれ?レティシア、今日は私たちと一緒に出るの?」
「うん」
「今日はどこ行くつもり?知らないとこに行っちゃダメよ」
「分かってるわよ。警察沙汰はもう懲りたわ」
二人の後をついて歩く。どこで分かれるのだろうと、二人はチラチラと頻繁に振り返ってくる。
「気にしないで。離れるときはちゃんと言うから」
あんまり余所見させると危ないからね。
学生通りを端まで通りきり、自由大学の門まで来た。
「レティシア、私達はここで……」
「私もここだよ」
「そうなの?」
「でもちょっと違う講義を聞きに行こうかなって」
「ギルバートか!」
「いやいや、彼が何受けてるか知らんし。どこか適当なところ。何か面白いかもしれない」
講義開始のギリギリの時間に、フェルディナンド教室の隣の講義室に入った。
100席程度の大きくはない講義室は半分くらい埋まっていた。私はお試しだし、なるべく後ろのほうに座る。
私という闖入者に、講義室が少しざわめく。
「ここって、途中受講駄目でした?」
少し不安になって近くの人に尋ねる。
「ダメというのは聞いたことないね。……でも大丈夫かい?君をバカにする訳じゃないけど、結構難解だよ?」
「せっかくだから、色々なお話を聞いてみたいのよ。遺跡の話も悪くないけど、度が過ぎるとちょっとね」
遺跡の話と聞いて、受講生Aは納得する。
時間になり、講師が入ってきた。部屋の後ろにいる新顔、私を見て少し驚くが、すぐに自分のテキストに目を落とすとおもむろに語り出した。
「航宙機関士の第七回目の講義だ……。テキストはサーバーからダウンロードしてくれ。資料は適宜アップする」
「先生、今日は親切ですね!」
「……うるさい」
あ、今の私に説明してくれてたんだ。厳ついマッチョだけど心は優しいんだね。
「ありがとうございます。頑張って付いて行けたらと思います」
講義内容は、確かに難解。周回遅れで畑違いとくれば、チンプンカンプンである。でもなんだろう、実際に使われている機械の考え方とか理論とか人への優しさとか逆に割り切りも……。興味が湧いたのも事実。
今更この道で食べていこうとは思わないが、また聴きに来ても良いかな、とは思い始めていた。
刻限が来て部屋を出るとソフィアに抱きつかれた。
「レティシア~、ここにいたのね」
「どうだった?」
まだ講義室には先生も受講者もいる。静かに聞き耳を立てているようだ。
「ん~。難しかったね。未知のジャンルだし。でもね、なんか面白そう。今まで考えもしなかったことに丁寧に説明してくれる感じ?」
横目で講義室を見るとやはり聞いていたのだろう、先生達がワッと沸いているのが見えた。
「む、先生わりとイケオジ……?」
当たりの講義を引いたことで調子に乗った私は、お昼をみんなと食べる約束をして、次も別の講義に飛び入りする。
次の講師は私を見てやはり驚くと何か言いたそうだったが、講義を始めることにしたようだ。
テキストダウンロード!
「え?」
講義名『愛と性からみる星団風俗史 第7回性と玩具』。はは、なかなか自由な学校だな……。私とて大人の女、知識はそれなりにある!かかってこい!
「…………」
「…………!」
「……!!!」
ちょっと無理かもしんない。
後ろのほうに座ってて良かった。私はこっそり講義室から出た。
「お、レティシア早かったな、食堂にする?……どうした顔真っ赤だぞ」
「ソフィア……私は、ちょっと大人の階段を登ってきたぞ……!」
「え?何?何の講義聞きに行ってたの?」
クソ、階段登り切ってるヤツが来たぞ!
「アイちゃん……いや、師匠!ちょっとまた今度聴きたいことが……いや、やっぱりいい!」




